インタビュー/兵庫慎司
2017年9月6日に、3枚目のフル・アルバム『TALENT』をリリース。9月21日千葉LOOKからそのリリース・ツアー全18本がスタート、ファイナルは1月26日東京TSUTAYA O-EASTなのだが、それが終わる前にニューシングル『僕の声』を人気アニメ『弱虫ペダルGLORY LINE』のオープニング・テーマ曲として書き下ろし、オンエアはすでにスタート、2月14日にはシングルでリリース──。
書き忘れたが、前記の『TALENT』のツアー日程の合間にも、フェスとかイベントとか対バンとかのスケジュールもばんばん入っていたわけで、そんなようにとにかくもう本当に片時も止まらない、止まったら死ぬとか思ってない?とか言いたくなるくらいの勢いで爆進を続けるRhythmic Toy Worldに、その1月26日のTSUTAYA O-EAST公演と『僕の声』リリースを控えて、現在の状況などを訊いたのが以下のテキストです。徹底的現場主義の4人の最新の言葉を味わっていただければ、と思います。
よりいっそう、みんなが参加できる場所を増やす作品にしたかった
──前作『「HEY!」』のリリースとツアーが終わって、次の『TALENT』にとりかかる時って、どんなことを考えてました?
少しでもみんなが一緒に歌える場所があったらいいな、歌いたくなるようなメロディだったり、フレーズだったりがあったらいいな、っていうふうに考えて作ったアルバムだったから、ライブで、自分たちが思い描いたようなレスポンスが返ってくることがすごくうれしかったし。
だから次のアルバムは、よりいっそう、みんなが参加できる場所を増やす作品にしたかったというか。より、ひとりでやることを想定してる曲ではなくなったな、という。相手がいて成立する、みたいなことを考えながら作ったし、そう思いながら今ツアーしてますね、僕は。
もっと一体になって、歌を後押しできるような……ボーカル内田の声が好きで集まったので、この声をもっと押し出したい、だからもっとバックが強くなりたい、技術的な面ももっと鍛えないと、と思って。いろんな先輩のライブとか観に行く機会がすごくあったんで、「自分はもっとうまくならないと」っていう決意が新たになったというか。
あと、音っすね。今までの感じと違って、しっかり歌詞が伝わるようにミックスとかをやっていこう、みたいな話を、エンジニアの人としたりして。
悔しさがもっとほしい。「もっとやれたよな」って思えることがうれしい
──ここ1~2年で、なんのために音楽やっているのか、なんのためにバンドをやっているのかというのが、ライブを1本1本やっていくことで、明確になってきた?
それでツアーを回ってみて思ったことは……自分たちが「こういうふうな気持ちで作りました」っていうのは、ライブの現場で伝えるしかないわけですよ。作品の意図を受け手に向けて「こうなんです」って具現化して伝えられるのって、現場じゃないですか。だからその現場への意識がより強くなったというか。ライブ・バンドとして、「伝えるってそんな生半可なことじゃねえぞ」っていうのを、たぶん個々思って。それでライブがどんどん変わっていきましたね。
それ、去年の9月からなんで、まだ4ヵ月しか経ってないけど、ライブ1本1本での気付きがめちゃめちゃ多くて。だから夏にライブ観て、冬に観たっていう人はびっくりしてましたね。だいぶ変わったみたいです。バンドが何をやりたいのかを体現できる、そこに近づいていってるというか。
だから、すごくライブが楽しいんですね。1本やるたびに「悔しかったな」って思うこともいっぱいあったりとか。でもそれが今、たまんないというか、悔しさがもっとほしい、みたいな。「もっとやれたよな」って思えることがうれしい。で、うまくやれたら「やっぱあそこで試してみてよかったな」って思うし。そういう感じなんですよね。
今、僕らがすごくいい状態で、1本1本ライブできてるなっていうのは……主観でしかないですけど、来てくれた人の顔だったり、終わったあとのメンバーの表情だったり、ライブ中の空気感だったり、っていうところから、僕はひしひしと感じていて。それが、1月26日のツアー・ファイナルで出せるんじゃないかと思います。前回のツアーのファイナル、赤坂BLITZの時とは全然違う画が自分にはあって、それをみんなが楽しんでくれるだろうなっていう確信みたいなものもあって。っていう状態ですね。
ひとりでライブハウスに来てるのってすげえなと思う
バンドを組みたての頃は、ガチガチに作り込んで、かっこつけてたというか。でも、「普段仲いいんだから、それをお客さんに伝えるのがいちばんいいんじゃない?」ってプロデューサーに言われたりして。
今回のツアー、それが出せてるな、お客さんにちゃんと伝わってるなって思います。ほんと、「4人が楽しそう」みたいなことをよく言ってもらえるんで。もちろん楽しいからそういう表情になるし、ボーカル内田はメンバーにも言わずに突然ステージ上でとんでもないこと言い始めたりするし。「今の曲もう一回やろう」とか。ライブ中に、急にですよ?
