女優の長澤まさみ、俳優の浦井健治が出演する劇団☆新感線の新作舞台「ONWARD presents 新感線☆RS『メタルマクベス』disc3 Produced by TBS』」(11月9日~12月31日)の公開稽古が8日、IHIステージアラウンド東京(東京都江東区)で行われた。disc1(7~8月)、disc2(9~10月)と続いた舞台は、いよいよ三部作最後のdisc3の幕開け。稽古前の会見で「シリーズの集大成を見せたい」と語った浦井の言葉通り、稽古直前の楽屋からは出演者の歌声が響くなど、会場は気合いがみなぎっていた。
物語の舞台は、フェンダー国、ギブソン国、ESP軍が火花を散らす2218年と、空前のバンドブームに沸いた1980年代の日本の二部構成。別々の世界に生きていた両者だったが、それぞれが自らの欲を満たそうと“黒い野望”にとりつかれたことから、破滅へと追い込まれていく様子が描かれている。
ESP軍を率いるランダムスターと、メタルバンド「メタルマクベス」のボーカリストを演じる浦井は、持ち前の歌声で熱いシャウトを響かせる。将軍を倒そうと敵が迫る場面では、左右の手に刀を持ち、鬼のような形相で次々に兵士を斬り捨てていく。360度回転する観客席に合わせ、大型バイクにまたがりステージを疾走する場面もあり、目が離せない。
これまで劇団☆新感線に3度出演し、“準劇団員”のお墨付きを受けた浦井に対し、同劇団初挑戦の長澤。大みそかまで60回続く公演では、舞台では2度目となる歌声も披露する。生バンドが演奏するメタルサウンドに合わせて歌う場面では、ステージ前方のアンプに片足を掛け、ロックコンサートのように客をあおる場面も。浦井の向こうを張る魂の叫びで、聴衆を圧倒した。
演技では、ランダムスター夫人、メタルマクベスのマネージャー・ローズ、さらにランダムスターに「あなたは、いずれ王になる」と告げる魔女を熱演。紫色のリボンを付けたポニーテール姿の魔女に扮した際は、美脚をあらわにしたミニスカート姿でヘッドバンギングも見せ、会場を沸かせた。
缶ビールをあおりながら夫をたきつける悪妻を演じた際は、パンツスタイルで登場。役に合わせて変化する衣装も見どころのひとつだ。
シェイクスピアの「マクベス」をもとに、宮藤官九郎が練り上げた脚本は、お笑いの要素もたっぷり。今年話題になった某映画、某県のマスコットキャラクターが登場するなど、思わず噴き出す仕掛けが張り巡らされている。
夫婦役のふたりは、浦井が変顔をすれば、長澤はコミカルな対応をするなどして、応戦。浦井が赤ちゃん言葉ですり寄れば、長澤は膝枕をして甘やかすなど、仲むつまじい姿も見せる。
悪女で鬼嫁のローズが、ランダムスターに「レスポール王(ラサール石井)を殺せ」と悪魔のささやきをした後に、浦井の唇を奪うキスシーンはどよめきも起きた。
60公演という長い公演は初めての経験。なんとか無事に最後まで走り切りたいと、いまはちょっと不安と戦っている感じです。(会場や客席が)アトラクションのような、いままでに行ったことがないような場所になっているので、それを楽しみに来てもらえたら。舞台は見せ場がたくさんあるので、見慣れていない方でも楽しめると思います。冬の楽しみに劇場に足を運んで欲しい。
スタッズがたくさん付いた衣装は重いんですけど、(長澤から)「男だったら、大丈夫だろ。そのくらい耐えろ」と叱られて、(役と同様、普段から)尻に敷かれています。いのうえひでのりさんの演出は、めちゃめちゃ厳しくて、ランダムスター夫人(長澤)とのシーンなんて、1000本ノックみたいでしたが、僕がへこんでいるなというときは、夫人が必ずクッキーをくれたんです。それをもらうと「よし、頑張ろう!」と思えました。disc1、disc2と受け渡されたバトンの集大成を見せたいです。