摩天楼オペラ TOURʼ26 Cinematographe - Final Series -
2026年8月30日(日)Shibuya LOVEZ
摩天楼オペラが1年半ぶりにリリースした11作目のアルバム『Cinematographe』を引っさげて、全国を廻った<TOUR’26 Cinematographe>。そのFinal Seriesのなかから、8月30日、東京・Shibuya LOVEZで行なわれた本ツアーの最終公演のレポートをお届けする。
響(Dr)が作曲者としてクレジットに加わり、メンバー全員が作曲に携わって作り上げたアルバム『Cinematographe』。フランスで発明された世界初の映画装置の名前を冠した今作は、このタイトルが示すように、シネマティックな構造に仕上がっている。いつもならアルバムのなかに収録されるインスト、パワーバラードはいっさいなし。1曲目「SCAR」のフレーズが最後の「Endroll」に再び出てくるなど、とにかく手の込んだ作りで、1本の映画を見ているような重厚な作品となっている。生きているからこそまとわりついてくる葛藤や苦悩、エンドロールを迎えたとき、その感情はどうなっていくのか…。生死を扱ったテーマ、内容はどれも重苦しく、それにともなって、収録曲はどの曲もダークで複雑で、込められた熱量が異様なほど高い。とてつもなくハイカロリーなアルバムになっていた。この作品を、ライブでどう彼らは表現するのか。この夏できたばかりの新しいホール会場、Shibuya LOVEZへと足を運んでみると----。
「アルバムの世界観を表現するのが僕らは得意だと思うんです。こういう広くて、天井の高いホールで」
アンコール、彩雨(Key)は誇らしげにそう語っていた。まさに、彩雨のいった通りのライブだった。既存曲を配しながらも、アルバムの曲順通りに展開していくセットリスト。高貴な歌と美麗な旋律、激しくも繊細な音で各場面の見せ場を演出していくサウンド。まるで、壮大な叙情オペラを見ているような気分だった。そうして、葛藤や苦悩を経てやってきたアンコール。その最後の最後に配したいつもの「喝采と劇場のグロリア」が、生きることに満ちあふれた賛美歌のような輝きを放って響き渡り、人々に大感動を巻き起こしていく。最新作にして、これぞ摩天楼オペラにしかできない素晴らしいライブだった。
オープニングSEが鳴り響くなか、響、優介(Gt)、燿(Ba)、彩雨が定位置につく。響が客席を煽ったあと、苑(Vo)が現れ、ライブはアルバムと同じ「SCAR」で幕を開けた。“信じたこの声は 今も生きている”と冒頭から鬼気迫る感情を歌い上げる苑。その命を証明するように間奏で優介のギターが激しくうねりを上げたところから、次はゴリゴリの高速メタルチューン「EMBRYO」へと繋ぐ。アルバムのなかでも音の情報量が膨大なこのナンバーは、イントロの響のフィルインを合図にすべての楽器が忙しく大暴走して、人の苦しみを表現していく。続けて、ライブは人間の孤独と向きあっていく「Solitude」へ。この曲は、ライブで聴いても3拍子と4拍子の切り変わりがあまりにも自然すぎて、その違和感のなさ、それを実践してしまう彼らの完璧な演奏に改めて衝撃を受ける。まさに、ツアーで積み上げてきた成果が出た場面だ。そして、会場の照明が真っ赤になり、ブラストビートで突っ走る「BLOOD」が始まると、哀愁の旋律が場内を赤く染めあげ、オペラー(=摩天楼オペラのファンの呼称)たちが赤いペンライトを掲げる。オープニングからアルバム曲ばかりが続き、 “ノリ”をみんなで確かめるように繰り出してきたオーディエンスが、「待ってました」とばかりに一気にテンションを爆発させていく。アルバムツアーならではの張り詰めた緊張感がほどけたあと、歌い終えた苑が挨拶を告げる。
この日の苑は冒頭から歌声も絶好調で、とにかくご機嫌だった。にこやかな表情を浮かべながら、今回のアルバムについて「お客さんがどうのってくれるかなど考えずに、全曲、僕たちがやりたいようにやって、僕たちが作りたいように作ったアルバム」だと解説。なのに、それをこうして自分たちでノリを生み出し、楽しんでいく観客を「スゴいよ、オペラー」と讃えたのだ。「よく“ファンと一緒に作ったツアー”とかいいますけど、マジで今回はそう思います」と続けて、さらにファンをべた褒め!「ここは僕たちの“遊び場”。やりたいようにやって!」と叫んだあとは、響が初めて作曲に携わった「三千世界」でライブが再開。
