「ROOTS66」初日・東京公演をレポート!1966年生まれのアーティストたちが笑い合い、称えあった大興奮の3時間40分

ライブレポート | 2026.04.08 18:00

吉井和哉×⽥島貴男×⻫藤和義

田島はステージにとどまり、吉井和哉(THE YELLOW MONKEY)と斉藤和義を呼び込んだ。そして歌われたのはデヴィッド・ボウイの初期の代表曲「Space Oddity」だった。前回のROOTS66の開催はボウイが亡くなった直後で、田島と吉井はやはり彼の「Changes」をカバーしている。今回の「Space Oddity」はサイケデリックな浮遊感をはらんだ曲で、宇宙飛行士が地球を見つめながら果てしない宇宙空間を漂流してしまうストーリーだ。地上から見上げた空から、今度は大気圏外の宇宙へとトリップしたかのよう。あらゆる人間や生き物が生を営む星、地球。戦争も災害も、紛争も差別も、希望も絶望もあるこの星を、遠くから眺めるような空間へと。

そのあとにABEDONを紹介した吉井は、こんなことを話した。「楽屋では、健康の話ばっかりです。でもほんとに、ここにいるのが個人的にはすごく奇跡的なことで……(客席から拍手)……ありがとうございます」。そう、吉井は4年前に大病をして、一時はアーティスト活動を停止する事態に見舞われている。このことに関連して言えば、先ほどまで演奏していた中川敬は現在、脊柱管狭窄症を患っていて、左手で松葉杖をついて歩行しており、それでも各地のライブに出向いている。また、当公演の記者会見の席でトータスが触れていたように、八熊慎一は昨年の秋に左の肋骨を骨折している。もはや若いとも言えない66年生まれたちだけに、どの人も身体と心を大切にしてほしいと思う。

吉井和哉×ABEDON

話をステージに戻すと、この流れで吉井和哉が歌ったのがバラードの「みらいのうた」(2021年)だった。今夜は塩谷哲のピアノが優しく導いたこの歌は、今の彼にとっての重要曲で、未来の、そして生命の行く末にほのかな希望を込めたもの。曲中でABEDONもボーカルをとり、その繊細な世界を共有した。宇宙の暗闇から、生命のあり方へと帰っていくかのような刹那だった。

その後、渡辺美里と大槻ケンヂを紹介したABEDONは、鍵盤を弾きながら「アルカセ」(ユニコーンの2023年のアルバム『クロスロード』収録曲)を歌った。旅すること、歌い続けることを歌った歌詞は奥田民生(彼は1965年生まれ)によるもので、このROOTS66の空間によく似合っている。また、吉井、ABEDONのこの2曲は、今回の全セットリストの中では貴重な、この10年以内に書かれた楽曲だ。いずれも現在の彼らが生きる中でのリアルさが埋め込まれている。

ABEDON×渡辺美⾥×⼤槻ケンヂ

中盤の締めが近づく。現れたのはスガ シカオ、そして早見優。来年、早見がデビュー45周年、スガが30周年を迎える話になると、「えっ?まだ30年なの?(笑)」と驚く早見。これにスガは「僕が一番キャリアが浅いんですけど、早見さんはたぶん一番キャリアが長いですよね。それでペアを組まされたんじゃないかと(笑)」と返答。「そういうことなんだ?うれしいです、めちゃめちゃ。スガさんの曲、大好きなので」という彼女の言葉を受けて始まったのは「午後のパレード」だった。軽快なビートに早見のまさにアイドルなダンスがマッチし、曲は大盛り上がり。そしてスガに代わって入ってきた吉井和哉と大槻ケンヂが加わって「夏色のナンシー」!オーケンの気合入れのようなYes!と吉井の英語コーラスでその場はさらに温度が上昇。ここまでで再びインターミッションとなった。

スガ シカオ×早⾒優

早⾒優×吉井和哉×⼤槻ケンヂ

66年生まれの4人によるショートムービーの上映があり、イベントのクライマックスが近づく。ここからはカバーを含めた名曲の連続に突入していく。

渡辺美里は「My Revolution」を、前回のROOTS66のあとにコラボを実現させた怒髪天の増子とデュエット。パワフルな歌声の共振に、会場の熱気が再び上がっていく。渡辺はそのまま「タイムマシンにおねがい」(サディスティック・ミカ・バンド)を、今度は田島、吉井とともに、ダイナミックにパフォーマンスした。
続いて田島がスガ シカオを呼ぶ。第1回目、2006年のROOTS66ではスガの「黄金の月」で共演した両者だが、今回はOriginal Loveの「月の裏で会いましょう」でのコラボとなった。激しい歌、それに田中邦和のサックスも絡んだ最高のグルーヴが奏でられる。

