「THE FIRST TAKE」が開催した一発撮りオーディションでグランプリを獲得し、ABEMAオリジナル恋愛番組「オオカミ」シリーズの挿入歌「うそつき」「好いひと」がバイラルヒット中の22歳のモダンフォーク/シンガー・ソングライター麗奈が1stアルバム『君とあなたと私と僕と、情熱と』をリリースした。この夏に故郷の鹿児島から上京するという彼女のこれまでの活動を振り返りながら、アルバムのタイトルに込めた思いと、8月に開催が決定した東京での初ワンマンライブに向けた意気込みを聞いた。
──2020年11月にオーディションに参加してからの2年半は、麗奈さんにとってどんな日々でしたか。
麗奈長いようですごく短いような気もする2年間でした。自分が今までやったことがないようなことをたくさん経験させていただいて。初めてのことが多かったので、気持ちが追いつかないときもたまにあったんですけど、自分にとってはすごくいい経験をさせていただいているし、人間としても、ミュージシャンとしてもすごく成長できた2年間になったんじゃないかなと思います。
──特に印象に残ってる出来事はなんですか?
麗奈昨年の夏に行った道の駅ツアーがすごく心に残ってます。九州と沖縄の道の駅を回って、路上ライブみたいな感じで、たくさんの道の駅で歌わせていただいて。沖縄県も生まれて初めてだったし、初めて行く地域も多くて。夏だったので、体力もいるツアーだったんですけど、それでも音楽を届けたいっていう気持ちを自分自身で感じて。本当に音楽にどっぷり浸かってたので、すごくいい思い出になったなと思ってます。
──様々な経験をする中で何か変化もありましたか?
麗奈音楽に対する思いはだいぶ変わったなって感じてます。高校生のときは、ライブはやってたんですけど、自分のために精一杯、歌ってた気がして。でも、今は、聞いてくださる方のことも一生懸命考えながら歌うことが、昔よりはできてるんじゃないかなと思っていて。そういう気持ちの部分がだいぶ変わったんじゃないかなと思います。
──「オオカミ」シリーズで若い世代のリスナーが増えたことはどう感じてますか。
麗奈自分は9歳からYouTubeを始めてたんですけど、80年代の曲が大好きで、その頃リリースされた曲ばっかり歌ってて。
──長渕剛、松山千春、中島みゆき、尾崎豊などを歌ってましたね。
麗奈そうですね。だから、なかなか若い世代に聞いてもらえるっていうことがなかったんですけど、「オオカミ」シリーズで「好いひと」や「うそつき」という曲を使っていただいて、自分と同年代や年下の方が聞いてくださって。インスタグラムでカバーして歌った動画を送ってくださる方もいたし、実際にライブに来てくださる方もいて。道の駅ツアーでも、「オオカミちゃん見ました」っていう方が増えたんですよね。若い方達にも聞いてもらえるっていうのはすごく大事なことなんだなって感じたし、たくさんのパワーもいただいたので、自分にとってはまた一歩進む、大切なきっかけになったんじゃないかなと思います。
──その思いは、ファーストアルバムのタイトルにも通じてますよね。
麗奈そうですね。いろんな世代の方たちに少しでも響くような、少しでも自分の気持ちが届くようなアルバムにはしたいなと思っていて。自分の気持ち、僕の気持ち、私の気持ち、私の情熱を、君に、あなたに、とにかくいろんな人に届けたいっていう思いがあって、『君とあなたと私と僕と、情熱と』というタイトルをつけました。
──そのタイトルにかけて、「君」「あなた」「私」「僕」というそれぞれの人称を使った象徴的な曲を1曲ずつあげてもらえますか。
麗奈はい。“君”は、<monogatary.com>とコラボさせていただいたメジャーデビュー曲「キミをアイス」がいいかな。いろんな方が私のために書いた小説を応募してくださって、その中から一つだけ作品を選んで。その小説を元に書いたので、自分的にはすごく思い入れのある曲になってます。
──原作は、椎名みそさんの「彼女のアイス、勝手に食べた」ですね。
麗奈最初に小説読んだときは、もう涙が出るくらい、めちゃくちゃ感動しちゃって。すごく切ない気持ちもありつつ、誰かを一生懸命に愛する主人公が自分に似たような部分もあるなと感じたんですね。小説に出てきた登場人物たちの思いを考えながら、自分自身がその小説を読んでどう感じたかも大事にして歌詞を書こうと思う気持ちがたくさんあったので、本当にいろんな思いが詰まった、自分にとっても大好きな曲になってます。
──淡い恋心ですよね。片想いなのかな。
麗奈たぶん、両思いではあるんですけど、でも、お互いに好きっていう気持ちを自分から言えないっていう。結局、伝えられないので、すごくもどかしくて、切ない物語だったんですね。歌詞の方は、素直に伝えられないけど、なんとか頑張って伝えるぞっていうギリギリの難しい気持ちを歌ってますね。
──続いて、“あなた”は全15曲中1曲のみで、「ワカレミ」でしか使ってません。これは、
