──『FAKE STAR~I'M JUST A JAPANESE FAKE ROCKER~』と続く『CORKSCREW』(1998年)で、新たなロック・テイストやパンキッシュな面を打ち出すことで、黒夢は男性リスナーからも熱い支持を得るようになりました。
3枚目までは圧倒的に女性の比率が高かったけど、4枚目以降は男の子のファンが増えました。それも含めて、4枚目でロックな方向に戻っていったのは、よかったんじゃないかなと思います。
──同感です。黒夢は唯一無二の存在だっただけに、1991年1月に無期限活動停止がアナウンスされた時はシーンに衝撃が走りました。そして、そこから10年を経て、2009年に再始動を果たします。
2009年にライブをしたのは、当時のスタッフが1年前くらいに武道館を押さえていたんです。曜日とかに関係なく、解散した日を押さえていると言われて、僕はすごく嫌でした。その時は、人時さんがもう一度やりたいと言ってきたんですよね。当時人時さんからマネージャー通じて連絡があって、「なんで?」という。「人時さんが脱退したんだよね? 脱退したから活動休止か、解散かという話になっただから、再結成というのは変だよ」と。僕はSADSをやったり、ソロをやったりして上手くはいっていたので、あの時に黒夢をやる意味をあまり感じてなかったんです。でも、一度だけライブをすることになった。当時のスタッフの期待とかもあったし、会場を押さえてしまっていたし。それで、ライブをしたんですけど、ライブ自体はよくなかったです、僕らの中では。つまらなかった。ただ、その時は新しいメンバーを加えたりして、わりとハードなものにしたんです。黒夢がもしもあのまま活動休止していなかったら、10年後の今はこういう音になっていただろうという設定でした。
──過去を再現するのではなく、今の姿を見せたかったというのは素敵です。
楽曲は過去のものでしたけどね。でも、当時は手が届かなかったものを、お互いの10年のキャリアの中で培ったスキルを活かして形にしたかった。それを実現させたけど、その時は1回しかライブをしなかったんです。やりたくないから。あの時は、ライブが終わって、打ち上げもせずに散る…みたいな感じだった。でも、その後『FOOL’S MATE』の編集長だった東條(雅人)さんが急逝されたんです。東條さんは、同い年だったんですよ。で、黒夢もそうだし、SADSも、ソロもそうですけど、東條さんは僕が苦しい時に毎回表紙にしてくれた人なので、恩返しをしたいという気持ちがあったんです。それに、いかに彼が僕らミュージシャンに近い編集者だったかということを知らせたくて、黒夢を復活させることにしました。
──10年ぶりにライブをして解散を宣言した直後に復活という流れにためらうことなく、やろうと決められたところに男気を感じます。
10年ぶりにライブをした時は、人時さんのことがよく分からなかったというのもあるんですよね。ほとんど会話もしなかったので、よく分からないまま終わった。その後、東條さんのことがあって、もう1回黒夢をやって、SADSも復活させようという気持ちになった。それで、黒夢はアルバムを2枚作って、ツアーをするんですけど、その時も今と比べたらダメでしたね。やっぱり、続くイメージはなかった。楽しいけど、昔話しか話すことがない…みたいな。
それに、自分達には過信している部分がいっぱいあったというか。僕の中には、新譜を作ったほうがいいんだという感覚があったんです。再結成したバンドは、みんなベスト選曲でライブをするじゃないですか。僕はそうじゃなくて、新しいアルバムを携えたライブだったらいいよと言っていたんです。でも、それは今いるファンの人には刺さるけど、当時の人達には刺さらないということを、ゆっくり知るんです。瞬時に分かるんじゃなくて、徐々に気づいていった。5,000人くらいまでの規模であれば、昔のファンの人達よりも新しい子達に向けて、新しいアルバムを出しましたと言って、新曲を軸にしたライブをしてもいい感じで盛り上がってくれるんですよ。でも、武道館とか、それより大きいアリーナとかでは、通用しない人種が増えるんですよね。ここ数年は、自分もいろいろなライブに行くようになって。玉置浩二さんや小田和正さん、中島みゆきさん、浜田省吾さんとか。そういった方達のライブを観にいった結果、黒夢のファンの人も自分と同じなんだなと思ったんですよね。自分みたいな“似非ファン”が急にライブにいった時に、知っている曲が聞けたというのは素晴らしいことなんですよね。
──長年に亘って熱い支持を得ているアーティストは自身がリスナーに求められているものを理解していて、ちゃんとそれを与えていることが多いと思います。
そう。2009年に黒夢を再結成した時の僕らは40代で、まだ感覚が若くてイケイケだったから、過去をなかったものにしてやる、ゴリゴリに塗り替えてやるくらいに思っていたけど、ファンの人達の中では活動していなかった10何年の間に、当時のアルバムがより伝説化しているんですよ。それを、自分はまるで感じていなかった。黒夢のライブはラストに「Like @ Angel」(1996年11月)を演奏すると決めていて、“また「Like @ Angel」なんだ。つまんねぇ”とか思っていたけど、いろんなコンサートを観にいったりした結果、それが正しいことだと思うようになりました。リスナーによく知られている曲を演奏するのは僕にとっても、人時さんにとっても大したことではないので、去年また黒夢を始めた時は、それに特化したライブをしました。