渡辺美⾥×増⼦直純

渡辺美⾥×⽥島貴男×吉井和哉

⽥島貴男×スガシカオ

ここでシンガーたちが大挙してステージに姿を見せ、イベントはいよいよ佳境に。トータスを中心にしての「ガッツだぜ!!」が放たれる。そして立ち位置を間違えていた斉藤和義が急いでセンター寄りに移動して、彼の「歩いて帰ろう」。さらに増子がパワフルに先導したのは怒髪天の「オトナノススメ」。歳をとっても人生を力強く生きていこうと叫ぶこの歌は、今夜ここに集まった大人たち全員への熱いエールそのものだ。

キメの2曲はカバーで、まずは小泉今日子(今回は大阪公演のみの出演)もカバーしたフィンガー5の「学園天国」を、ここでは早見優が引っ張りながら全員で歌唱する。そのコール&レスポンスもハマったあと、最後に歌われたのは沢田研二の「勝手にしやがれ」だった。なんと第1回、第2回に続き、3回連続でクライマックスを飾ることになったこの曲では、やはり全員が客席への白いハット投げを鮮やかに敢行!ただ、これは二番のサビで行う示し合わせになっていたはずだが、一番の途中で早々と投げていた吉井和哉、逆に2テンポぐらい遅れさせたABEDONと、いちいち一筋縄ではいかない個性ばかりだというのがよくわかった。

アンコールでは、前半は女性シンガーたちがカバーをメドレーのように披露。思えば第1回は出演者全員が男性、第2回は斉藤由貴と渡辺美里がやっと加わった状況だったが、今回はそれが4人となり、おかげで雰囲気も変わった。とくにこのカバー集のラスト、キャンディーズの「春一番」において(3人でなく)4人が振り付けとともに踊って歌う光景は、過去のROOTS66にはない華やかさだった。

⻫藤由貴×渡辺美⾥×永井真理⼦×早⾒優

宴はついに大団円。本編終盤に座を外していた中川敬、またショートムービーに出演した俳優の川上麻衣子と鈴木保奈美、さらにウルトラマンも加わって、尾崎紀世彦の「また逢う日まで」が熱唱される。そう、みんなの再会を願うように。
拍手と大歓声が沸き起こった中、客席をバックにしての記念撮影も行われた。やがて増子が「(お客さん)みんなに、こうして来ていただいてね。70歳になった時に、全員、生き残って会えるように!われわれも頑張りますんで(笑)。今日はありがとうございました!」とあいさつ。そうして出演者たちは手を振りながらステージを去っていった。この時に流れていたのは、USA for Africaの「We Are The World」。ベタな終幕ではあるが、中盤のセットを思えば、そこに平和への真摯な思いがあると理解できる。
こうして、3時間40分。2026年、東京でのROOTS66は終了した。素晴らしい夜だった。

記憶をたどれば1月、この公演のための記者会見の席で、斉藤和義は、最初のROOTS66の時には同業者へのライバル心のようなものがすでになくなっていたと話していた。それが20年前なのだが、さらに翻れば、80年代……いや、その2000年代においても、ロック界隈のみならず、ここまでジャンルの壁を超えたイベントはなかったと思う。
僕はオーケンの出番の時に、往年の新宿LOFTをつい思い出したと書いたが、昔は『夜のヒットスタジオ』や『ザ・ベストテン』のような歌番組に出るアイドルと、ライブハウスで叫び倒すバンドマンたちとは、完全に一線が引かれていた。それはそういう棲み分けがあったからで、それぞれの活動の場や向かう方向がまるで違ったからである。そんな中で、時にはテレビの歌番組に出ることを認めるかどうか、ロックの連中と歌謡曲の歌手たち、さらにはニューミュージックとか、その前にはフォークもあって……とにかくジャンル外の者同士が親交することなんて、めったになかった。仲良くしたらNG、みたいな空気さえあったらしいのだ。
しかしそうした壁は現代ではほとんどなくなり、とくに若い世代はもっと自由である。それだけに、たとえばフェスやイベントでロック・バンドがアイドルと共演することも普通になっている。そうなった背景や流れには多くの歴史的な理由があるはずだが、その動きがROOTS66の場にも入ってきているのは前向きなことだと僕は思う。
とにかく、お互いを尊重し、お互いを思い合いながら、共に生きていくこと。これは音楽に限らず、だ。それぞれの立場や言い分はあるにしても、この混迷の時代には、そうした姿勢が何よりも大事だと考える。

