
相変わらず意欲的にライブ活動を展開中の岸谷香が6月からはUnlock the girlsでのツアーをスタートさせる。彼女が50歳になったタイミングでプリンセスプリンセスに続くギャルバンとして始めたこのバンドの活動も今年9年目に突入。今回のツアーでは、ベースのHALNAが“産休”ということでリハーサル中はマニュピレーターを務め、代わりにドラムのYuumiと旧知の山口メイ子がサポートで参加。ギャルバンならではの歴史を刻みながら新しいツアーに臨む彼女たちにバンドの現在とツアーへの意気込みを聞いた。
──Unlock the girlsの活動が9年目に入る一方で“ひとり旅ツアー”は今年10周年ということで、岸谷さんの活動全体もいよいよ充実期を迎えているように見えますが、岸谷さんご自身は現在の自分の状況をどんなふうに捉えていますか?
岸谷香最近、毎年たくさんのアーティストのライブを、日本で、海外で、可能な限り観ています。自分も気付けば長い間、音楽家として生きてるなあと思う今日この頃ですが、他のアーティストを観れば観るほど、コラボなどでご一緒して知れば知るほど、いかに自分が“自分”であるか。より色濃く“自分”であるかが重要だと考えるようになりました。若い頃は、良いところばかりを受け入れて“自分”を作ってきましたが、今は、ダメなところ、できないところも含めて自分だと思うようにもなりました。ダメなところも、他の誰でもない“自分”をつくるパーツの1つととらえるようになったら、なんだか少し楽に“自分”で居られるようになった気がします。Unlock the girls(UTG)と弾き語り、D.S.O(ダイアモンドスウィングオーケストラ)は、私の音楽人生を支えている3本柱です。20代の時から、ずっとずっと夢みていた形に、やっと整ってきました。やっと自分の土台が固まった感じですね。
──今年のARABAKIで共演したASIAN KUNG-FU GENERATIONの後藤さんが、自身の日記で岸谷さんとの共演のためのリハの感想として「岸谷さんが歌うと問答無用の感じがしてすごい」と書いてました。歌うということに関して、今意識していること、また歌う前の準備やケアという意味で意識していることがあれば教えてください。
岸谷ありがたいお言葉デス♡ ギターやアレンジや……総合的に感じてくれた問答無用感なのかなぁ……。私はあまり自分で“歌手”だと思ったことはありません。多分、自分の音楽の1パーツが歌であることは間違いありませんが、作曲、アレンジ、ギター・ピアノ……MC!? などなどの中の1つ、です。
──Unlock the girlsのこの8年の間の活動については、岸谷さんはどんなふうに評価していますか。うまくいったこと、思うようにできていないこと、予想外だったこと、予想以上だったことなど、現在感じていることを聞かせてください。
岸谷50才の時、再び女の子バンドをやりたいと思ってスタートしたUTG。3人の若いメンバーもそれぞれに成長したり、時々つまずいたりしながら、色々な経験(海外レコーディングや、何本ものツアー、同じアーティストを全員で観に行く……など)を積んで、やっと、いいBANDになってきたと実感しています。でも、一番成長したのは、私だなあと最近痛感しています。私のギターが一番成長しました!(笑)。やっと、自分が手綱を引いて、意志を持ってプレイして、その音をギターが鳴らしてくれてる…みたいな。2026年になり、毎日やろうと決めたトレーニング、ほんの数分の指のトレーニングですが、ピアノでハノンを弾くのと同じじゃないか…と今頃気付き、始めました。たった数ヶ月で、その成果を実感して、今まで40年、なんでちゃんと練習してこなかったのかと、自分のバカさ加減に呆れています。20代、もっと練習すればよかった……。 UTGがスタートした時の私のギターはイメージと気持ちのみ、でした(笑)。
──ガールズの皆さんはどうですか? これは良くなったな、成長できたなと思うところ、逆にここは十分じゃないなと思うところなど、ここまでの8年間を振り返って、自分なりに採点してみてください。
Yuko私はギターから音楽を始めたので、最初は香さんの言うド・レ・ミと私のC・D・Eの脳内変換に苦労しました。ちなみに、ソ(=G)とラ(=A)はまだ逡巡します。それと、楽曲の役割的にキーボード・シンセのサウンドをギターに落とし込むということも多かったので、この8年間、試行錯誤してきました。今は逆に、その再現性に挑戦することを楽しめているので、自分自身の成長を感じています。
HALNA時間をかけてバンドとしてのまとまりがかなり出てきたと思います。また、コーラスワークやライブアレンジ等の私たちならではのチャーム・ポイントも出てきて、自信に繋がっていると思います。85点です!
