兵庫慎司のとにかく観たやつ全部書く:第187回[2025年6月前半・『ど根性フェス!2』、宮本浩次、ビッケブランカ、マカロニえんぴつ等の9本を観ました]編

コラム | 2025.07.07 17:00

イラスト:河井克夫

音楽などのライター兵庫慎司が、自分が観たすべてのライブのレポを月二回ペースでアップしていく連載の186回目=2025年6月前半編です。半月で9本という、なかなかの本数になりました。
中でも、6月7日(土)大阪城音楽堂の清水音泉『ど根性フェス!2』、こんなブッキングされたら、仕事じゃなかろうと大阪まで行くしかないでしょう、という、すばらしさでした。楽しかったー。

6月5日(木)19:00 からあげ弁当、ライティライト、LAYRUS LOOP @ Spotify O-Crest

UKプロジェクトのイベント『ONE ON ONE』の『若手集合SPECIAL』の回で、ライティライト、LAYRUS LOOP、からあげ弁当の3バンドが出演。という趣旨の企画だからだろうが、チケットは1,000円+ドリンク代という破格の安さ。
トップのライティライトは、今の4人になって本格的に活動を始めたのが2024年3月、平均年齢21歳。1週間前(5月28日)にリリースされたばかりの「ばね」という最新曲がとても良かった。軽やかでキャッチーな曲調と、焦燥感や無力感や、不安や空しさでいっぱいになりつつも、「でもやるんだよ」に行き着く歌詞のマッチングが、とても良くて。
神戸から来たLAYRUS LOOPは、SEに松田聖子の「Rock’n Rouge」を使っていたのがうなずけるような、オールディーズやモータウン等の古き良きポップス、もしくはそのあたりをルーツにした80年代の日本のAORなんかに通じる楽曲を、ギター・ベース&ボーカル・ドラムの3ピースで鳴らしている感じが新鮮なロック・バンド。メロディ・メーカーとしての能力、高い。
で、トリのからあげ弁当、ギターが入って4人編成になってから1年、自分がライブを観たのは3ヵ月ぶりだったが、正直、微妙な時期に差し掛かっている、と感じた。
もう大変に良かったんだけど、このバンド、そもそも、ボーカル&ギターの焼きそば(ちょっとどうなのか、この名前は。と、いまだに僕は思っている)をはじめ、素人丸出しで演奏力も歌唱力もなし、ただ、そんな粗削りなバンドでなくてはおそらく不可能な、闇雲な勢い及びテンションと、歌詞と曲のそもそもの良さで、ここまで来た人たちだ。と、僕は思っているのですね。
で、4人になって1年で、ちょっと、ちゃんとして来ているように感じるのだ、演奏とかが。その方が聴きやすいし、進歩しているんだからいいことなんだけど、でも、本当にちゃんとしてしまうと、あの闇雲な勢いが消えてしまうかもしれない、という懸念がなくもないわけです。
でも、とりあえず、この日みたいな複数のバンドが出る時(=持ち時間が短い時)でも、「チキン野郎」を何度も演奏するという、意味がよくわからないことを続けているうちは大丈夫かも、とも思う。この日は4回やった。もっとやってもいいと思う。誰になんと言われようとも、当分の間は続けてほしい。

6月6日(金)19:00 material club @ LIQUIDROOM

セカンド・アルバム『material club』リリース時の大阪と東京、『VIVA LA ROCK』出演に続いて、この5人での4本目のステージ。ワンマンライブで『物質的Ⅱ』というタイトルで開催された。
某所にレポを書いたが、まだアップされていない。されたら貼ります。

6月7日(土)11:30 『ど根性フェス!2』 @ 大阪城音楽堂

梅雨の時期に野外で、つまり「雨に打たれる前提」でイベントをやればいいんじゃないか、もうこうなったら──関西のイベンター、清水音泉のフェス『OTODAMA〜音泉魂〜』が、頻繁に雨やら台風やらに見舞われて大変だった頃、奥田民生にそう言われたのを真に受けて始めたのが、この『ど根性フェス!』。これで二回目。なお『ど根性フェス!』と命名したのも奥田民生。

