名古屋発の“純情/妄想ミクスチャー”シンセポップロックバンド・The 3 minutes。2019年は自主企画ツアーやワンマンに、ライブキッズあるある中の人の全国ツアー帯同や夏フェス出演など、さらにライブバンドとして精力的に活動し続けてきた彼らだが、どうやら12月18日(水)にリリースした最新作『シュレディンガーの女』の制作のなかで様々な心境の変化があったようだ。いまの彼らの心境とはいったいどんなものなのだろうか?東名阪リリースツアーと4回目となるTSUTAYA O-nestワンマンを控える5人に話を聞いた。
──2019年は例年以上にライブが盛んな1年になったのではないでしょうか。
りょう(Vo)そうですね。いろんなライブに出させていただいたことで、僕らの曲に対して、お客さんの遊び方が広がった1年だと感じています。
わたべ(Ba)お客さんをノラセるようなライブをしてきたし、ノラセるための音楽を作ってきたんですけど、たかひろ(Gt)がけっこう歌える人間なのもあって、コーラスワークを凝るようになったりするなかで、音楽的な面を追求しはじめるようになって。
──そこに至るきっかけとは?
ひろ坊(Key)今までの路線に限界を感じたことかな……?世の中の風潮も変わってきてる気がしていて。
りょう「このままこの路線で続けていて、自分たちが目指すものになれるのか?」という疑問が生まれてきたんですよね。メンバーみんな、ライブで暴れられる曲だけが好きなわけではないし。最新作『シュレディンガーの女』を作っていくなかで「次のタームに行きたい」という気持ちが大きくなっていって、僕らなりに音楽的なものを意識しはじめたんですよね。
──『シュレディンガーの女』は以前のような踊れる要素も入りつつも、歌ものとして着地している楽曲が多いという印象を受けました。
なおき(Dr)『シュレディンガーの女』を作ったことでシンプルがいちばんかっこいい、音を詰め込まなくてもここぞという時に出せばかっこいいということに気付いたんですよね。聴いていて心地いい作品になったし、ちゃんとかっこよさもある作品になりました。
わたべ本来音楽というものは「いいな」と思ったその先で身体が動くものだと思うんです。『シュレディンガーの女』はこれまででいちばん音楽ができてるんじゃないかなと思ってます。
たかひろ(Gt)ギターも歪みを減らして、ちょっと大人っぽい音色にしてみました。そういう音は自分も使ったことはなかったんですけど、曲にもすごくマッチしているのもあって音が抜けて、こういうのもかっこいいなと思えるようになったんです。制作を通して成長できて、思い出のある1枚になりました。
──りょうさんは「この5人でバンドをやれているのが幸せ」や、「シュレディンガーの女」についても「この5人で鳴らしてる感じがすごくする」といった旨の発言をなさっていましたよね。
りょうオリジナルメンバーは僕とひろ坊だけだったり、たかひろは加入して2年くらいだったりして、どうしても「この5人でThe 3 minutes」と言えるだけの背景が作れてなかった気がするんです。でもシェアハウスを借りて5人で一軒家に住むようになったり、制作を経て、「この5人で」という説得力が出せるようになってきた気がして。その結果、5人の音がよく出るCDになったし、だからこそかっこいいと思えるものにもなったんです。この5人でもっと大きな場所まで行きたいし、音楽をしていたいんです。このCDを制作していくなかでいろんなものが見えてきたんですよね。
──「あいうえお」はおしゃれなアプローチで、メロディも際立つ新機軸の楽曲だと感じました。
ひろ坊最初は「これを世の中に出していいのか?」と思うレベルのデモでしかなくて、それがなんとかレコーディングの2日前くらいに「これならいけるかな」と思うものが出来上がって。なおきくんにはレコーディングの直前に「こういうふうに叩いてください」って言った記憶がある(笑)。
なおき大変でした(笑)。
りょう今作は歌詞に合ったアレンジがいろんなところに散りばめられているところもポイントですね。でも「あいうえお」はレコーディングの2日前にデモが上がってきたから歌詞がなくて。だからなおきは、僕がパン!と思いついた歌詞で宅録りをしたものを聴きながらレコーディングしてるんです。それが歌い出しにある《愛をください、今すぐに。》なんですよね。それがきっかけで書き上げました。歌詞を書いている僕としては、歌詞に合わせたアレンジをしてもらってるところが多くて、感慨深いですね。
──「シュレディンガーの女」はサビにアコギを使っているんですよね?
