Empty old City、2nd ONE-MAN LIVE追加公演が終幕。人間の心の本能を刺激する濃密なショーで、観客はたちまち物語の一部に

ライブレポート | 2026.08.20 12:00

Empty old City 2nd ONE-MAN LIVE 「Strings in Owl ||:echo:||」
2026年7月31日(金)東京キネマ倶楽部

今年4月に2ndフルアルバム『Strings in Owl』をリリースし、同作収録の「Offline Saga feat.水槽」が「MUSIC AWARDS JAPAN 2026」最優秀ダンス・エレクトロニック楽曲賞にノミネート、翌5月にSpotify O-EASTにて開催した2nd ONE-MAN LIVEは早期にチケットが完売するなど、この数ヶ月でより勢いを増している2人組音楽ユニット・Empty old City(以下:EoC)。彼らの「よりコンセプチュアルな会場で『Strings in Owl』の世界観を深く伝えたい」という思いからセッティングされた追加公演「2nd ONE-MAN LIVE『Strings in Owl ||:echo:||』」が、7月31日に東京キネマ倶楽部にて開催された。

ステージセットはO-EAST公演と同様に木々や草花に覆われ、植物にまみれた古めかしいハシゴ、大きな鳥かごなどが意味深に佇む。セットリストはO-EAST公演時のものをベースにしつつ新たな楽曲を加えて再構築し、計26曲を届けた。一貫した緊迫感を保ちながらも様々なサウンドと物語を展開していく濃密なショーは、映画というには生々しく、ライブというには非常にクールで作品性に富んだ、EoCならではの興奮を作り上げていた。

会場が暗転すると、ステージ背面のモニターに物語の映像が流れる。少年クレオとフクロウの出会い、フクロウの旅立ちのエピソードが展開されるなか、物語の奥深くに身を潜めるようにスーツを纏ったNeuron(Composer / Producer)とkahoca(Vo)がステージへ登場。そこからシームレスに優雅なストリングスとピアノ、性急で苛烈なビートが交錯する「From Noir」へとつないだ。

Neuronは物語と一体になるようにブライトなピアノを、kahocaも大きく羽を広げるフクロウのように腕を動かしながら伸びやかな歌を響かせる。ダークさを纏いながらもエレガントさも併せ持つサウンドは、緊迫感を放ちながらも穏やかな居心地の良さを感じさせ、観客を会場もろとも彼らの描く世界へと連れ出した。

Neuron(Composer / Producer)

kahoca(Vo)

「Astronomy」ではkahocaがあどけない声色で開放感を作り出し、「Chronicle A」ではNeuronがサンプラーを使いクラブミュージックの要素を強める。楽曲ごとに異なるカラーを展開することはもちろん、ひとつの楽曲で様々な情景を描くという既成概念から解き放たれたサウンドデザインは、ライブという偶発性の高い環境とも相性がいい。観客もふたりが起こす音の波に、クラップやジャンプなどで身を委ねた。

kahocaが「こんばんは、Empty old Cityです。追加公演『Strings in Owl ||:echo:||』、お越しいただきありがとうございます」と挨拶をすると、多彩なインタールードを挟みながら「トワイライト・セレナーデ」「Rhapsody」と瑞々しい躍動感と幻想性を併せ持つ楽曲をたたみかける。過去の楽曲に新しい物語を宿らせるように繰り広げられるステージと、それを前のめりに楽しんでいくフロアには高揚感が生まれ、「Black Dilemma」ではkahocaのエモーショナルなボーカルとNeuronのシンセソロに大きな歓声が沸いた。

再び物語のセクションに入ると、入院生活を送るフェーデという少女の元でフクロウが涙を零し、その涙の奥にはファンタジックな情景が映し出されているといった内容が語られる。フクロウはEoCの楽曲のメタファーであり、フクロウの涙はその楽曲にしたためられた物語とも言い換えられるのかもしれない。この後もNeuronとkahocaは、彼らが心を揺さぶられる様々な情景を我々に届け続けた。

可憐な歌声と流麗なピアノ、硬質できめ細やかなビートが森の中に現れたロボットを想起させた「Pulse in Flora」、演歌のような気魄に満ちたボーカルと艶やかなピアノがオリエンタルかつ未知なる感覚を与える「Death Designer」と会場の熱を上げると、「Offline Saga」ではゲストボーカルとして水槽をステージに招き入れる。ソフトなkahocaとエッジの効いた水槽のボーカルのコントラストが観客の興奮を煽り、再び2人編成に戻った「Buffer」ではフロアの熱気に触発されてか、それまで一貫して冷静さを保っていたNeuronがクラップを煽る場面も。kahocaのボーカルも相乗効果で熱を帯びていった。

