兵庫慎司のとにかく観たやつ全部書く:第21回[12月の巻~前編~]

コラム | 2018.12.18 18:00

イラスト:河井克夫

音楽などのフリーライター兵庫慎司が、自分が観たライブについてすべてひとこと書いていく連載の2018年12月前半編です。そうか、15日間で11本も行ってたのか、ということに、書いてみて気がつきました。2018年最後の更新になります。では、よいお年を。

12月1日(土)『小林克也・祝喜寿~ベストヒットUSA・DJナイト~』@ 恵比寿ザ・ガーデンホール

という名のDJイベント、夕方から夜までの時間で、石野卓球・DJ KAORI・屋敷豪太・TOWA TEIがDJ、オープニングとエンディングに小林克也のMCあり、中盤では小林克也とDJ KAORI、小林克也と屋敷豪太のトークコーナーもあり、という楽しいパーティーでした。大人たち(私含む)が音楽とダンスとアルコールを楽しんでいるさまが、なんだかとてもよかった。
オフィシャル配信用のニュースレポを書きました。BARKSにアップされたやつ、貼っておきます。

12月2日(日) ハンブレッダーズ ゲスト:2 @ 新宿LOFT

ハンブレッダーズのレコ発ツアーの東京公演。ゲストの2はTHE SALOVERS(活動休止中)の古舘佑太郎(俳優としても活躍中ですね)と、現在銀杏BOYZのサポート・ギタリストでもある加藤綾太を中心に2017年に結成されたバンドで、アルバムを2枚リリースしている。これまでもイベント(やついフェスとか)で何度かライブを観る機会あったんだけど、ちょっと久々にこの日観たら、えらくよくなっていてびっくりした。「より荒々しく」と「よりポップに」の両面がレベルアップしていて、このバンドの歌に込められている狂おしい感情が、よりいっそうぐっさりと受け手に突き刺さる。
で、ハンブレッダーズはもう、ボーカル&ギター:ムツムロアキラの、鬱屈や逡巡を美しいメロと美しい声で聴かせる力に、たたただしびれるステージだった。サブカルヒーローでなく、もっと広く大きなシーンに打って出ることのできる可能性を改めて感じた。
ただ、この日ノドが本調子でなかったようで、本当に無念だったらしく、MCで何度もそのことを謝っていたのには、「謝るの一回でいいから! そんなに気にしなくていいから! きみは若いから知らないかもしれないけど、俺が普段観てるおっさんバンドたち、日によってノドの調子がまちまちなの、よくあることだったりするから!」と言いたくなりました。

12月3日(月)『MUNETAKA Vol.1』 @ 渋谷duo MUSIC EXCHANGE

新人を積極的にフックアップしていこうとディスクガレージが始めたショウケース的なイベントの第一回。OOPARTZ、Wonder Child、THREE1989、髙橋颯、BuZZの5組が出演。
一回ごとにジャンルレスに「胸高鳴る音楽」を紹介していく趣旨で、この第一回目はボーカル・グループやボーカル&ダンス・グループ、つまり「バンド系でない歌もの」みたいなくくりでした。僕は普段あまり接点のないジャンルだったんだけど、であるがゆえにとても新鮮でおもしろかったし、勉強にもなりました。
DI:GA ONLINEにレポを書きました。こちらです。

12月4日(火) サカナクション @ EX THEATER ROPPONGI

EX THEATERが5周年ということで「サカナクション5デイズ」という企画、その最終日におじゃましました。正確に言うとまんなかの1日は別企画で、その前後の4日は『Sakanazukan Seminar VISUAL LIVE SESSION』と銘打って、ライブを「深海」「中層」「浅瀬」の3部構成に分け(先ごろ出たベスト・アルバムと同じ分け方です)、それぞれを過去にサカナクションのMVを作ったことのある映像作家が総合演出する、という趣向。さらにサウンドシステムは、ドイツの「d&b audiotechnik」社の「Soundscape System」を日本で初めて導入──という、なんだかすごいものでした。
最近は、サカナクションのライブ、幕張メッセとかの大会場が中心です。で、足を運ぶたびに、そのすさまじいカネのかかり方に、演出を楽しむことよりも「これ元取れないよなあ」「グッズの売上で補填するしかないよなあ」みたいなことを、つい考えてしまう。スタッフでもないくせに。いや、最高なんですよ? 最高なんだけど、最高であるがゆえに、「うっわあすげえ演出! ……いくらかかるんだ、これ」と思ってしまう、というか。
しかもこの人たち、このように会場が小さくなっても、演出とかをダウンサウジングしない。今回、むしろアップしていたかもしれない。2000人も入らないハコなのに。
なので終始、圧倒されっぱなしでした。ライブハウスでやるなら、もう次からは、演劇みたいに、同じセットリスト・同じ演出で1ヵ月くらいやる、みたいなことにした方がいいと思う。で、それが可能な稀有なバンドだとも思う。

12月7日(金) teto @ 恵比寿LIQUIDROOM

ファースト・フル・アルバム『手』のリリース・ツアーのファイナル、余裕でソールドアウト、客の熱気、すごいけど、ステージから放たれるエネルギーはそれ以上。なんというか、観ていると心がじゃぶじゃぶ表れるような気持ちになる。「情熱」と「焦燥」の塊。まさに「少年たちのヒーロー」としてのパンク・ロック。このバンドのライブ、最近観る機会が何度もあったんだけど、毎回フェスやイベントだったので、ちゃんとワンマンの尺で観るのって大事だな、短いとわからないことがいろいろわかるなあ、と、あたりまえのことを改めて思ったりもしました。

  • 兵庫慎司

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    兵庫慎司

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