たかひろそうなんです。ライブどうしようかなと思ってるところです(笑)。
りょう前半は今までみたいなテンポが速くてノレる感じがあるけど、サビはどうしようかな……ライブでどうなるかのお楽しみですね(笑)。そういう不安すらも今は楽しめてるんです。
──ブログでひろ坊さんは「シュレディンガーの女」の歌詞を褒めてらっしゃいましたよね?
ひろ坊はい。すごくいいと思うんです、この歌詞。今まででいちばんいいんじゃない?
りょう歌詞を書いて挫折をするなかで、「歌詞もいいよね」と言われるバンドになりたいなと思うようになって。いろんな歌詞を聴くようになって、目指しているかたちのひとつのものが書けたので、メンバーにそう言ってもらえるのはうれしいですね。今回は全曲通してわりと草食系男子が主人公で、僕はそういうものが好きなんです。
──それは昔から変わらないところですよね。
りょうそうですね(笑)。ふだんから思いついた時に歌詞ネタを書き溜めていて、そのなかには意味がわからないものもあるんです。それでググッてみて「あ、これ歌詞になりそうやな」と思うものがけっこうあって歌詞になっていったりもするんですけど、「シュレディンガーの女」というタイトルもその歌詞ネタのなかにあったものなんです。
──シュレディンガーの「猫」、ではなく「女」?
りょうメモの時点からなぜか「シュレディンガーの女」だったんですよね。それをググッたら「シュレディンガーの猫」がヒットして、「これを恋愛に結び付けられるな」と書き始めた歌詞なんです。
──好きな人から恋愛対象として見てもらえず、精神的に弱っている時でないと必要としてもらえない、という部分がとてもリアルで切なくて。
りょうそうですよね。実はこの曲に入っている女の子の声、ここだけの話、僕が大学時代にガチで好きだった女の子なんです(笑)。
ひろ坊それ初めて聞いたわ(笑)。
りょう前作の「ちゅーしたい」みたいに、東京のバンドの女の子に頼むのもアリだったんですけど、この歌詞の心情とリンクするのが僕がその女の子との駆け引きの時の心情だったんです。だからその女の子を名古屋からレコーディングしてた東京に呼び出しました(笑)。で、その女の子との恋を歌ったのが4曲目の「そいえば」なんですよね。この曲に出てくる傘、今も実家にあるんです(笑)。
──たしかに今作は歌詞が濃いなとは思ったんですけど、そこまでとは。
りょう「ヤギさんゆうびん」は童謡を恋愛に見立てて書いたんですけど、けっこうノンフィクションかも。自分のパーソナルな部分を「わかる!」と言ってもらえる感じで書きたいなと思ったんですよね。わたべくんとかは歌詞を読みながら「俺はこの気持ちはわからんけど」と言ってるけど(笑)、みんな歌詞に寄り添って「こういうことだよね?」という音を鳴らしてくれてるんですよね。メンバーの逞しさを感じました。
なおき今回は仮歌が入った状態のデモを聴きながら叩いたので、プレイにすごく気持ちを乗せることができたんですよね。1テイク、2テイクくらいですごくいいものが録れて。だからいちばん楽しいレコーディングになりました。
りょう今まできっちりした音源にしてきたので、ボーカルのエフェクトも要所要所しか使ってないところは正直不安と言えば不安なんです。ただ、きっちりしすぎていない人間味を楽しめるようになってきているところは少しずつあって。だからなおきのドラムも、気持ちのままにまっさらで走り出すのがいちばん生き生きとすると思うんですよね。だから今回は多少のヨレも使おう!って。それがいい方向に表れたとも思ってますね。
──いろいろ考え方が変わってきたんですね。
ひろ坊音を重ねることを減らしたぶん、音が聴こえるようになって。「シュレディンガーの女」はエンジニアさんといろいろ話し合って、「ああ、そういう音の抜き方もあるのか」と思う、自分にはない発想をいろいろ教えてもらいました。本当はサビ頭からストリングス入れたかったけど、出来上がったものを聴くと「こっちでよかったな」と思うし。歌詞に合わせて音色を選んだのは、いちばん大きいかもしれない。
