兵庫慎司のとにかく観たやつ全部書く:第198回[2025年11月後半・Base Ball Bearとmaterial club、ヒグチアイ、電気グルーヴ、奥田民生名盤ライブ『30』などの7本に行きました]編

コラム | 2026.01.21 17:00

イラスト:河井克夫

音楽などのライター兵庫慎司が、音楽も音楽以外(プロレスとかお笑いとか演劇とか)も含めて、自分が生で (時々配信で)観たすべてのライブのレポを月二回ペースで書いていく連載の、198回目=2025年11月後半編です。
という趣旨なので、普段は、たとえ音楽ものであっても、映画はカウントしないのですが、今回の11月19日(水)に関しては、「アフタートークあり」だったので、入れることにしました。

11月16日(日)17:00 Base Ball Bear @ LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)

長年日比谷野外大音楽堂で行って来たシリーズ・ライブ『HIBIYA NONFICTION』を、日比谷野音のクローズに伴い2024年から会場をLINE CUBE SHIBUYAに移して『SHIBUYA NONFCTION』と名を改めてリスタート、この日はその二回目。
リアルサウンドにレポを書きました。≫ Base Ball Bear、結成25周年を前に魅せた現在地 特別なセットリストで届けた『SHIBUYA NONFICTION Ⅱ』

11月19日(水) 19:00 「『デペッシュ・モード:M』ライヴ・フィルム」(アフター・トークあり) @ T・ジョイPRINCE品川

デペッシュ・モードの2024年のワールド・ツアーのメキシコ公演を軸にしたライブ映画。日本では、T・ジョイPRINCE品川で10月28日(火)19:00から一回、そしてこの日=11月19日(水)19:00から同じ場所でもう一回、さらに11月26日(水)19:00から、T・ジョイPRINCE品川を含む全国14館で一斉上映、の3回。
二回目の19日(水)は、上映後に、石野卓球と山崎洋一郎のアフタートーク付き。そのレポを書いてほしい、と、ぴあ音楽からご依頼いただき、行って、観て、書きました。
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11月22日(土) 11:30 全日本プロレス @ 後楽園ホール

2025年の『世界最強タッグ決定リーグ戦』の開幕戦。そのリーグ戦が5試合、リーグとは関係ない6人タッグが1試合の全6試合。だれる瞬間、飽きる瞬間がない好試合の連続。
芦野祥太郎&潮﨑豪が大森北斗&羆嵐に勝利したのがうれしかったり、メインイベントで青柳優馬&安齊勇馬のダブルユーマに青柳亮生&ライジングHAYATOが挑む兄弟対決(優馬は亮生の実兄)で、順当にいけば兄タッグが勝つところだがまさかの弟タッグが勝利したり、もう大変に心が忙しいまんまで、ずっと楽しかった。
なお、この翌週、沼津大会の帰りに青柳優馬が交通事故を起こしてしまい、しかも無免許で(期限切れで失効していた)、記者会見を開いて謝罪、2026年2月まで謹慎。ということになり、この『最強タッグ』への出場も、途中で終わってしまったのが残念。

11月23日(日) 17:00 ヒグチアイ @ 日本橋三井ホール

まずピアノ弾き語りで全国を回り、その後バンド編成で東名阪と初の韓国に行く、ニューアルバム『私宝主義』のリリース・ツアーの初日。『私宝主義』の曲も、それ以前の曲も、グランドピアノから弾き出される一音一音、彼女の口からメロディに載って放たれるひとことひとこと、すべてが「決して聴き漏らしてはいけません」というような、張りつめた感じ。なので、お客さんもクラシックのコンサートみたいに静かで、真剣に耳を傾けている。日本橋三井ホール全体の空気が、ズーンと重い。でもそれ、不愉快じゃない。むしろ何かとてもいい気がする。
というような、ヒグチアイとお客さんたちの真剣さ、年を追うごとに拍車がかかっているというか、年々強く濃く深くなって行っている気がする。天々高々を始めたのも、その理由のひとつなのかもしれない。この連載の前回に書いた立川のフェスで観た時、みんなで一緒に歌ったり乾杯したりして楽しく盛り上がっていて、普段のヒグチアイのライブとのギャップがすごかったので。
終演後の楽屋挨拶で、つい「同じ人とは思えないです」と言ってしまったら、「そうなんですよ」と肯定された。

