DEEN、30周年で初のオーケストラ×バンドサウンドで行う理由、30年間の活動について二人へインタビュー

インタビュー | 2023.05.31 21:00

DEEN結成30周年を記念する、初のオーケストラ公演の開催が決定した。30th Anniversary Celebration『DEEN Premium Symphonic Concert-WINGS TO THE FUTURE-』と題された今回のステージでは、「このまま君だけを奪い去りたい」「瞳そらさないで」ほか、ミリオンセラー楽曲を中心に、DEENの作品群がオーケストラ&バンドサウンドとともに披露される。6月17日大宮ソニックシティ、22日大阪フェスティバルホールの、2日間だけ繰り広げられるぜいたくなライブ。至高の時間と空間をぜひ“体感”してほしい。
──3月にベストアルバムのリリース、そして武道館ライブがあって、ひとつの区切りを迎えたと思いますが、さらに形を変えて今回のようなライブを行いたいという想いはあったんですか?
池森秀一(Vo)30周年で何か新しいことができたらと思っていたところに、ピッタリすぎるオファーをいただき、びっくりしました。
──最初に今回の話が持ち上がった時、どう思われました?
山根公路(Key)ぜひやりましょうと。30周年という、この1年をかけて何か特別なことをやりたいなという想いがあったので、それがどういうものがいいのか考えていた時、今回のオーケストラの方たちとの共演ということになって。なかなかできることではないじゃないですか。これはまさに30周年の記念にピッタリだと思っています。
──自分たちとオーケストラとの共演というのはすぐにイメージできました?
池森玉置浩二さんのシンフォニック・コンサートを拝見していたので、あの感じかなと漠然とイメージはしました。ただ、実際にオーケストラは体感したことがないんですよ。これまでもカルテットやダブルカルテット、それより少し多い人数のストリングスとの共演はレコーディングでも行ったことはありましたが、初めてのことなのでとても楽しみです。
──フルオーケストラだと迫力が違いますよね。こんなふうにやってみたいなという想像が膨らんだりしました?
池森DEENの楽曲はコーラスがとてもたくさん入っている曲が多いんですよ。そんなふうに聴こえないかもしれないですけど、明らかにコーラスワークだけのフレーズもあるんです。コーラスはいつも山根が担当していますが、今回はコーラスなしでライブを行う予定です。オーケストラの方たちにはバンドサウンドの上に乗っかっていただくのですが、コーラスのパートを弦楽器や管楽器の演奏で表現してもらいたいなと、そういうイメージは浮かびました。
──あの緻密なハーモニーをオーケストレーションで再現することで、魅力が増幅されるというか?
山根そうですね。曲に対するアプローチとして、和音で積み重ねる部分も聴かせどころなので、そこを引き立たせる意味でもオーケストラはいいなと思います。あと、ストリングス自体がすでに入っている楽曲もあるので、それがさらに強調されるというか。そういうアレンジは今回のアレンジャーの方に完全にお任せしていますね。
──どんなふうに生まれ変わるか楽しみですね?
山根しかも、本番の前日のゲネプロ(通しリハーサル)で初めて合わせるんですよ(笑)。バンドは事前にリハーサルできるんですけど、オーケストラのみなさんとはそこで初顔合わせ。そういう世界なんだなって(笑)。もちろん、音を合わせながら“ここはこうしたほうがいいかも”といった話はあると思いますが、譜面があれば進行できちゃうんですね。
池森そこが違いますよね。譜面があれば成り立つ世界だから。でも、バンドのメンバーともども安心感がありますね、譜面を見ながらやることによって成立するわけですから。
──あらかじめ上がった譜面を見たりとか?
山根アレンジャーの方から音源を聴かせていただけるということなので、そこでまたキャッチボールさせていただけたらと思います。
──安定したバンドサウンドにオーケストラが加わることで、より一体感が増しますね?
池森それが大きいかなと思いました。ただ、僕らがいつもやっているような音圧感じゃなくて、メンバーがオケに調和するような演奏を心掛けないと。あんまりドカドカ鳴らしても、調和できないので。
山根楽器どうしでも、ドラムのメンバーと打楽器の人、ベースのメンバーとコントラバスの人がいるので、ある程度ダブるわけです。そこはちょっとバンドの音を控えて、ということになるでしょうけど、そこら辺をゲネプロで確認したいですね。音響の人たちも大変でしょうけど。
──当日の曲はもう決まっているんですか?
池森もう決まってますね。ファンのみなさんに支持していただいている90年代の曲を中心に考えています。あとは、オーケストラと共演したら確実にいいだろうなと思える曲も登場すると思います。
