27th Anniversary Special Live 「Psy西遊記」
2026年5月3日(日・祝)大手町三井ホール
Psycho le Cémuが、5月3日に27周年の大切なライヴで実施したのは、2004年1月3日に東京BAY NK HALLで行ったライヴ『Psy遊記』の完全再現。なぜこのタイミングで? なぜこの内容を? その答えはライヴを通じて明らかになると同時に、そこに彼らが込めた熱い思いもしっかりと伝わって来た。
この特別なライヴに選ばれた会場は、大手町三井ホール。東京でも有数のビジネス街のオフィスビルにあるうえ、この日はGWの真っただ中で、会場周辺は閑散としている。さらに整然と落ち着いた内装は、ロックバンドのライヴが行われるとはまるで思えないほど。そういった環境が影響したのかどうか、SEからナレーションに続き、お芝居で幕が開くオープニングに、さすがのサイコ野郎(Psycho le Cémuファンの愛称)も座席から立ち上がるかどうか一瞬とまどったよう。けれども、天竺を目指す三蔵法師に扮するYURAサマと、猪八戒のAYA、沙悟浄のseekが姿を見せれば、元祖コスプレバンドの異名にふさわしいなり切りっぷりと、最近の大人っぽい衣装とは異なるキュートな魅力に歓声がわく。

この登場人物からわかるように、『Psy遊記』は『西遊記』の物語をもとにしたもの。天竺にたどり着くのに必要な「天・地・水・火・風」の五つの力のうち、火の力を持つ龍王扮するLidaが加わり、そしてもちろん主人公の孫悟空・DAISHIがステージ中央の大きな岩から登場、5人そろったところで「激愛メリーゴーランド」の演奏が始まった。全体的に若干スロースタート気味の印象を受けたが、物語は続き、孫悟空が風の力を持つ者と判明、天竺への旅を導くように、「Prism」へと続く。
ダンスを繰り広げていたAYAとYURAサマも楽器を手に定位置に着き、いよいよロックバンドとしての本領が発揮される。「この曲を贈ります」というDAISHIの言葉から始まったのは、「愛の唄」。2002年に発売されたデビュー曲であり、Psycho le Cémuに欠かせない名曲。まっすぐな歌詞のラブソングが、そのストレートさ、素直さゆえにPsycho le Cémuというバンドの個性にぴったりハマる。「春夏秋冬」が始まると、トラブルがあったらしいAYAも歌を口づさみながら笑顔を見せ、心地よい軽快なシンコペーションとともに「輝きの中へ・・・」へ続く。タイトルのとおり、キラキラした輝きを放つステージは、デビューと同時にライヴハウスからお茶の間へ、一気に駆け上がった若さにあふれた彼らを思い起こさせるようだった。
そんな輝きから一転、辺り一面を黒々と塗り潰すように「漆黒のゲルニカ」が始まる。座席があるからこそ、それぞれの場所が確保され、観客は力強く体を折りたたむように激しく動き、サウンドに身を任せていく。「行くぜ、東京!」と、seekが吠えて「Mind Core」へとなだれ込み、そしておなじみ「聖~excalibur~剣」へ。ドラマチックな曲調にメロディ、この王道っぷりもまたPsycho le Cémuらしさ。ここまでの8曲で、あっという間に一部が終了した。

二部の開始をワクワク待ち受ける客席へ、龍王のLidaが変身した天馬に乗ったYURAサマらご一行が登場。通路をぬうようにステージへ向かいながら、馬上からお手振りをする光り輝くYURAサマは、本当に有り難い高僧のよう。ステージに5人が揃ったところで、天竺へと向かう途上のドタバタが始まる。小さな子どもが喜びそうな下ネタも交えた内容に会場が沸く。さすがにこの内容は現在の彼らから生まれないかもしれないが、あのコスチュームに身をまとえばなんなく自分たちのものにできるところはさすが。
逆に、これだけの歳月を経たからこそ、このお芝居には新たな解釈ができるのではと胸を打たれたことも記しておきたい。孫悟空のDAISHIが変身の術を使って、仲間割れした4人を仲直りさせるのだが、それが彼の仕業だと気づかないYURAサマやAYAから小馬鹿にされ、叱られてしまう。それでも孫悟空は自分がやったことを口にしない。そんな姿が、もともとバンドの中心人物でありながら、いまでは年下のメンバーからもいじられるようになり、それでいてしっかりとバンドの要をになう現在のDAISHIの姿と重なったと言えば、うがちすぎだろうか。過去に過ちがあったからこそ、彼は何よりもPsycho le Cémuとメンバーを大切に思っている。メンバーと一緒にいるときに彼がいつも浮かべている笑顔にはきっと深い特別な感情があるだろうことが、笑いにあふれるお芝居を見ながら頭をよぎった。