11月26日(水)21:00 material club @ Billboard Live TOKYO

今年最後のmaterial clubのライブ、ビルボードライブ東京で18:00と21:00の1日2ステージ。だったのだが、キダ モティフォ(ギター/tricot)の出演がキャンセルになった。体調不良のため、ということだが、発表がライブの前日だったので、本当に急だったんだと思う。残念。この人のギター、ほんとにすごい、と、観る度に思っていたので。
ただし。この日のライブ、普段のその5人編成のmaterial clubを知らない、ライブを観るの今日が初めて、という人からすると、なんの違和感もなく観れたのではないか。4人編成のこういうバンド、として。
この日は全編アコースティック・ギターで通した小出祐介が、彼女の分もがんばって弾いたから、という感じでもなかった。なんて言うんでしょう、説明が難しいが、4人の力で彼女の不在を埋めるというよりも、今日限定で最初から4人編成のバンドに生まれ変わった、というような。それくらいの自然さだった。
会場がビルボードライブ東京で、小出曰く「飲食に似合う選曲とアレンジ」になっていたことも、その理由かもしれないが。「水とロック」なんて、ほとんど別の曲みたいになっていたし。頻繁には集まれない人たちなのに、バンドとしてとてもタフであることが、よくわかった。
あと、ビルボードライブ東京、アンコールなどで、ステージ後方の幕が開くと巨大なガラスになっていて東京の夜景が見える、という演出があるのだが、material clubは本編の後半で幕を開けておいて、そのラストの「Altitude」の最後に「閉めた男feat.吉田靖直(トリプルファイヤー)」のボイスサンプル「カーテン閉まったぞ」が響いた時には幕が閉まっている、という演出をやった。みんな拍手喝采。こんなにもこの場にちょうどいい曲を持っているの、このバンドだけ。

11月28日(金)19:00 電気グルーヴ @ Zepp Haneda(TOKYO)

東名阪のZeppを回る『へびツアー』のファイナル、Zepp Haneda2デイズの1日目。前回のツアー(2025年6月)の目玉は、サポートメンバーのagraph牛尾憲輔に代わってまりん(砂原良徳)が参加、だったが、今回の目玉は、牛尾→まりんのポジションにSUGIURUMN、そしてキーボードで高野勲が参加することである。
SUGIURUMNは、以前から電気と近しいし、牛尾憲輔がコロナで病欠した時に代わりにサポートしたこともあるのでみなさん納得だろう。が、高野勲に関しては、いちばん驚いている、そしていちばん喜んでいるのは俺だ! と言いたいくらいである。
1990年代の後半に、彼がサニーデイ・サービスのサポートをしている頃からライブを観ていて、最近ではGRAPEVINEでよく会う、言うたら古い知り合いである。まさか彼が電気で弾く日が来るとは。でもあれだ、SUGIURUMNが杉浦英治だった頃のバンド、ELECTRIC GLASS BALLOONのサポートメンバーが高野勲だった時期もあったし、サニーデイ・サービスのラスト・アルバム(一度解散した時のやつ)『LOVE ALBUM』は、曽我部恵一・SUGIURUMN・高野勲の共同プロデュースだったし、そのふたりはもともと接点があったのだった。次のツアー、キーボード入れたい、誰かいない? とメンバーに訊かれて、高野くんを推薦したの? と、終演後の楽屋挨拶でSUGIURUMNに訊いたら「そうだよ」とのことでした。
さて、その5人でのライブだが。このツアーだけですか? 今後もしばらくこのメンツでライブやった方がよくないですか? と、言いたくなるくらい良かった。曲目は、ここ数年の電気のライブにおけるレパートリーの中から選ばれていたが、曲順がとても新鮮、「あ、この曲、このあたりでやるんだ?」だらけ。さらに、各曲のリアレンジのされかたも、とても新鮮。
そもそも、ライブのオープニングは、卓球・牛尾・サポートギターの吉田サトシが板付きで、曲が始まるとピエール瀧が出て来る、というのがいつもの電気だったが、今回は高野・SUGIURUMN・吉田が板付きで、1曲目「Missing Beatz」が始まると卓球&瀧が出て来る、というところからして新鮮だったし。また観たい。

11月29日(土)18:00 奥田民生 @ 江戸川区総合文化センター大ホール

名盤ライブ『30/奥田民生』全4本のうちの1本目。ソロのセカンド・アルバム『30』(1995年12月1日リリース)の再現ライブ企画で、チケット代は「ライブ・ドキュメンタリーBlu-ray」と「アーカイブBOOK」込の価格設定になっていて、そのふたつは入場時に渡される、というもの。
なので、メンバーは、今のMTR&Yではなく、当時の長田進・根岸孝旨・古田たかし・斎藤有太。で、本編は、『30』を1曲目から12曲目(=CDリリース時は隠しトラックだったボビー・ヘブのカバー「SUNNY」)までを順番にやる、というもので、もちろんそれもすばらしかったのだが、アンコールがさらにヤバかった。
本編が1時間でアンコールが40分以上、という大サービスぶりだし、セットリストが「怒りの別件」「哀愁の金曜日」「荒野を行く」「細胞」「みんな元気」「青春」「ツアーメン」、そしてダブルアンコールで「女になりたい」──つまり「荒野を行く」以外は、ここ10年くらいライブで演奏されることがなかった曲ばかりだったのだ。観れて幸せ。

  • 兵庫慎司

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    兵庫慎司

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