──当時の雰囲気+オーケストラでどう生まれ変わるのか、気になりますね。
池森ディストーションギターでハーモニーを積んで作っているイントロを、弦楽器や管楽器で演奏するとか。もとのアレンジの持っているメロディは変えずに、オーケストラで表現してほしいと思います。
──2日間だけのライブというのが惜しい気もしますね。
池森それがいいんじゃないですか。“30周年で、あのときやったよね”というライブになれば。
山根終わったら、たぶんもっとやりたかったなということになると思うんですけど(笑)。いつもライブが終わると、“ああ、もう終わるのか”っていう感じになるので。ただ、30周年の特別な年という意味でも、オーケストラとの共演は、いつもできるわけではないので、1曲1曲を噛みしめながらやっていきたいです。今まで幾度となく演奏している曲たちがどう変わるのか、自分たちでも期待があるし、聴いてくださるお客さんも今までとは違う感じを得られると思うので、ぜひ聴きに来ていただきたいです。
──ライブのサブタイトルが“WINGS TO THE FUTURE”ですけれど、さらに可能性を探りつつ、未来に向けて踏み出したいという意味も込められているような?
池森それもありますし、今回の世界観は自分たちの音楽歴に絶対に大きな刺激になるだろうなと思います。そういうことも踏まえて、この先の音楽へのアプローチも変わっていくだろうという期待も込めています。
山根僕らはアルバムを作るときに、ただ漠然と作るんじゃなくて、コンセプトを持ちながら作っているんです。シティポップもそうだし。今回のオーケストラとの共演も含め、色々な引き出しが今後も生まれてくるかもしれないです。
──シティポップといえば、DEENさんのシティポップへのアプローチはかなり早かったですよね?
山根そうなんです。早すぎて、あとから盛り上がるっていう(笑)。でも、そういうのは自分たちの音楽的ルーツの部分ではあるので、楽しくすんなりと作れているというのはあります。
──シティポップという言葉が流行る以前からAOR的なアプローチをされていて、やっと今、時代が追いついた、という歯がゆさはあります?
池森自分たちの世代はそれほどでもないんですが、リアルタイムで山下達郎さんとかを聴いてきた世代の方なら、“なんで今頃?”って思っているかもしれないでしょうね。あの世代の人たちがAORをJ-POPふうに表現した音楽がシティポップと呼ばれるようになったわけで。だから、それはそれで喜ばしいことだし。しかも海外からの人気で、逆輸入ブームになったり(笑)。
山根今、20代~30代の人たちがそれを聴いて、自分たちなりに新しい曲を生み出していたり。そういうのを聴くと、こちらも刺激になりますね。今、ネオシティポップを掲げてやっている人たちもいたり、かっこいいなって。時代がそうやって回っていくのかなと思いますね。
──時代が回るというと、DEENを始めた頃、30年という年月は想像つきました?
池森まったくないですね(笑)。
──もともと、何年続けようと思って始めたわけでもないというか?
池森そうそう。続きましたね。ルーティーンを守り続けられたのは自分たちでもすごいなと思います。作品を作ってライブをやって、というルーティーン。
──あらためて、DEENを続けている原動力というと何でしょう?
池森ファンの存在は大きいですね。あと、奇跡的なことで、最初からミリオンヒットなんか、ふつう出ないですよ。プロデューサーにそういったチャンスを与えていただいたり。最初のきっかけが、自分たちのやりたい音楽を目指してプロになったというよりも、当時のプロデューサーから、“試しで良いから歌ってみて”と言われた曲が「このまま君だけを奪い去りたい」なので。それがきっかけでDEENが始まっているんです。だから、DEENというプロジェクトだと捉えているのがいいと思うんです。スタッフもそうなんですけど、みんな自分のことのようにやってくれるし。DEENの現場に関しても、こんなにやりやすい現場はないよって言ってくれる。そうやって、DEENというプロジェクトをみんなで守ろうよ、せっかくこうやってヒット曲もできているんだからって、そういう感覚があるからだと思うんです。僕はあくまでもDEENというプロジェクトのボーカリストで、歌詞を書く、いろんなプロデュースもする。みんな、それぞれの役割分担が明確になっているかなと。
──プロフェッショナル集団ですね。でも、最初にミリオンヒットがあると、プレッシャーで潰れそうになりませんでした?
