リアルとバーチャルを自由自在に往来するシンガー、棗いつきが「LIVE TOUR 2025『VOYAGERS』」を開催する。初の海外公演となる台湾公演、La prièreとしても活動を共にする藍月なくるをゲストに迎えた札幌公演などを経て、キャリア史上最大規模となるJ:COMホール八王子にてファイナルを迎えるという非常に充実した全5公演だ。
ライブごとにテーマソングを作り、それを音源化するほどに棗はライブという表現の場を大事にしているのも特徴的である。今回のインタビューでは棗の活動遍歴を振り返り、今年リリースした作品にフォーカスするなど、様々な角度から彼女のクリエイティブへの考え方やライブ観を探った。
ライブごとにテーマソングを作り、それを音源化するほどに棗はライブという表現の場を大事にしているのも特徴的である。今回のインタビューでは棗の活動遍歴を振り返り、今年リリースした作品にフォーカスするなど、様々な角度から彼女のクリエイティブへの考え方やライブ観を探った。
──棗さんはもともと子どもの頃、お芝居の道に興味がおありだったそうですね。
小学生時代の学芸会で、4年生のときに6年生がやっていた劇を観たのがきっかけでお芝居に魅了されたんです。ものすごく本格的な劇で、ヒロインの女の子がものすごく上手で、客席全体を巻き込んでいたんですよね。年齢が1、2個しか変わらない女の子が、体育館でこんな空間を作れるんだ……!と感動したのがきっかけでお芝居に興味を持ちました。でもわたしは自分の外見があまり好きではなくて、人前に出ることに抵抗があったんですよね。それで声優さんという仕事を知って、それを志したんです。
──中学生になって演劇部に入部しようとしたのを親御さんに止められ、音声投稿サイトにセリフを投稿するようになり、そこから“歌ってみた”を始めたとのことで。
芝居をやりたいのに、信じられないぐらい芝居が下手だったんですよね。台詞を投稿しても全然誰も聞いてくれなくて(笑)。どうしたら聴いてもらえるかな……と思っていたところに出会ったのが“歌ってみた”だったんです。そしたらセリフよりも聴いてもらえたので、そこからじょじょに本腰を入れていきました。歌ってみたをやりながら、アマチュアでボイスドラマを作ったりしていましたね。
──歌とセリフに共通しているのは“声”ですが、棗さんにとって声はどのような表現ツールなのでしょう?
こんなことを言うのは憚られるんですが、実はあんまり自分の声が好きではなくて。もともと自分の声には特徴がないと思っていたのと、活動を続けるごとにいろんな人のリアクションから、幼さがあって、元気できゃぴきゃぴした印象を与えることを認識して、自分の声質が自分の性格や自分が好きでやりたいと思っているかっこいい系の曲と噛み合わないことにずっと悩んでいたんです。でも活動を続けるなかで1周回って、かっこいい曲に幼くてかわいい寄りの声が乗るのも、それはそれで個性かなと最近になって飲み込めてきました。ハンデかもしれないけど、持ってるカードで勝負するしかないので。
──歌い方がクールかつ演技力も発揮されているので、棗さんのボーカルがロックナンバーに合わないとは感じませんでした。
ありがとうございます。わたしの好きなEGOISTさんもかっこいいけれど、どっしりした太い声というわけでもないですし、声質に縛られる必要はないのかな、どう使いこなすかを考えるしかないんだなと思うようになりました。得意なところに行ったらもっとラクだっただろうなとは思ったりもするんですけど(笑)、やりたい音楽をやるほうを選びました。