ラックライフ TOUR 2026「Dreamer Believer」〈FINAL&18th生誕祭〉
2026年3月15日(日) CLUB CITTA'
後方まで埋まったフロアの前に登場したメンバーは、冒頭から「初めの一歩」「Hand」と晴れやかでエネルギッシュなライブの定番曲をたたみかける。PON(Vo/Gt)は観客の目を見て歌い、巻き起こるシンガロングに「まんまと泣きそう」と小粋な返しをするなど、1対1のコミュニケーションのように歌を届ける。「サニーデイ」ではikoma(Gt)の青空を悠々自適に飛び回る鳥のようなギターフレーズや、瀟洒(しょうしゃ)でありながらも人懐っこさも感じさせるたく(Ba)のプレイも光り、LOVE大石(Dr)の強い打撃音はポップな楽曲をパンキッシュに響かせるなど、個々のカラーも淀みなく表れた。
韓国公演含む計7都市を回った今ツアーについて「すごく楽しくて心が熱くなる、ぎゅっとしたくなるようなあたたかさのある、すごく素敵なツアー」と回想したPONは、「溢れんばかりの気持ちを歌に込めたいと思います。あなたの心に刺さって抜けない歌を歌いにやってまいりました」と続け、「理想像」へ。歌詞にしたためた思いを自分自身に打ち込むように歌うその声は気魄にあふれ、その後も「Believe」「サーチライト」と熱い信念を刻んだ楽曲を立て続けに披露した。
PONは過去の自分の言葉に突き動かされるように歌うと同時に、それ以降重ねてきた人生も、いまこの瞬間に湧き上がる気持ちも歌に乗せていくため、非常にボーカルの密度が高い。楽器隊の面々も同様で、一音一音を自分の理想の音に昇華するために集中力を注ぎ込んでいる。MCなどで観客を笑わせたりステージを楽しみながらも、一切油断はしない。そんな彼らのライブは、つねに新鮮な印象を与える。観客のクラップに乗せて歌い出した「Home」はリスナーに向けた曲でもあるため、先述3曲と比較すると歌声も音像も優しさを帯びていた。バンドとしての団結力と各々の楽曲の理解度の高さがあるからこそ、4人の個性が光るのだと痛感するセクションだった。
テンポのいいトークで会場が笑いに包まれた後は、その空気を追い風にしてダンスビートが効いた「ラブリープリティーミュージック」で会場を盛り上げ、導入から「けんけんぱ」につなぎ、「軌跡」「タイムライト」とひとつの大きな生命体を作り上げるように音を鳴らす。一音一音に息を呑むほどの緊張感が宿るものの、それらが合わさるとしなやかさが生まれていた。一切の隙がない演奏に引き込まれているとシームレスに「君のこと」へと移行する。“君”への思いをストレートに伝える熱い歌声と、それを丹念に支えるリズム隊、ロマンチックに彩るギターの音色は、観客一人ひとりの心を惜しみなく照らしていた。

ツアーの充実を語るPONは、いろんなことに複雑に考えを巡らせたり悩んだりするのは大切な人たちの存在があるからであること、不安定な世界情勢に対してやるせなさや悔しさを感じたことを明かす。そして「あなたの世界を変えることで、きっと何かが変わると思っている」「あなたに向かって歌うことで、俺はまだ強くなれると思う。あなたがそこにおるから、こんなに悔しかったり、うれしかったり幸せやったりすると思う」「ラックライフの音楽であなたの世界をどうか明るく」と告げ、「願い」でその気持ちを歌と音にした。そこにあるのは悲しみや苦しみ、喜びといった感情を飛び越えた、曲名のとおりのただただ純粋な願いだった。力強くも穏やかな演奏はすみずみまで凛々しく、朝日が昇るような雄大さを放っていた。
その後は「アイトユウ」「ラングレット」とメジャーデビュー前の楽曲を立て続けに届ける。綿毛が風に乗って飛び立つような爽やかで新しいエネルギーが演奏から感じられ、当時彼らが抱いていた若さならではの希望が今の彼らにフィットし、後押しになっているのも印象的だった。なかでもインディーズ1stシングル曲である「ハルカヒカリ」では信念を臆することなく表明し、観客もその思いに賛同するように固く握った拳を高く掲げる。その光景はまさしく、生きていることそのものを象徴するようだった。
