VALSHEが3年ぶりにリリースするアルバムを紐解くインタビュー!

インタビュー | 2017.08.02 18:00

──分かりました。ではまず音作品という視点からお伺いします。音作品として見た場合、本作と1枚目、2枚目のアルバムとの一番の違いはどんなところにあるんでしょうか?

「1番の違いは自分の中のセーフラインを消したことです。音制作に関しては新しいことに毎作チャレンジしてるんですけど、どれも完成はこうなるだろうという予想の元で作っていたことが多くて。それはそれで安心して制作ができますが、3枚目はそこを守るのは面白くないから、自分でも作ってる過程でどうなるか分からないものを作ってみようと。3枚目だからこその安心感のなかで大きく危険をおかしてみるというのをやってみました」

──本作のなかで特にその危険をおかしたナンバーというと?

「声の部分では、3曲目の『ツリーダイアグラム』。VALSHE史上最高キーが使われています。地声でFまで出しました。すごくこの曲を自分が気に入ったのでレコーディングに臨んだんですけど。直前まで“出るかどうか分かんないけど、出なかったらそのとき考えようよ”っていう感じで、ある種リスキーな作り方をした楽曲ですね」

──その他に楽曲的に危険をおかしたナンバーというと?

「6曲目の『ガランド』。これはピアノ1本で歌ってまして。いままでバンドサウンドも作ってきましたが、やはりVALSHEの主軸はデジタルサウンドですから。今回のアルバムも生音よりはデジタルサウンドにもう1度立ち戻って、いまできる最新のデジタルを提示してみたいんですね。そのなかでこういうピアノ1本で歌う曲がふと入ってくるのは、いまだからこそできたことです」

──VALSHEさんは曲ごとにこれは男性、これは女性と、性別もボーダーレスになるぐらい声を使い分けてらっしゃいますけど。使う声は、曲を聴いた瞬間にひらめくものなんですか?

「感覚ですね。マイクの前に立ったときに湧き出てくるものに任せるというのが基本スタイルです」

──透明感ある声を使って柔らかなタッチで歌った「embrace」はとても印象的でしたが。これは何語で歌ってるんでしょうか?

「これは『WONDERFUL CURVE』という物語のために、自分で造語を作りまして」

──えぇー。そこまでやるんですか?そういった作業も楽しいんですか?

「はい。楽しいですよ(微笑)。どこかのタイミングでこのときに作った表を出せば、みんながまた曲と照らし合わせて解読をしてくれるだろうなと思うと、それが楽しみで作りました。なので、そこまではこの耳心地、音に抱きしめられる感覚をヘッドフォンで楽しんでもらいたいなという楽曲です」

──冒険しながらも、造語の表まで作ったり。物事は、かなりかっちりそつなくやるタイプなんですね。

「そうですね。冒険するぞ!といいながらも、後ろ向いてリュックに食料とか備品を抜かりなく詰め込んでいくタイプです」

──(笑)。無鉄砲な冒険家ではない、と。

「違いますね。かなり石橋を叩いて渡る性格ですから」

──「Show Me What You Got」はデジタルのダンスビートでも、いままでにないタイプのものでしたね。

「そうですね。もっとダンサブルなものに挑戦してみました。自分の作品はメッセージ性があるものが多いので、このアルバムも世界観がしっかりあってそれぞれにメッセージがあります。そういった中にこういう曲があると、メッセージがあるのかなと勘ぐってもらえるじゃないですか?そういう狙いもあって入れてみました」

──「DOPE」はライブで盛り上がる感じが見える楽曲でした。

「そうですね。タイトルはダブルミーニングを込めてつけました」

──ここにも仕掛けが(微笑)。

「はい!“こうとも取れるけど、こうとも取れるよね?”というものを作るのが好きなんです。自分の歌を聴いてくれてる方々が年齢を経て聴いたら“あのときは何も考えずに聴いてたけど本当はこういうことだったのか”と気付けるものをいっぱい作りたいんですよ」

──VALSHEさんの場合、曲を作って歌う。それだけでは収まりきらない表現があって。

「それだけではできないことを様々な手法を使って補完して表現するのが好きなんです。例えば、この視覚があると聴覚に訴えるものが変わってくるというものだってあるじゃないですか?だから、ジャケットワークであったりライブの衣装やMVもすごく大切なんです。それがなくても音世界は成立するけど、それが補われることによって全然違う景色や考え方ができてしまう。いろんな形でその音を楽しめるのが自分は好きなんです」

──では、本作のジャケットにはどんなトリックがあるんでしょうか?

「これは『WONDERFUL CURVE』の物語の役どころとして出てくる姿なんです。そこはMVであったりライブの演出を見てもらえば、なぜ初回盤と通常盤で構図や振る舞いが違うのか。そもそもこの2つの時間軸は同じなのか。いろんなことを考えるヒントになっています」

──それが紐解けるきっかけとなる全国ツアー<WONDER BALANZA>がますます楽しみになってきました!

「VALSHEのライブは大きく分けるとファンタジックなショーテイストなライブと、ロックなバンドサウンドで攻めていくライブの2つがあると思うんですけど、今回は久しぶりに前者の方でやろうかなと思ってます。久しぶりのフルアルバムですから、物語にとらわれずに曲そのものを楽しんで歌を聴いてもらいたいという気持ちも、もちろんあるんですが。ただ、最終日の東京・キネマ倶楽部はすごく世界観がある会場なので、それを活かしたものが楽しめるものにしたいなと思ってます」

──では最後にファンの方々に向けてメッセージをお願いします。

「今年はVALSHEが活動し始めてイラスト3年半、実写3年半というちょうど真ん中イヤーになりますので、真ん中イヤーに合わせて、自分の実体で表現できる部分とイラストで表現できる部分を駆使して今回の『WONDERFUL CURVE』を作ってみました。初めてフルアルバムを持って回るライブツアーです。ぜひぜひVALSHEワールドを体感しにきていただけると嬉しいなと思います」

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