「オオカミ」のインスパイアソングになってますよね。
「オオカミ」のインスパイアソングになってますよね。
麗奈オオカミちゃんシリーズで挿入歌として「好いひと」を使っていただいたときに、自分も毎週日曜日、楽しみに見てたんですよ。そこで感じた思いを書いた曲ですね。伝えたいのに伝えられないとか、オオカミだっていうのを隠してるけど、それでも優しさがあったりとかして。毎週毎週、番組を見ながら、いろんな感情が出てきて、その思いを書いた曲になっています。
──タイトルにもあるように、別れの曲ですよね。きっと忘れられないだろうけども、別れを受け入れて、泣きながらさよならするっていう。
麗奈オオカミちゃんの気持ちを描いてますね。たとえ自分のことを誰かが好きになってくれたとしても、自分がオオカミだっていうことを隠しながら、ずっと一緒にいなきゃいけないし、オオカミも結局は人間だから、ずっと一緒にいたら、誰かを好きになることもあると思う。オオカミちゃんの立場も苦しいと思うし、あとからオオカミだっていうことを知った人たちも苦しいと思うし。オオカミちゃんにしろ、オオカミちゃんじゃないにしろ、どっちもすごく苦しいと思うんですね。最終的には、どんなに一緒にいたくても、離れなきゃいけないっていう苦しい思いを書きました。
──「キミをアイス」も「ワカレミ」も、言いたいけど言えない気持ちを描いてますね。アルバムを通して聞くと、ラブソングだけじゃなく、夢や目標に対しても、口に出しては言ええない主人公が描かれてます。それは、麗奈さん自身ですか?
麗奈そうですね。ちっちゃい頃から、自分の意見や自分の気持ちを人前でなかなか言えなくて。心の中ではすごく思ってるんですけど、それを言わなきゃっていう場面でも、なかなか言えないことが今でもたまにあって。どこにその気持ちを持っていくかってなると、全てが曲に、歌詞になっていくので、自然と言いたくても言えないっていう曲が増えていった感じがします。
──それは、曲になることで昇華される?
麗奈歌詞を書いて、曲を作って、それを誰かが聞いてくれたときに初めて自分の気持ちがすごく報われた気持ちになりますね。
──などほど。「ワカレミ」は“あなた”と“私”でしたが、 “私”を象徴する曲は?
麗奈「うそつき」です。本当に最近出来た曲で、これもオオカミちゃんで使っていただけることになったので、オオカミちゃんの気持ちも考えて、強がりな女の子を描いていて。曲の主人公は自分の気持ちに嘘をついてるんですけど。結局、これも伝えたいことは、自分の気持ちを相手に話さず、自分の本当の気持ちを隠してるってことですね。自分の心に嘘をついて、相手にも嘘ついちゃうんですけど、自分の嘘に騙されないで欲しいっていう気持ちで書いた曲です。
──自分がついてる嘘に騙されないで欲しいってこと?
麗奈そうですね。自分の気持ちに自分で嘘ついていて、本当のことは言えない。でも、相手にはその嘘を見抜いて欲しいというか、騙されないで欲しいっていう。本当に自分の気持ちに、少しでもいいから気づいてほしいっていう心の叫びを書いた曲ですね。
──そして、“僕”は、「僕だけを」「僕らの明日」「ぼく」の“僕”三部作も収録されてます。
麗奈“僕”を使うことは多いですね。その中でもやっぱり「僕だけを」は、高校2年生の時に作った曲なんですけど、高校生の頃からライブハウスで歌わせていただく中で、いろんな方たちに『すごくいい曲だ』って言っていただいて。その頃から、自分にとってすごく大切な曲でもあったし、自分の中ですごく自信のある1曲だったんですけど、THE FIRST TAKEのオーディションでも歌わせていただいて、またさらに、この曲を聞いてくださる方が増えて。THE FIRST TAKEの「僕だけを」をきっかけに自分のことを応援してくださってる方もいらっしゃるので、高校2年生から今まで、いろんな人の思いと自分の気持ちがたくさん詰まった大切な曲になったし、とても思い入れがある曲です。
──好きだけど離れていく“君”とずっと一緒にいたいと願う“僕”。
麗奈そうですね。僕だけを見ててほしいけど、君はうずくまって下を向いて、なかなか見てくれないっていう気持ちのすれ違いを描いた曲ではあります。
──そして、「情熱」という曲がありますね。
麗奈今まで書き溜めてきた言葉の中から、ちょっとずつ積んでいって歌詞にした曲ですね。普段、自分はすごくおとなしいというか、人前でなかなか自分を出せる性格ではないんですけど、自分は自分なりにいろいろ考えてはいて。少なからず、そこにはちゃんとした情熱があるので、そういう疾走感のあるメロディにしたかったし、“情熱”っていう言葉を聞いてくださる方にも、自分自身にも贈りたかったんですね。
──音楽に対する情熱ですか。
麗奈いろんなことに対する情熱なんじゃないかなと思ってます。大半は音楽に対する情熱ではあるんですけど、自分自身の生活のことだったり、自分自身の心のことだったりとか。これを聞いてくださった方も、いろんな情熱があると思うので、その情熱を一緒に奮い立てていこうぜ! みたいな感じで作った曲です。