──もう一回やろうというのは?
「もう一回やるからおまえ来いよ、踏み出せよ」っていう。そのためにはもう一回同じ状況を作ってあげないといけない。次の曲で「来いよ」って言っても、その子は踏み出せないと思うんで。
──で、もう一回やったら、その子は?
忘れないと思うんですよ、そういうのって。まず、ひとりでライブハウスに来てるのってすげえなと思うんで。僕はたぶんできないです、今でも。ひとりで行くことはできても、知らない人たちにまじってワーッとはできないから。だから、尊敬してるんですよね。で、もし自分がそうだったら、何がその人にとってスペシャルになるのかな、と思ったら……ひとりでドキドキして行ったライブで、自分というものがそこにいたことが証明された、みたいな。その瞬間って思い出になるじゃないですか。いつでも思い出せるというか。
で、そういう人たちって、つながっていくんで。そこで友達ができて、次は一緒に来るとか。すごい小規模なことかもしんないけど、僕らが鳴らしてる音とか、僕が書いてる歌詞とかって、まさにそれなんですよね。だから、みんながそれをしてみようかなって思いやすい空間を作るためには、僕らがありのままじゃないといけない。僕らが気取ってたら、みんなも気取っちゃうと思うんです。ありのままでいいんだ、っていうのを伝えないと。それが今僕たちが辿り着いた、Rhythmic Toy Worldっていうバンドがその人たちにとって存在する理由というか、聴きに行く理由というか。
そういうふうになれたっていうか、すごいシンプルに言うと、「こういうバンドがやりたいんだね、きみたちは」っていうのが、初見の人に伝わるようにしたというか。
「待ってたんだよ」っていう言葉から曲を始めたかったんですよ
──2月14日に新しいシングル『僕の声』が出ますけども。アニメ『弱虫ペダル GLORY LINE』のオープニング曲ですけど、曲調とか歌詞とかの指定ってありました?
ほんとに、「自分がアニソンやるんだったらこういうことをしちゃうぜ」みたいなのが、ずーっとあったんで。アニメの内容に触れてないんだけど触れてる、みたいなのが最初からやりたくて、今回それをやりました。
聴いて気づく人がいるかいないかはわかんないですけど……『弱虫ペダル』、今回から4期なんですけど、3期がすごい絶妙なところで終わってるんです。ふたりが山で戦っていて、ひとりがチェーン外れて、置いて行けば勝てたのにもうひとりがかっこつけて待ってて、みたいな。
そこが3期の終わりで、次の4期が始まる時の歌だから……作品としてそういうシーンだったし、僕もアニソンはずっと待望だったから、「待ってたんだよ」っていう言葉から曲を始めたかったんですよ。
僕がアニメ好きだってよく言ってることもあって、声優さんに歌詞を提供したり、っていうお仕事は、最近けっこうやらせていただいていて。うれしいんですけど、やっぱり、歌詞だけじゃなくて自分のバンドの曲でやりたい、っていうのがずっとあったから。それがうれしかったですね、バンド全員で、自分が本当にやりたかったことをかなえられるっていうのが。 で、そこ、作品にシンパシーを感じたところでもあるから。みんな個々ががんばって、でも支え合って、全員で戦う、負けたら全員で悔しがるし、勝ったら全員で喜ぶ、みたいな。それがバンドとすげえ似てんなと思って。
ちょうど「日本一になろうぜ!」みたいな話をしてたんですよ、このシングルができ上がったぐらいの頃。ちゃんとバカみたいな夢を持とうよ、「××に出たい」とかそういうのじゃなくて、「日本一になろうぜ!」とかそれぐらいの夢を持ってやろう! みたいな話をしていて。そういうテンションだったので、よけいリンクしたんですよね。
だから、バンドだと思って書いたんですけど、たぶんそれ、いろんな場所に当てはまるんじゃないかなと思って。会社だったり、学校だったり、部活だったり。集団で何かひとつの目標を掲げてそこに向かって行くのって、きっとどこの場所にでもあることだな、って。
Rhythmic Toy Worldの「初めて行ったライブ」「初めて立ったステージ」
コラム記事を後日公開!
■『弱虫ペダル GLORY LINE』ノンクレジットOP「僕の声」Rhythmic Toy World
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