このツアーでファンと作ったノリがもっとも分かりやすく表われたのがこの曲だ。イントロから2バス全開、響の好きなものをつめ込み、宇宙まで破壊しそうなこのメタルチューン。そのなかに、苑の宇宙まで飛んでいきそうなハイトーンを追いかけるように入っていく”ウォーオーオーオ“という躍動感溢れるコーラスを、会場のみんなで歌うと、いままで見たことがないような新しい世界が広がっていった。現状を破壊して前に進もうとする力を、みんなの歌声でバックアップしたあと、曲は「EGO」へ。曲調はメタルコア並みの重量感なのに、メロディーは明るくキャッチーなこの曲では、彩雨がショルキーから繰り出す美しい旋律で、この曲をさらにキラキラ輝かせていき、オペラーたちはジャンプを繰り返してフロアを揺らしていった。そこに、既存曲から文句なしのキラーチューン「BURNING SOUL」を投下。彼ららしい壮大なシンフォニックメタルを浴びた客席は、我を忘れてバーストしていく。響のツーバス、燿のうねるようなベース、彩雨のシンセから優介のギターソロへと連動して、その2人が向かい合ってユニゾンを響かせていく間奏で、観客を大いに魅了。その熱を引き継いだ苑が、美麗なハイトーン、ビブラートを使った歌声で、場内にさらなる高揚感を与えていく。そうして「ENEMY」へ。優介のスラッシュメタルを思わせるようなギターリフが響き渡ると、再びライブは人間の暗闇の世界へと没入。人間に宿り、支配していく憎しみがうずめいていく場内。間奏で燿がフロントまで出てきて、その憎しみを吹き飛ばすような高速タッピングでベースソロを披露すると、観客たちは頭上で手を広げて、大いに咲きまくる。「もっと手、上げてくれー!」と苑が叫び、曲は美しく儚げなピアノの音色から「Desire」へ。生きる人間なら、誰しも逃れられない欲望。その奴隷になっていく様を表わすように、苑は何度も“Desire”と唱えていく。ステージから苑が姿を消すと、インストナンバー「Apocalypse」が始まった。4人のプレーヤーたちが、それぞれの音をつなぎ、絡ませてドラマチックなムードを作り上げていった頃、苑が静かにステージに戻ってくる。
このあと、ライブはいよい、息を呑むような後半戦へ。まず、彩雨が奏でるピアノの繊細なフレーズと苑の優しく包み込むようなヴォーカルから「愛を知りたかった幼き日々よ」が、ゆっくり静かに場内に広がっていく。本編で唯一披露されるバラードに、客席は当然のように静まりかえり、吸い込まれるように歌に聴き入っていく。ビブラートをたっぷり効かせた歌声で観客たちの心の奥底まで、締め付けていったあとは、その余韻を引きずったまま「AGONY」へと展開。ステージ上にぺたんと座り込んだ苑は、まるで舞台の台詞をしゃべっているかのような口調で、低い声で歌いだす。指先をそっと天空に向けて差し出したかと思えば、その手を見つめたり、床から静かに立ち上がった身体を激しく折り曲げたり、シアトリカルな動きを繰り返していく苑のパフォーマンス。それを、より立体的に浮き彫りにしていく激しくも計算されつくしたバンドサウンドの熟成されたクオリティー。息を呑む圧巻のステージだった。苑が歌う耽美なメロディーに優介がギターを重ね、曲は「郷愁のシネマトグラフ」へ。バラードのような歌いだしから激しくテンポアップ、演奏がメタルへと変貌していくところで、激動する人生、そのはかなさを体現していって、「あなたがいた日々」へ演奏は突入。これが本当にヤバかった。本編のライブの肝は、この曲が担っていた。暗く、重厚なアルバムのなかで、なぜここにこんなキャッチーで明るいメロスピを?と思っていたこの曲が、すべてを解かしていくのだ。照明が明るくなった場内、”忘れない 忘れない あなたがいたからこそ生まれた景色“のフレーズを、客席のオペラーひとり一人を本気で見つめながら、死にゆく直前のようなテンション感で激しく、出会えた奇跡を絶唱していく苑に、涙が溢れ落ちる。そうして、それを既存のバラードナンバーではなく、アルバムの曲順通り、メロディックなスピードチューン「Endroll(Final Series Ver.)」でかっさらっていく。この曲のサビで「SCAR」のメロディ-が再び表われるというアルバムの仕掛けが、ライブではさらなる涙を誘い、そうして曲の後半。”言葉が消えても 軌跡は消えない“のところから、苑の魂を振り絞るような熱唱と優介のとんでもなくエモーショナルなギターが交互に掛け合い、命果てるまで、強く、強く生きていく様を観ているもの全員に焼き付けていって、本編は終わりを告げた。