──プロのシンガーソングライターとして、やっていくんだっていう覚悟や決意も感じました。
麗奈ありがとうございます。自分の曲は結構ネガティブな曲がすごく多くて。言いたいけど言えないとか、本当はこう思ってるのにとか……。そういう、伝えきれない曲がすごく多いので、自分の中でも「情熱」はすごく新鮮だし、自分自身も普段、こういうふうに何かを奮い立たせてるんだなっていうのを改めて確認できたので、確かに覚悟があって書いた歌詞なんじゃないかなと思います。
──鹿児島から上京して、東京に拠点を移すという話も耳にしました。
麗奈そうなんです! 早くて6月、遅くて7月頃には上京しようかなと考えてます。ずっと上京しようとは考えてて。でも、鹿児島がすごく大好きなので、不安もありつつ、ようやく覚悟できたのが、たまたま今だったっていう話なんですけど、少しでも音楽を多くやりたいっていう気持ちがあって。もちろん、鹿児島でできることもあるんですけど、鹿児島じゃできないことも東京だとたくさんあると思うし、自分の曲を聞いてくれるきっかけも増えると思う。今、不安もたくさんあるんですけど、頑張ろうっていう気持ちがいっぱいあります。
──「情熱」には、<新しい世界を探して>というフレーズだけじゃなく、<明日>や<未来>というワードも散りばめられてますが、ご自身では今、どんな未来を見てますか。
目指したい場所や目指したい自分はたくさんあります。カッコ良くもなりたいし、これからも自分自身の素直な気持ちを描いていきたいし、自分の意見も言えるような人間にもなりたい。いろんな目標というか、なりたい自分像はあるんですけど、一番はやっぱり、自分の気持ちをちゃんと素直に曲としてかけるようになりたいなと思ってて。今も、自分の素直な気持ちは曲に書くようにしてるんですけど、なかなかうまくできないことが多かったりするし、10分の1ぐらいの気持ちしか書けないときもあります。だから、将来は、本当に素直な気持ちを歌にして、それを誰かに届けたいなっていう自分像があります。
──アルバム制作の過程では、どんな「自分」が見つかりましたか。
麗奈高校生に入ってから本格的にライブハウスで歌わせてもらったり、鹿児島で路上ライブをさせていただいたんですけど、音楽が嫌になることも多くて。専門学校に入ってからも、音楽を続けるか続けないかですごく悩んだんですね。悩んでいるときは、どんどん音楽を聞かなくなっちゃって、離れていっちゃってたんですけど、専門学校を卒業する間近に「THE FIRST TAKE」のオーディションに応募して、グランプリを獲らせていただいて。そこで、改めて思ったのは、やっぱり自分はすごく音楽が大好きなんだなっていうことでした。それまでは自分のことで精いっぱいになってたので、周りが全然見えてなくて。今はだいぶ……ちょっとは(笑)、周りの景色を見ることができるようになってきて、本当にいろんな方たちが自分の音楽を支えてくださってるんだなっていうことを最近また新たに感じてるし、今は音楽続けている自分でよかったなっていうのを感じます。
──目指したい場所っていうのはどんなところですか。
麗奈ライブハウスとかで歌わせていただくときに、たくさんの方たちが足を運んできてくださって。その方たちが、今日、生きててよかったなって思ってくださったり、また自分の音楽を聞いてくださるような場所に、これからもずっと立ち続けていたいです。あと、まだ漠然としてますけど、鹿児島の大きな会場でワンマンライブをするっていう夢があって。地元の鹿児島で、いろんな方たちのライブも観に行ったんですけど、すごくかっこよくて、自分も素敵なアーティストさんたちと同じ場所に立って、同じように誰かの気持ちを動かしたいなって思います。
──大きな会場とは?
麗奈自分がこれから先、いつか歌いたいと思ってるのは、鹿児島の川商ホールです。いろんなアーティストさんのライブを見たホールなので、いつかそのステージに立って歌いたいなって思ってます。
──その前に、東京で初のワンマンライブ決まってます。「THE VOICE in Me」というタイトルにはどんな思いを込めましたか。
麗奈自分の歌声をあなたに届けたいっていう気持ちでタイトルをつけました。自分の曲たちには自分の気持ちが込められていて。それを歌声に変えて、いろんな人に届けて、少しでも力になれるような、背中を押せるようなライブにしたいなって思っていて。まだちょっとどんなライブになるのかはわからないんですけど、普段、自分の気持ちを素直に出せないので、今回のライブはなるべく自分を出して、自然体のまま、お客さんも自然体のまま楽しんで欲しい。そうやって会場自体が一体になるようなライブにしていきたいなと思いますね。
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