池森そういうのは何回もあります。まったく想像していない未来が毎日来るわけですから。当然、売れたいと思ってプロの世界に飛び込んだわけなのに、“売れて戸惑うって、どういうことだ?”ってもう一人の自分が言う。そういうのはありました。自分たちがそれぞれずっとやってきたバンドなら、ヒットが生まれたら“よし来た!”ってなると思いますが、DEENのボーカリストってスタンドマイクがいいのかな(笑)、どういう服を着たほうがいいのかな(笑)、そういうところから始まっているんです。そうやって、それまでにないものを作ってきたんですよ。
──確かに、あらかじめ何かのイメージに近づけるわけじゃないから。
池森特に最初の頃は戦略で全くマスコミに出ていないから。最初のコンサートの時は、どうなるんだろうって感じでした。お客さんは期待度100、でも僕たちは急に売れたわけだら、お客さんとのコミュニケーションの取り方もわからない。余裕もないまま、放り出されたような状態で。そういうプレッシャーというか、押し潰されそうになることはありましたけどね。
──それを乗り越えられる精神力の強さがあるからこそ、30年続けられているんでしょうね。
池森強くはないですけど、ファンのみなさんがずっとついてきてくれたからでしょうね。
山根続けられた要因で言うと、池森の声で歌えばそれがDEENの曲になるという強みがありますね。いろんな音楽ができるからミュージシャン的に楽しい、というところが30年やれている要因かな。そこに池森の歌が乗ると、DEENの曲になる。カヴァーをしてもDEENになるんですよ(笑)。この人はこういう歌なんだって、それはすごいことだし、そういう人がボーカリストになるんだなと思います。
──30周年の今年も後半にさしかかりましたけど、今後に向けての想いというと?
池森やはり今年も、30年やり続けたルーティーンをちゃんとやるだけですね。新曲を出して、作品を仕上げて、その後はライブを行うという。今年もこのプロジェクトを淡々と仕上げていくことになります。また来年は違うアプローチになるかもしれないけれど、それもちゃんとやる。それを続ければ、35周年とか40周年とか見えてくるんだろうなと思いますね。
山根毎年、コンサートや楽曲制作ができるというのは自分たちだけじゃどうにもならなくて、聴いてくださる方、見てくださる方たちがいてのことなので。その想いは年々募っていくので、続けていくのが自分たちの使命かなと。それを毎年やっていくことが目標ですね。なかなかできることじゃないので、それを続けるのが天命じゃないですけれど、そういう感じに捉えてます。恵まれているとしか言いようがないので、それを壊すわけにはいかないですからね。
──そういう意味では、お2人とも気持ちにムラがないというか?
山根そこまで根を詰めてやってないからかも(笑)。一人で作詞作曲アレンジをやっているような、プリンスみたいな人だったら、今年は休もうかとなるかもしれないけれど。いろいろ分担というか、さっきの話みたいにチームで行っているので、そこまでストレスを感じない気はします。
──ストレスをためないよう、制作やライブで発散させて?
山根 そこは大切かな、続けていくうえで。もちろん、ダラダラやっているわけではないですけど、あまり根を詰めていると爆発するかもしれないし(笑)。そこは30年やってきて見えてきた部分でもありますね。
──この先もいいペースで進んでいきそうですね。あらためて今回のライブに来場されるお客さんへのメッセージをお願いします。
池森とにかく最初で最後かもしれないので、みなさん、目撃者になってください!DEENの楽曲がウネリとなって、みなさんのところに感動を伝えられるはずなので。ぜひとも感動していただきたいです!
山根今まで数えきれないほど演奏してきた曲が、フルオーケストラと共演したことで、ここまで変化するんだということを体感してほしいです。今までないことなので、ぜひ体感してほしいです!

公演情報

DISK GARAGE公演

30th Anniversary Celebration 『DEEN Premium Symphonic Concert -WINGS TO THE FUTURE-』

2023年6月17日(土) 埼玉・大宮ソニックシティ 大ホール
2023年6月22日(木) 大阪・フェスティバルホール

全席指定 ¥11,000(税込)

出演:DEEN
指揮:西谷亮

管弦楽:埼玉:パシフィックフィルハーモニア東京、大阪:日本センチュリー交響楽団

詳細はこちら
https://classics-festival.com/rc/performance/deen-2023-symponic/

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  • 岡本 明

    取材・文

    岡本 明

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