インタビュー/森 朋之
10周年を迎えたアーバンギャルドが2018年4月8日(日)、東京・中野サンプラザホールで「アーバンギャルドのディストピア 2018『KEKKON SHIKI』」を開催。「10年間の集大成だけではなく、この先のアーバンギャルドを予感させるライブにしたい」(浜崎容子)というこの公演をフックにしながら、アーバンギャルドの過去・現在・未来について、浜崎、松永天馬に聞いた。
アーバンギャルドはいまの体制がベスト(浜崎)
──2018年4月8日(日)、東京・中野サンプラザホールで10周年記念公演「アーバンギャルドのディストピア 2018『KEKKON SHIKI』」が行われます。この10年の集大成的なライブになりそうですね。
これまでの集大成でもありますが、これからのアーバンギャルドを予感してもらえるライブにできたらいいなと思っています。アーバンギャルドは本当にいろんなことがあったバンドで、メンバーチェンジも何回かあったし、ドラムがいない時期もあって。いまの体制がベストだと思っているし、「最高の姿を見せたい」という気持ちもあるんですが、単なるベスト盤的なライブではなくて、この先を示したいという思いもあるんですよね。
アーバンギャルドは2008年に最初のアルバム(「少女は二度死ぬ」)を出したんですが、当時は新感覚というか“いままでにないタイプのバンド”として紹介されることが多かったんですよ。タワレコのポップには“裏・相対性理論”“裏・Perfume”と書いてもらってたんですが、そもそもPerfumeはバンドではないですからね(笑)。その後、4つ打ちロックやアイドルのブームなどがあって、そのたびにいろいろなものを吸収しながら僕らなりの曲を作ってきて。確かにバンドの状況は今がいちばんいいかもしれない。
──2015年にキーボードのおおくぼけいさんが加入したことも大きいですよね。バンドの状態が良いというのは、音楽的なことですか?
音楽的にもそうだし、制作もすごくいい調子なんです。2018年春にリリース予定のアルバムのレコーディングをしているんですが、「10年間やってきただけはあるな」というか、いままでの経験だったり、試行錯誤としてきたことが活かせているので。いまのバンドの状態の良さは私たちだけではなく、スタッフ、お客さんにも伝わっていると思うんですよ。そのことも自信につながっているんじゃないかな。
そうですね。以前は僕が曲を書くことが多かったし、いろんなこと決める比率が高かったんですが、いまはメンバー全員が作曲するし、デモ音源を持ち寄ってアイデアを出し合うことが増えているんです。民主的になったし、各メンバーの音楽的なバイタリティが上がっていることも、いまのアーバンギャルドの強味になっていますね。去年(2016年)浜崎さんがソロアルバム(「Blue Forest」)を出して、今年(2017年)は僕とおおくぼけいがソロアルバムを出したんですけど(松永は7月に「松永天馬」、おおくぼは10月に「20世紀のように」を発表)、それぞれに違った世界観をプレゼンしていて。僕自身、浜崎さんとけいさまのソロアルバムを聴いて「この人、こういうことを考えていたのか?!」という新たな一面を見つけられたし、「違う感覚を持った人たちが集まることで、思ってもみないような化学反応が起きる」というバンドの側面を改めて実感できて。相変わらず、どういうバンドなのかは上手く説明できないんですけどね(笑)。
「どんな音楽をやってるんですか?」って聞かれると、けっこう困りますからね(笑)。
ジャンル的にはぜんぜん縛られてないんですよ。テクノポップ、ニューウェイブは軸になっているけど、メタル的なギターソロとか、ジャジーなピアノアレンジなどもあるので。
私としては、ソロ、バンドを通して、一貫してポップスをやっている意識なんですけどね。ポップスでありたいというのは、この10年間、ずっと思ってきたことなので。
良いポップスというのは毒を上手く内包してますからね。
アーバンギャルドの曲って、実はとっつきやすいと思うんですよ。歌詞を深く読み込んだり、MVを観たりしなければ「いい曲だな」って楽しんでもらえると思うので(笑)。そこは私自身、かなり葛藤があったんですよね。音楽で勝負したいという気持ちもあるし、実際にそうしてきたんだけど、アングラ的な要素によって違った見方をされるっていう。でも、いまは「それも含めてアーバンギャルドなんだな」と納得できるようになって。
行き過ぎたインパクトは、諸刃の剣ですからね。
ソロを出したことも影響しているし、安心して任せられるメンバーがいるのも大きいですね。「この人たちに任せれば、自分が考えている以上のものになる」という信頼関係があるので。
ようやくCDのサウンド、空気感をライブでも表現できるようになった(松永)
ライブのクオリティも上がってるんですよ。以前は音源でやったことをライブで再現できないジレンマがあったんだけど、ここ1〜2年でようやく、CDのサウンド、空気感をライブでも表現できるようになって。みなさん忘れているかもしれないけど、我々は今年、ライブベスト盤(「アーバンギャルド2016 XMAS SPECIAL HALL LIVE 天使 des 悪魔」)を出しまして。
知ってます。私、インストアイベントで全国回りましたから。
ですよね(笑)。ライブアルバム自体が初めてだったんだけど、それは「ライブの音だけを聴いてもらいたい」と思えるようなライブがようやく出来るようになったからなんですよね。そういう意味では、成熟してきたとも言えるのかなと。
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