まさに、壮絶としかいいようがないライブを浴びた観客たち。いつもならすぐに上がる「アンコール」の声も、この日は本編が終わったあと、少し時間を空けてから始まった。ツアーTに着替えてステージに戻ってきた5人は、ここで本ツアーを総括。彩雨は冒頭に紹介したコメントに続けて「本当にアルバムを作ってよかった」と和やかな表情で伝え、燿は今回のアルバムについて「本能の赴くまま作った作品」だったと振り返った。「アルバムは世界観が強かったんで、ツアーでは初日と今日の違いがスゴくて(笑)。今日が一番よかった」と響が本音をぶっちゃけると、優介も「初日のLIQUIDはしどろもどろな感じでした」と続け、「でも、そこからツアーで修行して。みんなで作り上げていったら、アルバムがもっとすごいものになりました」と喜びの声をあげた。苑は、響による「三千世界」が「ライブでどうなるのかと思っていた」ことを明かしながらも「ああいう遊びもできるバンドになったところが嬉しいですね」と伝えた。そして「さあ、いきましょうか。このツアー。アンコールは懐かしい曲だけ。今日もこの会場を笑顔で埋め尽しましょう」といって、喉のことを考えて、本ツアーでは温存して他のメンバーに任せていた“煽り”をここで解禁!「僕の喉をここに置いていきます。いけるか?」と会場を激しくシャウトしながら煽って、アンコールは「落とし穴の底はこんな世界」「悲哀とメランコリー」「クロスカウンターを狙え」「GLORIA」と鉄板曲ばかりを続けてパフォーマンス。オペラーたちはタオルを振り回し、“オイ、オイ”と叫び、ヘドバン、折り畳み…ものすごい一体感で場内を盛上げていく。それに応えて、メンバーもステージ上を激しく動き廻り、楽しそうにはっちゃけて大暴れする観客を見つめて、笑顔を浮かべる。そうして、アンコールのラストを締め括るのはもちろん、おなじみの「喝采と激情のグロリア」しかない。バンドサウンドが消えたところで、観客たちが一丸となって大合唱を届けていったあと、静寂に包まれた場内。苑がアカペラで“永遠を生む 私達のグロリア ここで生まれて ここで命を落とすの”と歌い上げていった瞬間、壮絶な本編の物語がすべてこの曲へと繋がっていたという物語に震えが止まらなかった。この歌に心が救われ、昇華されていって涙が自然とこぼれた。賛美歌のような輝きをまとって場内に降ってきたこの日の「喝采と激情のグロリア」のパフォーマンスは、これがあなたが生きている証と伝えるように、観客たちそれぞれの心、人生を温かい光で包み込み、ライブは、感動が広がるなかで終わりを告げた。終わってみれば、本編からアンコールまで物語はつながっていた。いまの彼らがやりたいことを全力をぶちこんだ本ツアーは、摩天楼オペラ史上、今後も語り継がれる名演でツアー最終日を見事に締め括ってみせた。
摩天楼オペラの真骨頂、その最新型を作り上げたといえる本ツアー。この日の公演を通じて、彼らは2027年7月11日(日)、結成20周年を祝うアニバーサリーライブ<摩天楼オペラ 20th Anniversary Live>を東京・Kanadevia Hall(TOKYO DOME CITY HALL)で開催することを発表。その前に、今年はここから年末に向けて、彼らはメンバーに縁のある土地で、5人それぞれの個性にフォーカスしたMEMBER’S PRODUCE LIVEを開催していく。ここでは、ツアーでは体感できない、それぞれの個性に振り切ったユニークなライブが楽しめるので、ぜひとも期待して待っていて欲しい。
まじでいい夜でした!
このメンバーになって作り上げた最高のライブだったと思う。
ありがとう!!
摩天楼オペラ20周年楽しいことやりましょう! pic.twitter.com/zacZsXQW87— 摩天楼オペラ 苑 (@opera_sonoman) August 30, 2026
SET LIST
01. SCAR
02. EMBRYO
03. Solitude
04. BLOOD
05. 三千世界
06. EGO
07. BURNING SOUL
08. ENEMY
09. Desire
10. Apocalypse
11. 愛を知りたかった幼き⽇々よ
12. AGONY
13. 郷愁のシネマトグラフ
14. あなたがいた⽇々
15. Endroll
ENCORE
01. 落とし⽳の底はこんな世界
02. 悲哀とメランコリー
03. クロスカウンターを狙え
04. GLORIA
05. 喝采と激情のグロリア













