今年3月にメジャー1st EP『ghost walk e.p.』をリリースしたエルスウェア紀行が、9月13日にEX THEATER ROPPONGIにて単独公演「夢幻飛行2026」を開催する。
「夢幻飛行」はエルスウェア紀行が単発の単独公演に冠しているライブタイトルで、2022年に渋谷LOFT HEAVENにて初回が開催され、2024年を除いて毎年恒例の公演となっている。ファンクラブ名などにも引用され、エルスウェア紀行を象徴するワードのひとつと言えるだろう。ふたりは「夢幻飛行」を通して、どのような景色を描こうとしているのだろうか。このインタビューでは「夢幻飛行」の歴史や過去の単独公演を振り返りながら、エルスウェア紀行の変遷を探った。まもなく迎える今年の「夢幻飛行」に向けての旅のしおりとして楽しんでもらいたい。
「夢幻飛行」はエルスウェア紀行が単発の単独公演に冠しているライブタイトルで、2022年に渋谷LOFT HEAVENにて初回が開催され、2024年を除いて毎年恒例の公演となっている。ファンクラブ名などにも引用され、エルスウェア紀行を象徴するワードのひとつと言えるだろう。ふたりは「夢幻飛行」を通して、どのような景色を描こうとしているのだろうか。このインタビューでは「夢幻飛行」の歴史や過去の単独公演を振り返りながら、エルスウェア紀行の変遷を探った。まもなく迎える今年の「夢幻飛行」に向けての旅のしおりとして楽しんでもらいたい。
──「夢幻飛行」シリーズは2022年11月の渋谷LOFT HEAVEN公演から始まりました。どのような背景からこのタイトルをつけるに至ったのでしょうか?
安納 想(Vo/Gt)もともと“エルスウェア紀行”という名前にしたきっかけが、祖父が好きだったラジオ番組『JET STREAM』なんです。城 達也さんの時代のものが祖父は好きで、カセットテープのセットを持っていて。すごく幼い頃、祖父が運転する車の中で聴かせてもらったことがありました。謎めいた妖しさにちょっとした恐怖心を抱きつつも、ぎりぎりで思い出せるようなとても古い記憶は夢に似た質感というか…。ずっと深いところに残っている感じがして。大人になって番組を聞いてみると、アームチェアトラベルというのかな、家に居ながらでも旅ができるというようなコンセプトは、自分たちが作りたい音楽や向かい合い方とマッチしているなと感じたんですよね。そんな『JET STREAM』で、エンディングテーマに使われていた曲名が「夢幻飛行」なんです。
──確かに“エルスウェア紀行(=どこでもない場所を旅する記録)”と“夢幻飛行”という言葉は通ずるものがありますね。
安納”音楽で旅をする”というテーマやライブで表現したいことを表すのに最適な言葉だなと思って、2022年の単独公演のタイトルにしました。
トヨシ(Gt/Dr/Cho)安納はタイトルを考えるのが得意というか、上手いなと思います。『ghost walk e.p.』というタイトル自体も、収録している「温度と一部」や「のびやかに地獄へ」もそうですけど、馴染みのある単語を掛け合わせて、馴染みがない響きを作ることが多いというか。だから“無限”ではなく“夢幻”を使った「夢幻飛行」をタイトルにしたのもらしいなと思いましたし、そういう選び方は僕も好きですね。
──確かにトヨシさんのサウンドメイクも、馴染みがあるもの同士を組み合わせて新しいものを作ってみたり、シティポップの音色を使いながらシティポップではないことをしてみたり、突飛というよりはちょっとズラしたものが多いですよね。おふたりは正反対なようで根本が近しい、物理学と哲学の関係のようだなと感じています。
安納お互いを補完し合っている感じはありますね。わたしはものすごく文系だし、トヨシさんはものすごく理系だし、出会った当初は似てるところ、ほとんどないと思っていたんです。長く一緒に音楽を続けてきて、自分たちなりの哲学や核を共有出来ていることは大きなことだと思います。
──「夢幻飛行」は年に1回恒例の単発ライブですが、2024年5月の渋谷WWW公演では「夢幻飛行」ではなく「幌(ほ)をあげる」というタイトルを冠した単独公演が行われました。ここはおふたりにとってターニングポイントにもなるのでしょうか?
安納ライブの前後で大事な心境の変化があったライブでした。それまでは、音楽を作って歌いたい気持ちの奥に、人として表舞台に立つことへの臆病や葛藤がどこかあった気がしていて。目の前のことに夢中になることは得意でも、1年以上先の景色をイメージできない感覚というか。2023年から2024年頭にかけて知っていただく機会が増えてきて、そんなときにふと浮かんだのが「幌をあげる」という言葉でした。狼煙を上げるという意味で、このタイトルを掲げることにして。
──“幌(ほろ)”は一般的には雨風や日光を防ぐためにトラックやバンに張る布カバーのことを指しますよね。“帆”ではなく“幌”というチョイスも目を引きます。
トヨシ幌は頼りになるのかならないのか、絶妙な存在ですよね。その塩梅と自分たちの音楽に近しいものはあるなと感じてます。シティポップと評されることはあるものの、栃木出身の都会との距離感が根づいているからなのか、そこまで都会的な雰囲気ではないと思うし。
安納幌の持つそういう温度感や情けなさ、不完全さが自分たちの音楽にもあるなと思ったんです。悪い意味ではなくて、誰かにとって万能ではないけれど雨風を凌げるくらいの幌にはなれるかも、という根拠のない感覚を信じてきた気がしていたから。実際にWWWの景色を観て、わたしたちそれぞれの欠けた部分がポップスになり得るんだと思えたんですよね。自分たちはもっと遠くまでいける、という確信をはじめて持てました。
トヨシ当時はWWWで単独ライブを開催することに不安も大きくて。でも臆病になってあれこれ考えるよりは、なるようになると突っ込んでいったほうがいい、ネジを外していこうと思ったんです。「幌をあげる」から渋谷CLUB QUATTROで開催した「夢幻飛行2025」までの1年間はそんなモードでした。バンドを始めた頃こそ二人ではサウンド的に足りないなと思うこともあったんですが、得意な分野が違う僕らだから面白がれることも多いです。
──渋谷CLUB QUATTROでのワンマンライブをソールドアウトさせることは、多くのバンドやアーティストにとって節目となるような出来事だと思います。「夢幻飛行2025」もそれに当たるものだったのではないでしょうか。
安納そうですね。「夢幻飛行」は年ごとに違う気づきや発見があるんですが、2020年にエルスウェア紀行をスタートしてから、“どこでもない場所を旅する記録”という名前に見合った道のりを歩んでいるなと感じます。シンガーソングライターではないし、ただバンドと言い切るには二人で同時に演奏できる音数が足りない。トヨシさんとわたしの共通するルーツは銀杏BOYZだけれど、ふたりともむき出しのパンクロッカーにはなれなくて。だからやっぱり、エルスウェア紀行をエルスウェア紀行たらしめるものは、“足りなさ”なんだと思います。一緒に音楽をはじめた頃の音像とは大きく変わった部分もあるけれど、すべてが地続きだなぁと、大きな公演のたびに改めて感じていますね。