今回、TOMOVSKY、TETORA、サバシスター、家主、フラワーカンパニーズ、GRAPEVINE、奥田民生、ピーズという、俺のためにブッキングしてくれたんじゃないか清水さん、と言いたくなるラインナップだったもんで、早起きして大阪まで行った。
関西でバンド編成でライブをやる時は、ははのきまぐれプラスアルファ(今回はファンファンも含む)の編成になるTOMOVSKYがトップ。演奏は言うまでもなくすばらしいし、本人の目に余る自由さも、いつもながらとても素敵でした。
そのTOMOVSKYの「SKIP」を、登場SEに使っているということで、さっきトモさんから生で同曲を贈られたTETORAも、初めてここ大阪城音楽堂のステージに立った時は(なちが)ピーズのTシャツで出た、というサバシスターも、こんなラインナップのイベントに出られるのがとにかくうれしい、とのこと。お若いのに。世代としては親ぐらい、いや、それ以上でしょうに、他の出演者たち。
それから、TOMOVSKYと奥田民生とピーズのはる&アビさんは、今年で還暦ということで、出番後に清水番台&若手から、記念のトロフィーを贈られた。フラカンは、10年ぶり二度目の日本武道館の成功を祈って、なちからダルマを贈呈され、清水番台が片目を入れる。
トリはピーズ。大木弟で始まり大木兄で終わる出順だったわけです。本編9曲アンコール1曲の計10曲で、「還暦ロック」という新曲もやった。
なお、今回は基本的に「ベテランと若手、交互」という出演順になっており、その区分けの中だと、GRAPEVINEは若手側。ということで田中和将、「今日は、若手です!久々やあ!」。そうよね。51歳だし。

6月8日(日) 17:00 THE BACK HORN @ Zepp Shinjuku(TOKYO)

ニューアルバム『親愛なるあなたへ』のリリース・ツアーが、2/3くらいまで進んだ5月9日の長崎で、ボーカル山田将司が本番中に右脚を負傷(発表によると「両足での接地が困難な状態」)。「通常のライブパフォーマンスとは異なる形での歌唱、演奏となるため」、希望者にはチケットの払い戻しに応じる、と告知した上で、松葉杖でステージに立ち、1本も飛ばさずにやり続けて来た末のファイナルが、この日である。
山田将司、ツアーを回っている間に、徐々に回復していったようで、松葉杖なしで立てていた。さすがにいつものようには動けないが、その分上半身のアクションで表現しつつ、歌っている。よかった、大丈夫そうで。
とか思いながら観ていたら、中盤あたりから、ステージの上も下もどんどんテンションがアップして行った末に、後半で山田将司、間奏でいつものように大股でノシノシとステージを歩いたりし始める。「ああっダメ!そんなに足を踏みしめちゃダメ!」と、ヒヤヒヤした。最高だったけど。

6月9日(月)19:00 ピーズ@渋谷クラブクアトロ

ピーズの誕生日(初ライブをやった日)であるこの日は、毎年なんかしらライブをやることになっていて、2017年の日本武道館もこの日だったし、アビさんが二度目の帰還を果たした上野水上音楽堂もそうだ。豊洲PITでワンマンをやった年もあった。
で、今年は渋谷クラブクアトロ。ここ数年の、今の4人になってからのピーズのワンマンは、40曲くらいやるのが、デフォルトになっている。「今日が最後のライブのつもりでやる」というようなことを言うミュージシャンは多いが、それを毎回本当に実行しているように、僕には見える。
で、これはここ1年くらいかな、それだけやると、全体の尺が長くなるので、途中で休憩時間を設けるようになった。客電を点けて、ベースみったんとドラム茂木左はいったんステージから去るのだが、はる(大木温之)はそのままひとりで弾き語りで2〜3曲歌ったりして、だからお客さんもそのまま観ていて、結局、休憩になっているんだかなっていないんだかわからない按配になっている。この日もそうで、はるだけでなくアビさんもステージに残って、3曲やった。3曲ともフルコーラスではなかったので、正しくは2.5曲くらいかな。
というわけで、前半17曲、休憩時間に3曲(とします)、後半12曲、アンコールで9曲、最後にアビさんが残ってひとりで弾いたギター・インスト・バージョンの「遠き山に日は落ちて」まで含めると、合計42曲、ということになった、この日は。絶倫。

