back numberアリーナツアーFINALをレポ!「こんなにアクセルを踏み込んだことは、人生でありません」

ライブレポート | 2022.09.15 18:00

「SCENT OF HUMOR TOUR 2022」
2022年9月8日(木)幕張メッセ国際展示場9・10・11ホール

9月7日と8日の二日間、back numberのアリーナツアー「SCENT OF HUMOR TOUR 2022」のファイナル公演が千葉・幕張メッセで開催された。この公演は当初7月に予定されていたが、清水依与吏(Vo&G)の体調不良により延期されていたもの。メンバーとファンのこの日にかける強い思いが見事に結実した、最終日の8日の模様をレポートする。

巨大スクリーンを使った壮大なオープニングは、古いアメリカ映画を思わせる凝った仕掛け。ツアースケジュールやサポートメンバーの名前を紹介し、最後に「Performed by back number」の文字が浮かび上がると、いやがうえにも気持ちが盛り上がる。溢れ出す光と爆音の中で始まった、1曲目は「怪盗」だ。栗原寿(Dr)と小島和也(B)がしっかりとリズムを支え、サポートメンバーの柿澤秀吉(G)、村田昭(Key)、矢澤壮太(G)が頼もしいプレーを聴かせる中、序盤からパワー全開で歌う清水依与吏。会場いっぱいの手拍子という力強いサポートも加わり、「泡と羊」「アップルパイ」から「オールドファッション」へ、明るい曲調に少しずつ哀愁味を加えながらしっかり聴かせる。とにかく歌をメインに、会場の最後方まで言葉とメロディをまっすぐに届けるパフォーマンスが実にback numberらしい。

「とにかく一生懸命1曲1曲やって、一人一人にオレらがどんな思いで曲を作ってきたのかが伝わるように。最後まで全力でやるのでよろしくお願いします」

気合の入った依与吏のMCを合図に、演出のイメージががらりと変わった。飛び交うレーザーとサイケデリックに歪む映像をバックにしたダンスチューン「エメラルド」から、巨大なミラーボールが廻る下で激しくロックする「MOTTO」へ。さらに、依与吏の思い入れたっぷりのギター爪弾きから始まる「赤い花火」、気持ちのこもった和也のコーラスが印象的な「HAPPY BIRTHDAY」、もの悲しいノスタルジー溢れる「風の強い日」と続くスロー/ミディアム三連発の、じんわりと心の奥底に沁み入って行く深さと切なさ。アリーナツアーらしい派手な仕掛けも施しながら、ホールのような親近感と音のクオリティを失わない。これがback numberのライブ。

和也が「ファイナルなので意気込みすぎて緊張してました」と言うと、依与吏が「オレも」と合いの手を入れる。寿が「誰一人欠けることなくいいライブを作りたい」と宣言し、「幕張のみんな、まだまだ行けるか!」と煽る。三者三様の個性が楽しいMCからの「サマーワンダーランド」は、夏の終わりにぴったりの爽やかなサウンドと、スクリーンに流れる海と空の風景がよく似合う。さらに「恋」から「黄色」へ、火照った体をさますようなミディアムチューンを繋げてじっくり聴かせる。誰かに合わせるのではなく、自分の得意種目でオレはこういう人間ですと伝えたい――依与吏が短い曲解説を添えて歌った「勝手にオリンピック」は、ストレートなロックチューンにノリノリの和也の笑顔や、スクリーンの映像の中で寿が見せるコミカルな演技など、見どころいっぱいだ。

そして、ここからはアリーナ級のド派手な演出が次々と飛び出して、いよいよライブは加速してゆく。ステージを覆うLEDスクリーンが作り出す、3D映像のように立体的な光の帯が美しく回転する中で、アップテンポの「003」から「半透明人間」へ、強力なダンスチューンを連ねて一気に盛り上がる。一転して「sympathy」は、最小限のスポットライトに照らされて依与吏が素晴らしく気持ちの入った歌を聴かせる。極めつけのハイライトは「瞬き」で、まばゆく白い光に包まれたステージの上で、エモーション溢れる歌詞とメロディを叫ぶように歌う依与吏の姿に圧倒される。観客は立ちすくんだままでひたすら聴き入るしかない。いよいよフィナーレが近づいてきた。

「延期したのは苦しかったけど、でも逃げなくてよかった。来てくれて本当にありがとう」

7月にやるはずだった公演を延期したことに、よほどの悔いと自責の念があったのだろう。「来てくれてありがとう」と何度も繰り返し、back numberを見つけてくれた観客たちへの感謝と共感を伝え、「これからもあなたに関係ある曲ばかり作って行きます」と力強く宣言する、依与吏の眼には光るものがあるように見えた。そしてラストスパートはゆったりとした「水平線」から始まり、「高嶺の花子さん」で一気にスピードを上げ、「スーパースターになったら」で限界速度に達して一気にゴールテープまで駆け抜ける。巨大スクリーンに盛り上がる観客の姿が何度も映し出されるのは、今夜の主役はあなたたちでもあるというバンドからのメッセージだろう。「愛してるぞ!」という依与吏の絶叫が、心からの本音として確かに響く。

「こんなにアクセルを踏み込んだことは、人生でありません」

アンコール1曲目「僕の名前を」を歌い終えた依与吏が、ようやくプレッシャーから解放されたように本音をもらした。和也と寿が「最高!」という言葉を繰り返して感謝の気持ちを伝えた。ツアーを支えたサポートメンバーを紹介する言葉にも、真心と愛がいっぱいに詰まっている。曲は「日曜日」、そして「そのドレスちょっと待った」へ。ツアーファイナルの最後にふさわしく、派手に楽しくにぎやかに、ジャンプと手振りで盛り上がるファンと共に大団円のグランドフィナーレ。

back numberってこういうライブするんだなーー鳴りやまない拍手に応えながら、まるで他人事のように驚いた顔でつぶやく依与吏の言葉が面白く、そして胸に沁みる。「これからもずっと横にいてください」、依与吏の言葉にすべての観客が、YESの代わりにあたたかい拍手で返事をする。様々なエモーションの渦巻く、記憶に深く刻まれるライブ。back numberのライブヒストリーに、また一つ忘れがたい美しい1日が加わった。

SET LIST

01. 怪盗
02. 泡と羊
03. アップルパイ
04. オールドファッション
05. エメラルド
06. MOTTO
07. 赤い花火
08. HAPPY BIRTHDAY
09. 風の強い日
10. サマーワンダーランド
11. 恋
12. 黄色
13. 勝手にオリンピック
14. 003
15. 半透明人間
16. sympathy
17. 瞬き
18. 水平線
19. 高嶺の花子さん
20. スーパースターになったら

ENCORE
21. 僕の名前を
22. 日曜日
23. そのドレスちょっと待った

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