Yuumiバンドとして成長したところは、特にコーラスだと思います。Unlock the girlsの曲でもそうですが、毎年ゲストをお迎えする感謝祭の内容や、プリプリの曲を演奏する時に、先ずは4人だけの楽器で構築してみて、もっと和音が必要!となるとコーラスがマストになってくるので必然的に強化されていって、気付けばアカペラに挑戦してみたり、コーラスワークがこのバンドの強みになっていると思います。叩きながら歌うのはまだまだ難しいのでもっと背筋腹筋をバキバキに鍛えて厚みのあるコーラスを目指します! 採点は、一生懸命みんなと楽しんでいるので、100点満点!!
──確かに、近年のUnlock the girlsのライブを拝見していて、4人のコーラス・ワークがアレンジ上のとても有力な武器になっていると感じています。2月の感謝祭でも吉岡聖恵さんを迎えてのパートで「ありがとう」の一部をアカペラコーラスだけで聴かせたところが素敵でした。コーラス・アレンジに関して、岸谷さんは何か意識していることはありますか。
岸谷私は、基本、アカペラが好きなんです。UTGは、ラッキーにも全員とても良い、個性のある声を持ち、歌える子達でしたから、コーラスについては、最初からものすごく難易度の高いことを要求していたと思います(笑)。しかも、男性に比べて、女性の音域が基本狭いので、その中で、美しい和声をつくるのは簡単ではなく、余計に燃えます(笑)。近頃は、ブルガリアンコーラスが、女性だけで構成されているのに深みがあり、美しくエネルギッシュなコーラスが多いので、よく参考にします。
──ガールズの皆さんはコーラス、さらに言えば歌うこと、に関して何か苦労していたり、意識していることがあれば教えてください。
Yukoコーラスに関してはメンバーの中で一番免除してもらっていたのですが、バンドが進化するにつれていって、Dメロの主メロをいけるまでに鍛えてもらいました。セブンスのテンションを当てに行くのが難しいです!
HALNA基本的なことになりますが、自分のピッチや歌い方だけではなく、4人で合わさった時にどうすれば綺麗に聴こえるかを意識するようになりました。
Yuumi私は叩きながら歌うのに常に苦戦しています。声色の特性上、HALNAはかなり高音が出るので主メロのオクターブ上を任されたり、Yukoは低音域を任されることが多くて、私が香さんの少し上か少し下のラインを歌うのでそのぶん歌う量も多くて、とにかく香さんにも負けない肺活量が必要で、ライブの後半はかなりバテるので、まず体力的に苦戦しています。それに、ドラムは生の打楽器なので、コーラスマイクにスネアやシンバルの音がガンガン被ってしまうので、自分の声を大きく聴きたいけどドラムが大きくなってしまう…、などのもどかしさもあり、叩くボリュームとコーラスのバランスをPAさんと相談しながら音量をコントロールするのがとても難しいです。でも、やり甲斐もその分大きくて生の声でしか出ない感動があるので、香さんの力強い歌とテンションを揃えて歌を極めていく楽しさがあります。
──2月の感謝祭で「Signs」を演奏する際、岸谷さんが「こんな曲をカッコよく演奏できるギャルバンなるといいなと思って作りました」と話したのが印象に残っています。「Signs」という曲自体、奥の深い曲だと思いますが、Unlock the girlsの活動が深まるなかで、「Signs」という曲についての認識、演奏する上での意識などについて、作った当初から何か変化はあったりしますか。
岸谷「Signs」は、私にとっても、いつの日からか重要な、再び音楽に戻ってきた岸谷香の核となる曲に、はからずもなりました。当初は8ビートのシンプルなロックバラードを、誰よりもカッコ良く演奏できるBANDになったら良いなぁと考えていましたが……。この10年近くで、弾き語りで表現する「Signs」が、BANDと違う世界感を作り上げてきて……。歌詞を書くことに執着の薄かった私が「Signs」については、なぜか最初から絶対に曲げられない、書きたい、書かなきゃいけないことを持っていたことも、あの曲が弾き語りのパフォーマンスの中で強力なエネルギーになった理由かもしれません。歌においても、「歌わされている」ニュアンスが強いんですよ。私は、誰かに代わって、その誰かの大切な人へメッセージを届けている、私はただのフィルター……と感じている時もあります。でも、私の魂の全てを注いでる、注がされてるような。やはり、音楽家が音楽を作る時、衝動と執着が無いものにはエネルギーは宿らないと教えられた気がします。
──さて、今回のツアーには〜A面に恋したあなたへ〜というサブタイトルが付いています。このサブタイトルに込めた想いを聞かせてください。
岸谷A面のエピソードを披露しつつ、だけどB面もお好きでしょ? とか。A面に恋として、始まったおつき合いですが、今ではA面は空気のような存在で、ホントの魅力はココよ♡とか、あの恋は若気の至り……とか。男女の関係に置き変えて考えていただけると、いろいろヒントがあります(笑)。
──ツアーとなれば、オフステージの楽しみもいろいろあるでしょうし、加えてギャルバンのツアーならではの楽しみや苦労があるのではないかと想像します。そういった意味で、今回のツアーに向けて期待すること、気をつけたいことがあれば、教えてください。
岸谷今回は、オメデタイ♡ツアーで、ベースのHALNAが産休です。私は、ギャルバンは女性ならではのバンドなので、産休ありは当然とずっとメンバーに言ってきました。私自身、今、音楽だけでも、家族だけでも、今の私ではないと感じます。母になって初めて表現できる、感じられるものも沢山あります。なので今回のツアーは、私のある意味、理想のギャルバンツアー。産休をヘルプしてくれる新しいベーシスト「メイ子」もとても魅力的なミュージシャンで、UTGにも新しい風が吹き抜け、幸せが何倍にもふくらむ感じです!!
