
東京の西、府中市で生まれた一つのバンドが、長く曲がりくねった道のりを経て、2025年に10歳の誕生日を迎えた。その名はkobore。11月にリリースした配信限定ベストアルバム『kobore-10 YEARS BEST-』は、新曲「夜に焦がれて」を1曲目に、2曲目「幸せ」から16曲目「イヤホンの奥から」までの15曲は、ファン投票による上位曲を曲順通りに配置した、バンドとファンが作る10周年のベストメモリーズだ。3月には自主対バン企画『FULLTEN』のツアーが開催されることも決まった。2026年、新たなスタートラインに立ったバンドは何を思うのか。佐藤赳(たける/Vo)、安藤太一(Gt)、田中そら(Ba)、伊藤克起(Dr)の4人に話を訊こう。
──今の時代にバンドを10年続けるのは本当にすごいことだと思います。どんな思いがありますか。
安藤太一振り返ることもなくただただ必死にやってきて、毎年気づいたら年末になって、「記憶ないなー」と思ってるんですけど、あらためてベスト盤の曲をお客さんに選んでもらった時に、色々思うことはありました。
佐藤赳みんなが求めているものと自分たちの求めているものが、10年かけてようやく交わってきてるのかな?ということを、みんなの好きな曲を集めたベストアルバムという形で確かめられたと思います。「音源だとBPM遅くない?」と言ってくれる人も多くて、それはライブでやっているうちにどんどん速度が上がっていくからで、そういうところのkoboreの良さをみんなが感じてくれつつも、しっかり聴いてもらえる曲も入っていたので。自分たちのやってきたこと、やっていきたいことが、みんなのおかげでまた一つ見えてきたかな?と思いましたね。
──このベストアルバムの選曲は、メンバーが選んだら変わっていた気がしますか。
田中そら変わったと思います。ライブでよくやってる曲、たとえば「ヨルノカタスミ」「幸せ」「爆音の鳴る場所で」とかが入っていないのはありえないから、たぶん似てくるとは思うんですけど、番狂わせがあるとしたら、お客さんが決めたほうがあったかもしれない。「キュートアグレッション」とかが入ってきてるのはすごくいいと思うし、「この夜を抱きしめて」が入ってるのも、ライブチューンではあるけど、音源で聴くのはちょっと重いし長いし、僕たちが選んだら外してたんじゃないかな?と思っていて。そうやってお客さんが、作品に関わるというところに喜びを見出してくれたんだとしたら、(人気投票を)やって良かったなと思います。
伊藤克起ライブでやってきた曲ばかりだから、「まあこうなるよな」という感じですけど、「エール」とか新しい曲が入ってきたのは嬉しいなと思いましたね。「夜空になりたくて」とか、若干切ない感じではあるけど、結構みんな元気なやつが好きなのかな?と思ったので、「ですよねー」みたいな感じです。
安藤「キュートアグレッション」「イヤホンの奥から」とかは、結構意外だった。ライブでやる頻度が少ない曲だから。もっとバラードとかミドルとか、優しい曲が入ってくるんじゃないかな?と思っていたので。そういう、ちょっと飛び道具的な位置の曲を好きでいてくれるのは嬉しいですね。
佐藤たぶん5年前にこの投票をやったら1位は「ヨルノカタスミ」だったんだろうなとかを考えると、変わり続けていってるのは明らかだし、そのために自分たちは曲を書かないといけないし、発信し続けないといけないと思ってるんで。これでいいやとか、そういうものは出したくないなという思いが根底にあって、そのために挑戦し続けていきたいですけど、年数を重ねていくと、挑戦すればするほど挑戦じゃなくなっていくので、そこをさらに塗り替えていかなきゃと思ってます。ここから10年超えて、その変化も楽しめるようになれたら、いいバンドになれるかなと思ってます。
Digital Best Album「kobore -10 YEARS BEST-」
YouTube プレイリスト
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──「この夜を抱きしめて」もそうですけど、バンド初期は曲を書いてなかったそらくんが、今やメインソングライターの一人になったりとか。10年間には、そういう大きな変化もありました。
田中自分にはできないと思ってたんですけどね。音感がないと思ってたから、野球選手で言うなら肩が悪いのにプロを目指すとか、肺が弱いのに水泳選手をやってるとか、そんな感じなんですけど、本当に頑張ればできるんだなと思いました。頑張るというか、好きだったんでしょうね。いろんな人を見ていて、結局「好き」には勝てないなと思ったんですよ。うちの克起もそうですけど。
伊藤え?(笑)
田中克起はドラム、めっちゃうまいんで。努力も大事だし、頑張ることも大事だけど、本当に楽器が好きな人には頭が上がんないし、一番強いなって思います。僕はバンドを始めてずっとそこでもがいてる感じで、常に「努力8/好き2」ぐらいの割合でやっちゃってるんですけど、今更変えようもないし、僕はこの割合でずっと食らいついていこうって決めてます。
──克起くん、今、ほめられましたよ。
伊藤好きこそものの上手なれ、的な話だよね。
田中好きなやつが天才だと思う。努力してめっちゃ好きになるとか、たぶんないと思うんですよ。でもそれで言うと、「バンドが好き」の深さに関しては、僕は結構あるかもしれない。「楽器が好き」「曲を作るのが好き」というよりかは。
伊藤僕は、ドラム以外興味がないというだけ。
田中それを天才って言うの。









