清春 TOUR 天使ノ詩 2026 『余る程に楽園』
2026年2月9日(月)LIQUIDROOM
デビュー30周年記念での黒夢再始動と並行して、昨年から今年にかけて約100公演を行うなど、清春は歩みを止めることなく精力的な活動を続けている。2026年2月9日に東京・恵比寿LIQUIDROOMにて迎えた13会場計18公演にわたる全国ツアー「TOUR 天使ノ詩2026『余る程に楽園』」の初日は、その充実を余すことなく証明する一夜となった。
2024年の「TOUR 天使ノ詩 NEVER END EXTRA」、昨年の全国ツアー「LOCAL APPLAUSE」シリーズ、今ツアーにて米子や広島などが選ばれていることからも明らかなように、清春は自身の活動で近年訪れていなかった各地の会場への再訪を実現させている。これはこの数年の活動がこれまでの自身のキャリアを総括するフェーズに入っていることを具体的に指すものなのだという。そして今ツアーの初日は、1994年2月9日に黒夢のメジャーデビューシングル『for dear』がリリースされて33回目の記念日である。彼の節目を祝おうと、平日でありながらも会場には多くの観客が駆けつけた。(※このレポートはセットリスト数曲と演出に触れています)
「楽園余程」の文字が躍るバックドロップが配備されたステージに加藤エレナ(Pf/Key/Cho)とSATOKO(Dr)が現れ、繊細なタッチで「2月」のイントロを奏でると、それに導かれるように白のセットアップを身に纏った清春がステージ中央に登場する。冬の凍てつく空気やたおやかさ、悲哀がない交ぜになったボーカルや演奏は、前日に降り注いだ雪が僅かに残る東京の街の景色と重なる。続いての「GROOVER」では大橋英之(Gt)と栗原健(Sax)が加わるだけでなく清春もエレキギターを構え、音の厚みを倍増させる。鋭さとおおらかさを持ち合わせた5人のグルーヴはたちまち空間を支配し、それに触発されるようにフロアにはシンガロングも湧くなど、瞬く間に“楽園”を体現した。
前日の荒天でこの日の開催を不安視していたという清春は、大勢の観客と初日を迎えられた喜びをあらわにし、「新しいツアーをどうしようか模索中」と話す。実際この日のセットリストはソロ名義での初期曲や現在レコーディング中の新曲も多数披露され、清春自身も近年では組んでいない曲順に挑戦したことで緊張していた旨を明かしていた。これまで自身が積み重ねてきた歴史を再構築しながら、現在ならではの表現を果敢に提示し、観客と分かち合う。それが今ツアーにおいての楽園となるのだろうか、はたまた今後はそれとは別世界が生まれるのだろうか。その発展の行方は、今後各会場で明らかとなるだろう。
ライブハウスならではの近距離を活かして観客を勢いよく連れ出すがごとくアッパーに突き進む場面もあれば、フロアと手を取り合ってダンスをするような高揚感を生み出す場面もあり、さらには夢の向こう側にある深い渦の奥へと引きずり込むような内観的なムードで会場を高潔な空気に染め上げるなど、ライブは様々な趣に溢れる。そのすべてに共通するのは濃密であるということだ。ステージに立ち続けている人間だからこその奥行きのあるボーカル、しなやかな身のこなしは目を見張るほどの存在感を放ち、音と思考と感情が結びついた楽曲と音像は一つひとつが重く、それらがこちらの五感に心地いい刺激を与える。と思いきやMCでは落ち着いたトーンの語り口で、漫談並みの軽妙なテンポのトークを繰り広げ、観客とコミュニケーションを取る。この緊張と緩和も、清春のライブのギミックのひとつだろう。
アンコールではまず、2024年のツアーのアンコールで誕生した、日本の歌謡曲をカバーする新人(?)バンドのTHE HARMONIESが登場する。どう見ても清春の枕風(Vo)、どう見ても栗原のサーベル・ミケ・健(Sax)、どう見ても加藤の不知火・キャプテン・エレナ(Pf/Vo)は、清春の率直な気持ちが歌詞になった即興ソングや、Winkの「愛が止まらない~Turn It Into Love~」、シャ乱Qの「ズルい女」のカバーなどで会場を沸かした。THE HARMONIESは今ツアーに全公演参加し、今年3、4、5月にはイイノホールにて「コンサート2026『日帰り居眠り総本山』」4公演が決定している。今後のレパートリーの広がりにも期待大だ。
アンコールに応えた清春は初日の手ごたえを語り、今ツアーについて「もうやらないかもしれない曲を積極的にやっていく。でもノスタルジーは40%くらい」「本当に楽園のような、ここに来たら報われるような、理想が花開くツアーになればいいなと思っています」と告げる。そして「今の僕が自分の今にしか歌えない歌と演奏を、いいかたちでパッケージしたい。気持ちのこもった、ずっと聴いてもらえるものを作りたい」とソロ名義のアルバムを自身の誕生日である10月30日付近にリリースしたいと意欲を見せ、「このツアーの思い出が詰まったアルバムになると思うので期待して待っていてください」と呼び掛けた。
弾き語りや新旧様々な楽曲を披露した後、あらためて清春は自身の気持ちを言葉にした。「昔のほうがいろいろかっこよかった気がします。でも今がいちばん正しいんじゃないかと思います。皆さんを見ていても、僕と同じように表も裏もなく生きていくんだと思います」「(年齢を重ねると)予測できないことがどんどん増えてきて。だからこそ純真でいられるんだと思います」と告げ、パンクナンバー「HAPPY」で3時間超えの熱演をすがすがしく晴れやかに締めくくる。シンガロングする観客も、その声を全身で浴びながら歌う清春も、瑞々しい演奏を繰り広げるバンドメンバーも、自身から湧き上がるエネルギーを総動員して一音一音を愛でる。その光景はまさに純真そのものであった。
サポートメンバーを送り出し、最後にステージに残った清春は何度も感謝を告げる。そして強い眼差しで「日本で一番素晴らしいツアーにします。僕らと皆さんがいれば、日本で一番崇高なツアーになります」と宣言した。威勢よく呼び掛けながらも名残惜しそうにステージを去る背中には、この素晴らしい時間が永遠に続くわけではないという哀愁と、だからこそ命をかけてでも大切にしたいという気迫が感じられた。
ツアーファイナルは6月14日のZepp Shinjuku(Tokyo)。同会場は今年1月に「TOUR 2025『LOCAL APPLAUSE PART 2』」のツアーファイナルを迎えた場所でもある。彼が各地でバンドメンバーと観客と作り出した楽園は、どのような進化を経て結実するのだろうか。初日LIQUIDROOM公演は、そんな期待感が沸き立つ鮮やかな旅立ちであった。















