「022特撮ライブファイナル」
2022年12月6日(火)渋谷CLUB QUATTRO
2022年12月6日(火)、特撮が渋谷CLUB QUATTROでワンマンライブを行った。
3月5日(土)渋谷CLUB QUATTROの「特撮! 20 thアニバーサリー・リベンジャーズBlu-ray&DVD発売記念ライブ」、7月13日(水)渋谷CLUB QUATTROの『特撮22nd記念「爆誕」(2000年2月リリースのファーストアルバム)完全再現ライブ』、7月30日(土)横浜ベイホールのイベント『CRUSH OF MODE-PREMIUM HOT SUMMER’22』。その3本に続く、2022年の特撮にとって4本目のライブであり、2022年最後のライブでもある。と、中盤のMCで、大槻ケンヂが丁寧に説明した。
最初にひとりで出て来た、三柴理のピアノ独奏曲「追想」が響く中、他のメンバーが登場。全員揃ってから「殺神(2020)」でスタートしたライブは、本編ラストの「テレパシー」までで14曲、アンコールで「メグマレ」と「じゃあな」が追加の、全16曲・約1時間50分。古くは『爆誕』収録の「テレパシー」から、新しくは2021年5月リリースの最新アルバム(9作目)『エレクトリック ジェリーフィッシュ』の「I wanna be your Muse」(4曲目)「電気くらげ」(6曲目)まで、特撮のほぼ全キャリアから選ばれたセットリストだった。
と、言っていいと思う。1曲もプレイされなかったのは、『夏盤』(5作目、2004年リリース)と『綿いっぱいの愛を!』(6作目、2005年リリース)ぐらいだったので。
2曲目(実質は1曲目)の、地を這うように重くアバンギャルドな音にのせて、ラップというより語りのように声を放っていく(というのは、初期の筋肉少女帯の頃からの大槻の得意技である)「殺神(2020)」を歌い終え、ひとしきり拍手を浴びた大槻、「ありがとう! いい、クールでいい! 一度やってみたかったの、渋い曲で始まるやつ!」。
そして、「もうひとつ、特撮で試みてみたかったことがあるぜ! それはね、グダグダしゃべらないですぐ次の曲へ行く、ってこと! ここで次の曲に行ってみよう、と思ったんですけど……」と、結局グダグダしゃべってから曲に入った「愛のプリズン」は、大槻的には、この日のライブの最重要課題だったようだ。
「俺、次の曲、すごく練習したんだよ。前に全然できなくて、演奏の途中でやめたことがある、大阪で。でも、今回はできる気がするんだ」と、前置きしてから曲に入ったので。
ラウドでリズムが超高速、確かに歌唱の難易度が高そうなこの曲と、一転してファンキーかつロマンチックな「I wanna be your Muse」、さらにまた一転してリズムもピアノもギターもアバンギャルドな響きの「ゼルダ・フィッツジェラルド」──と、3曲を見事に歌いきった大槻、「何十年もやっていて敢えてこういうことを言いますけど、僕、『愛のプリズン』、練習して来たんです!」とアピール。音源をCDラジカセでかけて、それをスマホで録ってイヤフォンで聴きながら練習したそうです。「もっと褒めてくれたっていいだろ? アーリーももっと褒めてくれたっていいぜ! ナッキーも褒めてくれてっていいぜ!」。ちゃんと歌えたのが、よっぽどうれしかったと見える。
スタジオでリハーサルしていたら訪ねて来た人がいた、31年前に映画『ai-ou』で共演した錦織一清だった、という話や、TOKYO-MX(東京ローカルのテレビ局)の『5時に夢中!』から出演オファーが来た話(12月9日(金)に出演だそうです)などを経て、大槻、「大事なのは、爪痕を残そうとしないことだね。でも、たかをくくらない、これが大事よ」と、突然、名言っぽいことを言う。