「ノスタグラム」で清涼感のある空間を作り出すと、再び物語のパートに入る。フェーデの元に様々なフクロウが訪れ、その涙がダークな情景と女神の存在を映し出すといった内容だった。するとkahocaがサブステージに現れ、「Looma」を歌い出す。サポートメンバーのいけだゆうた(Key | from BREIMEN)と西原史織(Vn/Vla)も演奏に加わり、穏やかさと痛みを併せ持つサウンドを作り出して、そのまま「こぼれる雫、記憶の受け皿」へとつないだ。会場はよりディープな世界へと迷い込む。張りつめた空気を醸すインタールードから「Gemini」で妖艶なムードを作り、ヴァイオリンの音色をフィーチャーしたライブアレンジはさらに没入感を高めた。

切実な気持ちが伝わる「Daisy Crown」、スウィーティーなムードが広がる「ミレニアの水槽(Aquarium Remix)」と立て続けに披露すると、物語は佳境へ入る。フェーデの元に訪れた黒いフクロウは、フェーデの病院のそばの森とそこでヴィオラを弾く女性の姿を映し出し、その女性はオーケストラの中で演奏しているようだったという。そこから間髪入れずにつないだ「Strings in Owl」「クロマの幻聴」からは箱木 駿(Dr)と今野颯平(Ba)も演奏に加わり、音像にはバンドならではのふくよかな重厚感が生まれる。それは楽曲にしたためられた切々とした心情をより克明に映し出した。

新曲「青揺れるフィリア」では終盤に向かうに連れてより晴れやかに駆け抜け、物語も会場もたちまちクライマックスへと突入する。インタールードから颯爽とグルーヴィーな「Moonian」へとつなぐと、宇宙を彷彿とさせる音色のシンセソロが遠くの世界まで会場をトリップさせるようなエネルギーを放ち、そのまま「Frozen Frozen!」になだれ込むや否やフロアからはステージの音をかき消すくらいの大きな歓声が沸いた。

MCをほぼせず、作品や物語を前面に出したライブでありながらも観客がここまで熱狂できるのは、EoCの音楽が人間の心の本能を刺激するからに他ならない。その大きな要因が巧妙でしなやかなリズム/ビートと、予想だにしないスリリングな展開だろう。心地好さと斬新さを併せ持つEoCの音色は瞬時にインスピレーションを与えると同時に物語を緻密に描き、観客をたちまち物語の一部として取り込んでしまう。「Enigma」では会場の全員がビートに乗り、瀟洒(しょうしゃ)で不可思議な世界を存分に謳歌する。その光景はすみずみまで爽快感に満ちていた。

ピアノのリフレインが効いた「ゴースト警告を唄う」、スタイリッシュかつ情感豊かに甘美な世界を描く「Vivop」、存在感のあるメロディと澄んだボーカルが一途な愛情を詳細に映し出す「カミツレと愛のブーケ」とたたみかけると、バンドメンバーがステージを去り、再びNeuronとkahocaの2人編成になる。kahocaが「皆さんのおかげで追加公演を無事に開催することができました。宝物みたいな時間でした。本当にありがとう。またお会いしましょう」と挨拶をすると、「そしてクレアへ」を歌い出す。“仄暗い緑”や“純白”を表現したセットや照明などが楽曲の世界を優しく映し出し、Neuronとkahocaもエンドロールを紡ぐように、しとやかに歌と演奏で結末を描いた。

アウトロで次第にステージは暗くなり、Neuronとkahocaが深々と頭を下げてステージを後にすると、最後の物語が流れる。フェーデの元にしばらくフクロウが訪れなくなるも、彼女はフクロウの見せる胸があたたまるような、痛むような、心地よい感覚が忘れられず、次の春を夢見るという内容で物語は結ばれた。するとエンドクレジットの後に、この日披露した新曲「青揺れるフィリア」を、ダズビーをフィーチャリングしたデジタルシングルとして8月1日にリリースすること、第2作目となるコンセプトEPを今冬リリースすること、来年2月12日にEX THEATER ROPPONGIにて「3rd ONE-MAN LIVE」を開催することが発表された。

EX THEATER ROPPONGIはEoCの単独公演では最大規模となる。フェーデが再びフクロウと出会えるのは春であるが、我々は春を待たずともEoCの描く物語の続きを観られるということだ。これはまた新たな物語が始まろうとしているということだろうか。それとも物語の序盤で描かれた少年クレオがフクロウと出会った冬とリンクしているのだろうか。そんな想像を巡らせながら、フェーデが病室の窓からフクロウを待ちわびるように、EoCの新たな物語が届くその日に向けて胸を躍らせたい。

SET LIST

01. From Noir
02. Astronomy
03. Chronicle A
04. トワイライト・セレナーデ
05. Rhapsody
06. Black Dilemma
07. Pulse in Flora
08. Death Designer
09. Offline Saga(feat. 水槽)
10. Buffer
11. ノスタグラム
12. Looma
13. こぼれる雫、記憶の受け皿
14. Gemini
15. Daisy Crown
16. ミレニアの水槽(Aquarium Remix)
17. Strings in Owl
18. クロマの幻聴
19. 青揺れるフィリア
20. Moonian
21. Frozen Frozen!
22. Enigma
23. ゴースト警告を唄う
24. Vivop
25. カミツレと愛のブーケ
26. そしてクレアへ

【SETLIST Playlist】

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