PONはライブ活動をおさえて制作期間に入った2025年の話題を切り出し、バンドを18年続けてもまだ夢は叶うと信じていると同時に、それを曲にする怖さや恥ずかしさもあったことに触れる。この本心をどのような曲で聴き手に伝えるべきか、どのような曲ならば聴き手が明るい気持ちになれるかを徹底的に考えた結果、「心の底から好きやなと思える楽曲が作れた」と喜びをあらわにした。そうして披露した「Dreamer Believer」は、すがすがしく風通しがいいサウンドに乗せてPONがハンドマイクで“夢”を堂々と歌う姿や、一つひとつに情感がこもった演奏が眩しい。コロナ禍以降に訪れた様々な出来事を一つひとつ乗り越えた彼らが、制作期間をきっかけにまた新たなフェーズに入ったことを証明する一幕だった。
アンコールで再びメンバーがステージに登場すると、ikomaは「この1年ギターととことん向き合ってきて、18年のバンド人生で今いちばんギターが面白いし、まだまだ楽しめる余白がある」「ラックライフの行きたい方向もわかってきた気がする」と活動での手ごたえと今後の意欲を語り、たくは「ツアーは初日からファイナルにかけて育てていくものやと思っていて。その過程を辿るのが1年ぶりやったからめっちゃ楽しい」「これだけたくさんの人が来てくれて感謝しかないです」と感慨に浸る。大石はsumikaが前身バンド時代にCLUB CITTA’で自主企画ライブを行っていたことに憧れていたと明かし、「自分たちのワンマンでCITTA’に立ってみたいというひとつの夢が叶った」「飛び級しても面白くない。夢を一つひとつ叶えている実感がある」「18年バンドをやっているけど、今も“まだ俺らいけるやん”と思える自分がうれしい」と前向きな気持ちを言葉にした。
PON(Vo/Gt)
たく(Ba)
ikoma(Gt)
LOVE大石(Dr)PONはこの日絶対に披露したいと思っていた新曲を持ってきたと告げ、2024年に病気を患って初めて死を意識したとき、自分がこの世を去った後、大切な人たちの人生に自分が存在しないことを想像したら途轍もない寂しさに襲われたと話す。そして「今日も俺は生きてるし、今も歌えてる。みんなも生きてて、ここにいてくれることがとてもうれしいです。これから先もずっと一緒にいてほしいとほんまに心の底から思いながら、最後歌ってもいいでしょうか?」「“これからもあなたと生きていたい”という歌です」と言い、未発表の新曲「終わりが来るまで」を笑顔で披露した。
バンドの基本理念が綴られた「Naru」、メジャーデビュー曲「名前を呼ぶよ」とバンドのキーとなる2曲でツアーを締めくくると、メンバーは最後にメジャーデビュー10周年を記念したワンマンライブ「Debut 10th Anniversary -Calling-」を発表する。同ワンマンは「名前を呼ぶよ」のリリース日である5月11日の渋谷CLUB QUATTROを皮切りに、6月6日 OSAKA MUSE、ラックライフ初となるタイ・バンコク公演を含む3都市で開催し、これまでの歩みを振り返りながらこれから先へと続いていくバンドの歩みと思いを込めた特別な内容になるという。「今年は結成18周年で、メジャーデビュー10周年。いろんなことを企てていきます。みんないろいろあると思うけど、頑張った先でまた会いましょう!」と呼び掛け、すがすがしい表情でステージを後にした。
今年リリースした「Dreamer Believer」やこの日披露した「終わりが来るまで」には、ここ数年のラックライフの楽曲と比較すると明らかにおおらかさが加わっている。これは焦りから解放されたことが起因しているのではないだろうか。この日の彼らのステージからは、“必死”や“がむしゃら”、“切実”といった類のものとは違う、両足でしっかりと立つような強い意志や辛抱強さが伝わってきた。いつか物事には必ず終わりが来るものだが、その終わりはいつ来るかわからない。もしかしたら明日かもしれないし、50年後かもしれない。だがいつ来るかわからないそれに怯えているならば、この先も歩いていけると信じたほうが、見える景色の一つひとつを丁寧に愛でるほうが、人生は充実するはずだ。ラックライフはこの日、18年間というかけがえのない歴史とともに、夢を叶える美しく長い旅路へと歩みを進めたのだ。
SET LIST
01. 初めの一歩
02. Hand
03. サニーデイ
04. 理想像
05. Believe
06. サーチライト
07. Home
08. ラブリープリティーミュージック
09. けんけんぱ
10. 軌跡
11. タイムライト
12. 君のこと
13. 願い
14. アイトユウ
15. ラングレット
16. ハルカヒカリ
17. Dreamer Believer
ENCORE
01. 終わりが来るまで(新曲)
02. Naru
03. 名前を呼ぶよ

