デビュー後、4枚目のシングルとなった「浪漫飛行」(米米CLUBのカヴァー)をアカペラで聴かせた後は、後半戦。華やかにフォーメーションを変化させつつ5人のダンスが繰り広げられた「DANCE Ⅱ HEAVEN」、さらにYURAサマのツインヴォーカルが映える「AREA」と、Psycho le Cémuの個性を散りばめていく。物語の舞台である中国にちなんで「ニーハオ」という挨拶から始まったのは、恒例のAYAのMC。いつもの「~ナリ」ではなく、「~ブー(ブタゆえ)」という、キャラにちなんだ語尾のせいか、その可愛さもひとしお。27年にわたって女形を続けているというのも、改めて考えるととんでもない才能だろう。
ワイワイにぎやかな雰囲気をガラッとロマンチックに変える「この星に願いを・・・」が流れ出せば、優しく包み込むような歌声が広がっていく。そしてまた一転、観客みんなで一緒にジャンプ、会場を揺らした「一億のパルチザン」と、目まぐるしく会場の空気が変化していく。その後に続いた「With」は、ベタと言ってもいいぐらいストレートな歌詞をはじめ、彼らのわかりやすさをぎゅっと凝縮したような一曲。それでいて、なんとも味わい深いギターソロを聴かせるのがAYAらしい。
終盤戦はもちろん熱く激しく盛り上がっていく。「銀狼」が始まれば、観客はここぞと言わんばかりに激しいヘドバンを繰り出し、冒頭に座席から立ち上がるか迷っていたことなど嘘のよう。「LAST EMOTION」が始まるとseekは観客に負けじとステージから客席へ。通路を駆け出し、観客と視線を交わし、触れ合い、全身でこの空間、この瞬間を味わい尽くす。気づけば広い空間には熱気が漂い、すっかりロックバンドのライヴ会場と化していた。そこで本編最後に始まったのは、これまたおなじみ「Murderer・Death・Kill」。もはや何度踊ったかわからないであろう振付を、23年の歳月を経てまた踊っている不思議。懐かしくも幸せな気持ちに包まれて、本編が終了した。
アンコールでは、メンバー一人ひとりが27周年を迎え、『Psy遊記』を再現した思いを口にしていく。seekは、当時の自分たちと向き合う時間になったと、予想以上に感慨深かった様子。23年のときの流れを感じつつも、この格好に時間の経過を感じないと、しみじみ当時を振り返るLidaに、DAISHIが「ツイキャスでやってもらっていい?」とまぜっかえす。幼馴染ゆえのじゃれ合いは、会場の空気をさらに和ませる。そしてYURAサマは、これだけの時間を経ても同じように盛り上がれるものをつくれていることを誇りに思うと語った。
そしてこの日のライヴ内容を提案したAYAからは、前コンセプトである「シャクティシャクティアスティ」の舞台がインドだったことから、中国が舞台の『Psy遊記』を選んだと説明。さらに、BAY NK HALLがPsycho le Cémuにとって最大キャパの会場であり、そこをソールドアウトして日本武道館への道を進むことを願っていたが、叶わなかったと過去を振り返った。改めて日本武道館を目指している今だからこそ、2004年1月3日のライヴを再現することが、2026年現在の彼らには必要だったのだ。そしてそんなライヴをソールドアウトできたことは、大きな自信につながったことだろう。
最後に贈られたのは、「REMEMBRANCE」。大きな空が目に浮かぶような心地よい感覚を味わいながら、サビを繰り返し合唱する。この美しい光景は、きっとPsycho le Cémuの未来につながっていく。2004年、一度は目の前まで近づいた憧れの舞台は、夢のままついえた。けれども、27周年を迎えたこの日の光景は、必ずや日本武道館へと続いているはず。「REMEMBRANCE」には、“夢は幻じゃなくて”という歌詞がある。seekは、このライヴを経て、この歌詞の意味が変わったと口にしていた。漠然とした夢ではなく、リアリティのある夢として、日本武道館は再び彼らに近づいている。もちろん、これからより多くの人たちがPsycho le Cémuの魅力に改めて、もしくは初めて、気づく必要があるだろう。けれども、現在の彼らをもってすれば、それはきっと幻なんかじゃない。27周年を見届けたサイコ野郎とともに、夢が叶う瞬間に立ち会いたい。