Like@Angel / 2025.02.09 TOKYO GARDEN THEATER
──とはいえ、2010年に再始動された際にアルバムを作られたことは、多くのリスナーをワクワクさせたことは間違いないと思います。それに、仕事柄いろいろなアーティストのライブを拝見させていただいていますが、有名な曲をご本人が歌ったり、奏でたりする瞬間というのは本当に心が高まります。
それは、僕も実感しました。あれは、本当に時空を超えますね。あとは、僕らは去年から大型フェスに結構出るようになったんですけど、そうするとやっぱり世代差というのがすごくあるんです。若い世代のバンドが主催しているフェス……たとえばSiM主催のフェスとかに出ると、20代の子達とかは僕らのことを知らない。僕らは演奏力とか、グルーヴとかで若いバンドに負ける気がしていないので普通に激しいライブをするんですけど、若い子たちは“ポカン”としている。でも、「少年」と「Like @ Angel」は少しは知っていて。そういう中で、僕らも変わっていくというか、楽なところは楽していいんだと思うようになりました。僕らは炎天下の中で、若者とゴリゴリに体当たりして戦うオジサンだったわけですよ。でも、そうではないアプローチでも、いいんじゃないかなと思うようになった。それに、黒夢というものに対して常にチューンアップしていかないといけないので、フェスは呼ばれるのであれば、出られるのであれば、出ようと思いましたね。
──ぜひ、そうあっていただきたいです。キャリアを重ねると周りのことはあまり気にしなかったり、アンテナの感度が鈍ってしまうこともありますが、さらに上を目指す意欲を持たれていたり、新たな気づきがある状態で活動されているというのは素敵なことですので。
黒夢はワンマンだけをやっていた時のほうがよかったという声もありますけどね。そのほうが大御所感は出るかもしれないけど、どうなんだろう? 90sの所謂V系と括られるバンドで、フェスで若い子達の前にも出ているバンドが少ないんです。そういう意味では、自分達が納得するというよりも、ファンの人に誇ってほしいという気持ちも強いですね。僕らはたまたまヴィジュアル系というところになってしまったけど、“黒夢だけじゃねぇ?こういうところに出られるのは”というふうに思っている人はいると思う。飛び道具的に「フェスに1回出ました」ではなくて、フェスに出ているのが当たり前になってるというのは珍しいことなんですよね。
──清春さんの秀でた歌唱を、より多くのリスナーに披露していただきたいです。そして、今後の黒夢の動きとしましては、まず7月15日に『Drug Treatment』(1997年)と『CORKSCREW』(1998年)の新録版がリリースされます。
黒夢の最後の姿を2026年にバージョン・アップして出したいという思いがあったんです。あんま僕は昔のCDを聴いてほしくない派なんですよ新録を嫌がる人がいることは分かっているけど、今回の2枚は聴いてもらえば納得してもらえるんじゃないかなと思います。
黒夢「少年 2026」Music Video/Album『CORKSCREW 2026』
黒夢「NEEDLESS 2026」Music Video/Album『Drug TReatment 2026』
──新録は時間が経つとフラットな感覚で聴けるようになりますので、新録に抵抗がある方には2~3年待っていただきたいですね。そして、7月17日18日19日にTOYOTA ARENA TOKYOで3デイズ公演、さらに9月6日に東京ガーデンシアターでライブが行われます。
これは、黒夢がやったことのない領域なんです。これまでの最大が横浜アリーナ2デイズで、それから20年くらい経っていて3デイズという黒夢史上最大の日数で、さらにもう1日あるという。僕は大反対しました。1日でいいだろうと。でも、すでに会場を押さえてあるということで。今では、もういいかなと思っています、2人とも。
──それは、黒夢がスタッフの方に、これくらいの規模の公演をしてほしいと思わせるものを残してきているということの証だと思います。
僕らは当時からライブハウス指向というか、アンチ・メジャーというか。メジャー・フィールドで活動しているけど、その中でのインデペンデントみたいな気持ちでいたんです。プライベート・オフィスを構えていたし。僕は体制に対して、いつも不満があるんですよね。不満があるというか、反対側にいるのがロックだと思っていて、その古い考え方が今でもある。たとえば、その時々の旬なものとかを大きく見せる宣伝の仕方とかを見ると“しょうもないな”と思うんですよ。だからこそ、黒夢であると思いますけど。日本では“売れているアーティスト=国民的スター”みたいな感覚があるじゃないですか。サザンオールスターズにしても、Mr.Childrenにしても、B'zにしてもそう。今だったら、Mrs. GREEN APPLEとかね。僕らはそこまでなれなかったけど、“黒夢ってメジャーだけど、ずっと尖ってる”とリスナーに感じさせるスピリットは変わらず持っていたいと思っています。
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