大槻ケンヂ・オーケン60! 還暦「幻と想」大還暦祭
2026年4月10日(金)EX THEATER ROPPONGI
【出演】筋肉少女帯 / 特撮 / 空手バカボン(KERA、内田雄一郎、大槻モヨコ) / 大槻ケンヂと絶望少女達(特撮&XOXO EXTREME)
【還暦オーケンお祝い帯】ぶう(えんそく) / 団長(NoGoD) / 松永天馬(アーバンギャルド)
還暦祝いのステージは、大槻が2000年に立ち上げたバンド・特撮のライブで幕開けた。ステージに三柴理(Pf)、NARASAKI(Gt)、ARIMATSU(Ds)らメンバーが集い、「どうも、大槻ケンヂ、オーケンです!ついに、還暦60歳になりました。今夜は盛大に……祝ってくれよー!」と現れた大槻の出で立ちは、なんと赤いちゃんちゃんこならぬ赤い特攻服!そして、豪快なバンドサウンドと繊細なピアノ音が絡み合うドラマティックな名曲「テレパシー」が始まると、大槻の“つー”の声に合わせて客席の赤いペンライトがゆっくりと上がっていく。バンドとオーディエンス、音と歌詞、大槻が放つ渾身のボーカルと観る者の心が、歌詞の通り“つながって”いく様を体感させる景色に、オープニングからゾクゾクと震えが止まらない。大サビ前には大きく手を振って三柴が立ち上がり、ラストは大槻のロングトーンが響きわたって場内は拍手喝采。たった1曲でクライマックスへと導き、その興奮冷めやらぬまま続いた「GO GO!マリア」では、分厚いバンドプレイとクラップで“♪お手を拝借”と一体感を生み、「殺神」ではヘヴィに忍び寄る戦慄で、オーディエンスに赤い光を振り上げさせた。
「還暦、ありがとう!ついに60歳になりました。本当に信じられない」と口火を切ったMCでは、自らの装いについて「北九州の成人式みたいだけど、違います、関東の還暦です!」と説明。「まさか60歳で、こんなたくさんの方にお祝いしていただいて、こんな素晴らしいミュージシャンに集まっていただけるとは、ホント僕は夢にも思いませんでした」と感謝を述べる。「ここに来れたのは……大槻という人間は、良い運をたくさん持ってたんだと思うんですね。それと、わずかに才能があったんだと思う。あと、意外に努力したんですよ。運も才能も努力も持ってたわけね」と話す一方、音符通りに歌う、歌詞を覚える、芝居の能力は持っていなかったと自己評価。そして「キレキレに踊るっていうのもダメだったなぁ。だから、今日はキレキレに踊ってくださる女性方に来ていただきました!」とステージに招き入れたのが、プログッシヴアイドルユニット・XOXO EXTREMEの4人だ。大槻いわく「ピンク・フロイドやキング・クリムゾンといったプログレをちゃんと愛してくれて、次世代に継承してくれるすごいグループ」の彼女らと、特撮の演奏をバックに、この日は“大槻ケンヂと絶望少女達”のナンバーをコラボ。ペンライトを持つオーディエンスと共に“ブレブレブレブレ”と「⼈として軸がぶれている」で腕を振ったXOXO EXTREMEの4人は、「林檎もぎれビーム!」では大きく身体を揺らして歌声と拳を突き上げていく。ステージ前方にせり出し、オーディエンスを煽り立てる身のこなしはさすがキレキレで、ラストは大槻を囲んでキラキラと手を閃かせ「オーケンさん、おめでとうございます!」と祝福。スペシャルゲストのトップバッターを華やかに飾った。
再び戻った特撮のターンは「ケテルビー」でエンディングへ。分厚いユニゾンにNARASAKIのハイトーンコーラス、間奏では楽器隊によるめくるめくバトルと、鍛え抜かれたバンドパワーを存分に発揮しつつ、大槻の曲中台詞では「60年間生きてきたぜ!」「しかし60、まだ、まだまだ60歳じゃないか~!」というアレンジも。希望と絶望、喜びと悲しみは表裏一体であることを歌った非常に哲学的な楽曲で、大槻とオーディエンスの全員が“ラララ~ララララ~”と歌いながらペンライトを左右に振り、文字通り一つになる光景は、すさまじく感動的なものだった。そう、猫かと思えば一斤のパンだったりする、この不可解な世界を解き明かすには、60年じゃ、まだまだ足りやしない。
10分強の転換を挟み、再びステージに現れた大槻は、4月17日に発売される詩集『幻と想 03-25 大槻ケンヂ自選詩集』について告知。116編を収めた本書を制作したのは、大槻に初めて小説を依頼した人物とのことで、巡り巡る縁の不思議も長年にわたる活動の賜物だろう。そして中学の同級生であり、同じく還暦を迎えた内田雄一郎(Ba)と、「僕らを初めて発見してくれた人です!」とケラリーノ・サンドロヴィッチを呼び込んで始まったのは、もちろん伝説のテクノユニット・空手バカボンのパートだ。35年前に誕生した名言“ケラさん逃げて!”など昔話にも花が咲き、東京ロッカーズの物語を映画化した『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』になぞらえ、大槻からは「あれをナゴムでやれないかなと思って」という提案も。また「ケラさんといえばうるさい音が嫌い、ハードロックが嫌いじゃないですか。今の筋肉少女帯って、ケラさんが思う10倍メタルよ」(大槻)、「だから俺、もう20年ぐらい見てないもん。なんでいるんだろう、ここに」(ケラ)といったトークでも場内の笑いを誘う。そして「10代の頃は我々本当に無茶苦茶をやってまして、勝手に人の曲に詞をつけて歌ったりとかね」と代表曲の「来るべき世界」、通称「テクノライディーン」を披露。当時の文化を知る人間なら爆笑必死の歌詞を全力で歌い、メカボイスやロボットムーブを繰り出す大槻とケラの勢いに、黙々と音を鳴らす内田も「ライディーン!」と拳を上げる。続く「大もうけバカボン」でも時に虚ろな、時に芝居じみたツインボーカルが“バカボン”のゲシュタルト崩壊を起こし、どこか背筋が震えるようなシュールな空気感を作り出していった。そんななか、大槻&内田以外の筋肉少女帯メンバーが密かに入場してポジションにつくと、曲が終わったとたん音を鳴らし始め、大槻は「あれ?これ、やばい!筋肉少女帯始まっちゃうから、すごくうるさくなるから……ケラさん、逃げて~!」と絶叫。MCで張った伏線を見事に回収する、その構成の妙には舌を巻くしかない。