それにしても今回のROOTS66の、とくに中盤で表現された楽曲たちのエモーション、そしてメッセージの重みと厚みは、さすが還暦の年齢まで戦い続けてきたアーティストたちの集まりだと痛感した。同世代として、僕はこんな大人たちがいることを誇りに思う。人は思いやりと優しさと、それに愛情を持って生きなければいけない。そして人は、戦争や差別に、敢然にNOと言っていかなければならないと思う。

10年後、また会いましょう。しんどいことは多いけど、それを笑い飛ばすように、みんな笑顔で。なんとか、タフに生きて。
次回は、2036年。それまで、どうか元気で。

SET LIST

【BAND SESSION】「太陽にほえろ!」〜「傷だらけの天使」

【オープニング・メドレー】
START/宮田和弥[JUN SKY WALKER(S)]
日本印度化計画/大槻ケンヂ[筋肉少女帯/特撮]
風の市/中川敬[SOUL FLOWER UNION]
あおっぱな/増子直純[怒髪天]
接吻/田島貴男[Original Love]
ずっと好きだった/斉藤和義
10years/渡辺美里
Progress/スガ シカオ
WAO!/ABEDON[UNICORN]
P.M.A (Positive Mental Attitude) /伊藤ふみお[KEMURI]
誘惑光線・クラッ! /早見優
卒業/斉藤由貴
SPARK/吉井和哉 [THE YELLOW MONKEY]
ルーシーはムーンフェイス/八熊慎一[SPARKS GO GO]
ミラクル・ガール/永井真理子
バンザイ〜好きでよかった〜/トータス松本[ウルフルズ]

【コラボレーション】
夢の中へ × I Can't Turn You Loose/斉藤由貴×トータス松本
Ready Steady Go! /永井真理子×伊藤ふみお
Ato-Ichinen/伊藤ふみお×斉藤和義
恋をしましょう/⼋熊慎⼀×ABEDON
夢の中/宮⽥和弥×⼋熊慎⼀×⻫藤由貴×永井真理⼦
すてきな夜空/宮⽥和弥×永井真理⼦
オンリー・ユー/⼤槻ケンヂ×宮⽥和弥

【ウルトラマン主題歌〜ウルトラマン×バルタン星⼈ 登場】

【コラボレーション】
イマジン/⻫藤和義×宮⽥和弥×中川敬
満⽉の⼣/中川敬×⽥島貴男
Space Oddity/吉井和哉×⽥島貴男×⻫藤和義
みらいのうた/吉井和哉×ABEDON
アルカセ/ABEDON×渡辺美⾥×⼤槻ケンヂ
午後のパレード/スガ シカオ×早⾒優
夏⾊のナンシー/早⾒優×吉井和哉×⼤槻ケンヂ

【SHORT MOVIE 川上⿇⾐⼦×今⽥耕司×⽴川談春×鈴⽊保奈美】

【コラボレーション】
My Revolution/渡辺美⾥×増⼦直純
タイムマシンにお願い/渡辺美⾥×⽥島貴男×吉井和哉
⽉の裏で会いましょう/⽥島貴男×スガ シカオ
ガッツだぜ!!/トータス松本×全員
歩いて帰ろう/⻫藤和義×全員
オトナノススメ/増⼦直純×全員
学園天国/全員
勝⼿にしやがれ/全員

ENCORE
【⼥性アーティスト・メドレー】
君は薔薇より美しい/渡辺美⾥
飾りじゃないのよ涙は/⻫藤由貴
UFO/永井真理⼦×早⾒優
春⼀番/⻫藤由貴×渡辺美⾥×永井真理⼦×早⾒優

【全員】
また逢う⽇まで/全員

INFO

◾️『FMステーション -ROOTS66 edition-』完全版発売決定
ライブレポート&フォトをたっぷり収録して奇跡の二夜の興奮を誌上再現!

発売予定:2026年5月上旬
ご予約:https://store.caranddriver.co.jp/collections/fmstation

 

◾️FM COCOLOにて特別番組O.A.
大阪・東京公演の模様を3時間にわたってお届け

放送局:FM COCOLO
O.A.日時:2026年4月19日(日) 16:00-19:00
番組詳細:https://cocolo.jp/

  • 青木 優

    取材・文

    青木 優

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  • 半田“H.and.A”安政

    撮影

    半田“H.and.A”安政

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