──ガールズの皆さん、ズバリ、今回のツアーの見どころは?
Yukoズバリ、今回のツアーで初めて演奏する曲が最後の演奏になるかもしれないことです! 去年のツアーに来た方はお分かりになるかもしれませんが、あのツアーでしか出来なかった新解釈のあの曲。ギターアレンジ頑張ったし、なんならあのサウンドが大好きだし、また演りたいです。でも、そういうんじゃないんです。去年は去年、今年は今年、来年は来年。長いキャリアの中で振り返るその一瞬。音源に残らないサウンド。私たちも悔いのないように大事に、アレンジして、当日は心して弾きます。それとは別に、単純にガールズで久しぶりに演る曲もあって、それも2026年仕様なので、今の私たちをたっぷり当日、会場で生で楽しんで欲しいです。
HALNAマニピとしてリハに参加しながら、改めて感じていますが、ライブならではのアレンジがたくさんあって、より没入感溢れるライブになりそうです!
Yuumi今回HALNAのおめでたにつき、ハッピーヒッターとしてメイ子とともにみんなでグルーヴを高めていってます。これまでライブで演ってきたUnlock the girlsの楽曲も違った表情になるので、そこは見どころのひとつになると思います。ツアータイトルの通り、皆さんの聞きたい曲も我々の出来るベストな形に仕上げています。大切な思い出と今の香さんの歌が混ざって、新しい思い出として彩れる事がとても楽しみです!
──最後に、ツアー後のUnlock the girlsに関する計画、予定など、今後の展望を聞かせてください。
岸谷プリンセス プリンセスの活動は13年間でした。気付けばUTGもう10年目。20代の頃の若さや躍動感とは全く違いますが、確実に、50代からのミュージシャンとしての私を映す鏡となっているUTG。どんな時代が来ても、ブレずに育っていくように大切に育てていきたいです。
岸谷は最近、レスポールというモデルのギターを新しく手に入れたとのこと。レスポールというモデルは芯の太いヘヴィでロックな音が魅力的なギターだが、さて今回のツアーでそのニュー・ギターを岸谷がかき鳴らすシーンがあるのか。ガールズたちの話によれば、いろんな楽曲がニュー・アレンジで楽しめるステージになりそうだから、とにかく新しいドキドキやワクワクを感じさせてくれることだけは間違いないだろう。
そして、今回から参加するサポート・メンバー、山口メイ子からのコメントも到着。ツアーへの期待はいよいよ高まるばかりだ。
そして、今回から参加するサポート・メンバー、山口メイ子からのコメントも到着。ツアーへの期待はいよいよ高まるばかりだ。
──今回参加することになったいきさつは? また、参加が決まった時どう思いましたか?
メイ子別現場で一度ご一緒したYuumiさんから大量の日程が送られてきて、「空いてますか?」と言われました。1日だけ富士山に登る予定が被っていたのですが、岸谷香さんのツアーだと聞きすぐに別日に変更しました(笑)。実家にいる頃、テレビから流れてきた「M」を「良い曲やな〜」と言いながら母と見ていたのをすごく覚えていて、時を経て香さんご本人と一緒に演奏できるとなって本当に嬉しかったです。すごく気合いが入ったので買うか迷っていた新しいベースをすぐ買いに行きました。
──実際RHが始まっていかがですか?それぞれメンバーの印象やスタジオの雰囲気など教えてください。
メイ子まだまだついていくのに必死ですが、刺激的でとても楽しいです! 香さんは次々アイデアを出しては試してとすごくパワフルな方、Yukoさんはほんわか落ち着く雰囲気なのにギターはキレキレでギャップ萌えです。Yuumiさんは明るいムードメーカー、HALNAさんはテキパキ仕事ができるお姉さん! なイメージです! やる時はしっかりやって、休憩もゆ〜っくりとって美味しいものを食べて飲んで、充実の準備期間を過ごしています。
──ズバリ、今回のツアーの見どころは?
メイ子たくさん曲をやりますが、やっぱりアレンジが面白いのでそこが見どころだと思います。昔からのファンの方も今回初めて来る方も、楽しめるライブになると思います!