NARASAKIがチャランゴ(10弦のウクレレみたいな南米の楽器)でイントロを奏でた「電気くらげ」と、前半シャッフル・後半ディープ・パープルな「人間蒸発」を演奏し終えると、いったん全員がステージからはけ、大槻のポジションにイスが用意される。
ドラムARIMATSUの誕生日を祝う、等のMCをはさんで始まった「荒井田メルの上昇」「アザナエル」(音源ではNARASAKIがボーカルだが、大槻が歌った。大槻、曲の後にそのことも説明)「ルーズ・ザ・ウェイ」の3曲は、大槻、座って歌唱。「ルーズ・ザ・ウェイ」は曲のテンションに合わせ、途中から立ち上がって熱唱した。
こうして特撮でライブをやっていること自体が、楽しくてしかたない様子の大槻、「特撮、2023年、来年、なんかやりますよ!」と、曖昧に力強く宣言。『爆誕』再現ライブがとても良かったので、それ以外のアルバムでやってもいいし、「ルーズ・ザ・ウェイ」のように最近ご無沙汰だった曲をやってみるのもいいし、とにかくいろいろやろうと思っていますよ──と、来年の展望を語る。
そして「ここで自己矛盾が生じてしまいますけど、2023年の特撮、ちょっとなんか、爪痕を残しましょうよ!」と、さっきの名言をひっくり返してから後半ブロックへ。「ヤンガリー」「バーバレラ」「オム・ライズ」と、ハード&ラウド&アバンギャルドな、特撮ならではのライブ・アンセムを3曲続けて、まるでオーディエンスに叩きつけるようにプレイしていく。主に赤、時々緑や紫が交じったペンライトの光で、フロアが埋まる。
そして「来年もいろんなことやろうと思うんで! 爪痕、残していきますよ!」と自己矛盾のダメ押しをしてから、ラストに「テレパシー」。ここまでの3曲で、オーディエンスをブチアゲて終わるのではなく、シャッフルのリズムにのって、エディのピアノとシンセとNARASAKIのギターが目まぐるしく表情を変えていくこの曲をラストに置いたのも、「殺神(2020)」で始めたのと同じく、大槻のトライアルだったのかもしれない。違うかもしれないが。
アンコールは、「これも久しぶりにやる曲。この曲、僕、大好き」という大槻の紹介で始まった「メグマレ」から。ふと知った競艇の用語から、こんな歌詞を思いついてしまった(のだと思う)大槻といい、それをこんなにエキゾチックでロマンチックな音に載せてしまうNARASAKIたちメンバーといい、確かにこのバンドにしか生み落とせない曲だ、と、ライブで聴くと改めて思う。
「いい、これはいい、なんとも歌っていて気持ちいい。気持ちよさで言うとね、サッシュベルトを巻きたくなるんだね。(「?」という様子のオーディエンスを見渡して)伝わらないねえ。今年もみんな、壁があるねえ。そこがいいんじゃない? 家に帰って検索してごらん。みんなもサッシュベルトをまきたくなるよ」。帰ってから検索しました、わからなかったので。でも、巻きたくはなりませんでした。
大槻、2曲目に行く前にみんなで写真を撮ろうよ、と言い出すも、そんな段取りはできていない。そこで今日のこのライブが生配信されていることを思い出し、「あ、中継がある! (画面に向かって)スクショしましょう、みなさんで!」。オーディエンス、大笑い。
大槻、「それが1年のまとめかあ! 『サッシュベルトしたい』と『スクショしよう』が! それもいいんじゃないの、特撮らしくて! じゃあしばらくの間、じゃあな!」と叫び、「じゃあな」へ。「愛のプリズン」に匹敵する超高速ビートが炸裂するこの曲で、2022年の特撮の活動は終了した。
なお、Streaming+のこの日の配信は、12月12日(月)の23:59までアーカイブ視聴が可能。『特撮! 20 thアニバーサリー・リベンジャーズBlu-ray&DVD』では、MCが一部カットされたことを、この日のMCで大槻は嘆いていたので、今回も、アーカイブで観ておいた方がよいかもしれません。