6月12日(木)18:30 宮本浩次 @ ぴあアリーナMM

毎年の恒例行事になっている、誕生日当日に行うワンマンライブ。そういえば、エレファントカシマシも宮本ソロも、ピーズよりもだいぶ前から、ワンマンライブでは二部制を導入している。よってこの日も、一度インターバルが設けられた。
小林武史が「ハッピバースデー」を弾き始め、オーディエンスみんなで合唱して祝い、バースデイケーキが贈られる──というタイミングでは、宮本、自撮り棒で、自分と各メンバーや、自分とケーキを撮影。次の曲で、その写真がステージ後方に映し出される(終演後にインスタにもアップされた)。
というような、その演出に「おおっ」となる瞬間が何度もあるライブだったのだが、特にグッときたのは、二部のラストの「オレを生きる」。先にメンバーがはけて、バック・トラックと共にひとりで歌いながらステージを下りて行く宮本にカメラが密着し、メンバーやステージスタッフと握手したりするさまが、画面に映し出されていく──という、なんとも素敵なエンディングだった。あまりに素敵だったので、正直、「これ、もうアンコールなくていいかも、この余韻を味わったまま帰りたいかも」とすら、思ったのだが。
アンコール。ステージが真っ暗のまま、宮本が「サムライ」を歌い始める。声はきこえるが姿は目視できない状態。え? どこ?
と思った次の瞬間、画面に宮本が。PA&照明&効果映像等の卓のスペースの前、通路際の客席にどかっと座って、歌っていたのだ。
先にも書いたように、この日何度もあった、ぴあアリーナ超満員のオーディエンス全員が「うわあ!」となった瞬間の中でも、ピークだったのはここ。最後の最後でこれか! 演出の勝利だし、それを100%のテンションで実行する本人の勝利だと思った。

6月13日(金)19:00 スパークス @ EX THEATER ROPPONGI

2年ぶりのニューアルバム『MAD!』を発表して、2年ぶりにワールド・ツアーに出て、その一環で、2年ぶりにこうして来日公演を行うスパークス=ロン(Key)とラッセル(Vo)のメイル兄弟。来月で80歳と77歳。デビューから53年とかそれくらい。
他にいる?そんな人たち。いないと思う。ポール・マッカートニーもローリング・ストーンズもボブ・ディランも現役だけど、2年に1作ニューアルバムとか、2年に一回ワールド・ツアーとか、ありえないし。あ、2年前にも観に行って、この連載に書きました。≫ 兵庫慎司のとにかく観たやつ全部書く:第139回[2023年7月後半・世武裕子や スパークスやフジロック×3日間などに行きました]編
今回はロームシアター京都、大阪Zepp Namba、東京EX THEAER ROPPONGIで2デイズ、というスケジュールの日本ツアーで、僕が観たこの日が最終日だった。
ロックの歴史に残る過去の代表曲の数々も、ニューアルバム『MAD!』の楽曲の数々も、同じように生で聴けるのがうれしい。どの曲も、イントロが始まると、みんなワアッ! となる。バンド側にとってもファンの側にとっても、こんなに理想的な光景、なかなかないんじゃないかな。と、その場にいながら思った。
願いはひとつだけです。この状態が、1年でも、1日でも長く続きますように。

6月14日(土)18:00 ビッケブランカ @ 昭和女子大学人見記念講堂

カナダ・アメリカ・メキシコ・日本を回る、北米&国内ツアーの、国内編の1本目。このDI:GA ONLINEにレポを書きました。≫ ビッケブランカ2025年のツアーは新機軸だらけ、刺激だらけ!北米編→国内編の国内編1本目を観た

6月15日(日)18:00 マカロニえんぴつ @ 横浜スタジアム

デビュー10周年記念で行われた横浜スタジアム2デイズの2日目。BARKSにレポを書きました。≫ 【ライブレポート】マカロニえんぴつ、横浜スタジアム2DAYSに55,000人集結「胸がいっぱいです」

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    兵庫慎司

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