りょう最初はみんな「え?そんなことするの?」と思う瞬間があったけど、でも実際に録ったものを聴くと「これでよかった」と納得したんですよね。
わたべ僕は身体を壊してプリプロに参加できなかったんですけど、不思議なものでプリプロに参加できなくても、今のバンドの状態のせいなのか、全然違和感なく入っていけたんです。
りょうわたべくんが参加できないとき、僕らも「わたべくんこう弾くやん?」と考えながらアレンジを組んだりして。わたべくんもレコーディングでちゃんと対応してくれたし、みんなが作品を作る気持ちを強く持ててたところはすごく大きいですね。
わたべ自己満足かもしれへんけど、そういう不完全なところも含めて、人間ドラマが詰まってて。すごく思い出深いんです。メモリアルな1枚になったんじゃないかなあって。音楽的だし人間的だよね。
たかひろシェアハウスを機にメンバーとの精神的な距離が縮んだところはあって。やっぱり一緒に住むってでかいですね。今作を作る前と作った後では心境も全然違って。ライブに挑むときもその要素は反映されていて、やりやすくなりました。そういうものが前面に出たCDだと思いますね。
りょう前作が「ライブバンドじゃん」って感じなら、今作は「それだけじゃないな」と思ってもらえると思います。今まで聴いてくれている人にも、この路線を「いいね!」と言ってもらえるような状況を目指したいですね。
──となると、いいライブをするのはなおさら必須条件になりますね。東名阪ツアー「The 3 minutes TOUR 2020-#シュレディンガーの女-」と、そのツアーファイナルとなるTSUTAYA O-nestでのワンマンで音楽的で人間的なThe 3 minutesが観られるのではないでしょうか。
りょう東名阪の対バンツアーはとにかくいろんな人にラブコールを送ったんですけど、最終的にどのバンドさんも歌で勝負している方々が多くて、今作を作ったからこその対バンだなと思いますね。今の僕らなら、対バンのお客さんにも刺さるライブや音楽ができるんじゃないかなって。あるあるさん(ライブキッズあるある中の人)のツアーで回った会場に自分たちの企画ライブで帰ってこれるのも意味があるし、そこで自分たちのイベントを作れたらなと思います。
──ある種里帰り的な。
りょうそうですね……僕ら里を作らない主義なんですけど(笑)、そろそろO-nestはちゃんと埋めて、「お世話になりました!」と言えるようにならないと。今回で4回目のO-nestワンマンなので(笑)。
わたべ半年に1回ペースでO-nestでワンマンやらせてもらっとるからね(笑)。
りょう4回目のO-nestワンマンは、ワンマンでないとやれないことを、しっかり具体的にやりたいですね。楽しんでもらえる内容にはなると思います。
わたべ今までのワンマンはお客さんのことを第一に考えてライブをしてたけど、悪い言い方をするとめっちゃ媚びてたとも思うんです(笑)。だから今回のワンマンは、悪い言い方をするとお客さんのことを気にしない――いい言い方をするなら、僕らの好きな音楽をお客さんに知ってもらいたいです。どんな反応が返ってくるかわからないからいつもより不安だけど、まあ上等ですよ!(笑) 変わったんだから「変わっちゃった」って言われるのは当たり前だし。
──不安なのは大きな一歩を踏み出した証だと思います。これまでのO-nestワンマンのなかでも、メモリアルな日になりそうですね。
なおき僕らも変わったし、変わった僕らを観てお客さんがどう思ってくれるのか、どういう反応をしてくれるのか、僕はすごく楽しみですね。
りょうライブは毎回初めましてのつもりで真摯にやりたいし、その精神に今回の「不安」がいいスパイスになってるんです。身が引き締まる思いで、それがいいライブにつながってくる予感がしてますね。不安を味わいながら楽しめたらと思います。
ひろ坊4回目だけど初心に戻ってゼロから始めていきましょう!(笑)
PRESENT
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