歌舞伎俳優の尾上松也と、歌手や女優として活躍する大原櫻子が出演する、劇団☆新感線の新作舞台「ONWARD presents 新感線☆RS『メタルマクベス』disc2 Produced by TBS」(9月15日~10月25日)の公開稽古が9日、IHIステージアラウンド東京(東京都江東区)で行われた。
同作はシェイクスピアの四大悲劇「マクベス」をアレンジした舞台で、宮藤官九郎が脚本を担当。「disc1」から「disc3」までキャストを変え三作が上演される。脚本は同じだが、演者の個性を生かした演出や、セリフが用いられており、その違いを見比べるのも今回の楽しみのひとつだ。
物語の舞台は、フェンダー国、ギブソン国、新興勢力のESP国が火花を散らす2218年。ESP国の将軍・ランダムスター(尾上)が、森の中で出会った三人の魔女から一枚のコンパクトディスクを受けとったことから、運命が動き出していく。
「あなたはマホガニーの王になる」
魔女が繰り返す言葉に、最初は取り合わなかったランダムスターだったが、1980年代に人気を博したヘビーメタルバンド「メタルマクベス」のCDブックレットを開くと、決めポーズをするマクベスは、自分にそっくり。バンクォーは、戦友・エクスプローラー(岡本健一)とうり二つで仰天する。
「あなたはマホガニーの王になる」
繰り返される言葉に心が動いていく、ランダムスター。「メタルマクベスは、自分の未来を予言しているのではないか」。妻(大原櫻子)に伝えると「王になるためには、王(木場勝己)の息子のレスポールJr.(原 嘉孝)が邪魔だ」とけしかけられる。
妻はレスポールJr.に王の暗殺の罪をなすりつけようと、レスポール王がレスポールJr.に贈った名前入りの短剣を盗み、その剣で王を殺すことを考案。「すべてうまく行く」と歌う妻に揺さぶられ、その恐ろしい計画を実行してしまう。
両手を血まみれにし、王を葬ったランダムスター。恐怖の形相で戻ってきたランダムスターを待っていたのは、「二度と眠ることができない」という罪だった。
「disc1」では21年ぶりに新感線の舞台に戻った橋本さとしが、貫禄の演技で客席をわしづかみにした。今作で新感線に初参加した尾上は、大人数を相手に立ち回りを見せるなど、体当たりの演技でファンをくぎ付けにする。
本領発揮と、“にらみ”を思わせる寄り目、拍子木の音が響く中で見得を披露する場面は、歌舞伎好きの心をくすぐる。歌舞伎では見せないメタル音楽に乗せたシャウト、大型バイクでの疾走シーンなど、回転する客席とともにダイナミックに場面が展開していく。色っぽい妻と二人きりになった部屋では、赤ちゃん言葉で甘えるなど、二枚目の外した一場面に、笑みがこぼれるはずだ。
稽古前に報道陣を集めて行った会見で尾上は、4日前に劇場に入ったと告白。360度回転する客席に苦戦しているようで「一度引っ込んでも、(客席が移動している間に、次の場面に向かって)裏ではダッシュしなくてはいけない。想像以上にハード」と話した。
舞台は二幕で構成されるが、ようやく一幕の最後まで稽古を終えたと言い、「歌舞伎は稽古が短いですし、これまでに余裕を持って迎えることができた公演はなかった。毎回『やべえ、今日できるのかな』って思っているので、そのくらい緊張感がある方がいい」と苦笑い。「あと6日で二幕を仕上げる」と気合いを入れていた。
尾上の妻役を務める大原は、8月まで上演された「disc1」を観劇した際に、同じ役を演じた濱田めぐみから「死ぬ気で頑張って。死ぬ気で応援するから」とメールをもらったと語り、「いただいたエネルギーを、舞台にぶつけたい」と思いをみなぎらせていた。
見どころについて尾上は「メタルロックに合わせて、マクベスをやるなんて、唯一無二の作品。一人で(2218年を生きる)ランダムスターと(1980年代に暮らす)マクベスを過去と未来を行き来して演じている。客席が回転するこの劇場でしか見ることができない融合を感じて欲しい」と呼びかけた。大原は「どのシーンを見ても、何回見ても新鮮で飽きない」と自信を見せた。