取材・文/永堀アツオ
東京・豊洲埠頭地区に新しく誕生した劇場<IHIステージアラウンド東京>が3月30日(木)に、ついにオープンした。中央に360°回転する円形の客席(約1300席)が配置され、その周囲を4つのステージと巨大なスクリーンが取り囲むという斬新なシステムを採用した劇場は、発祥の地であるオランダに次ぐ、世界で2番目のオープンで、アジアでは初。そのこけら落とし公演となるのは、劇団☆新感線の代表作で、劇団最高傑作とも称される「髑髏城の七人」。しかも、“花”“鳥”“風”“月”の4シーズン、2017年3月末から2018年まで1年3ヶ月に渡り、キャスト・演出・脚本を変化させながら上演し続けるという前代未聞の企画となっている。
初日の開幕前に行われたプレスコールは、“とある村”で略奪と殺戮を繰り広げる関東髑髏党の鉄機兵と沙霧(清野菜名)の激しい殺陣のシーンからスタート。やがて、センター奥の丘陵から兵庫(青木崇高)を先頭にした関八州荒武者隊が加わり、さらに、主人公である捨之介(小栗旬)が鉄扇を片手にふらりと現れる。真っ平らではなく、整地されていない野原のように立体的な舞台上で繰り広げられるアクションシーンはダイナミックで目が離せない。さらに、戦いが終わり、怪我をした沙羅を兵庫たちが無界の里に連れて行き、捨之介がステージ中央で一人になった瞬間に、ステージを区切っていた左右のスクリーンが開き、スケール感たっぷりのパノマラマティックな光景が広がった。この奥行きの広さもぜひ生で体験してもらいたいところだ。
そして、捨之介が兵庫たちの後を追うように歩き始めると同時にステージが閉じ、客席は左に回転。スクリーンが開くと、色里一と評判の極楽太夫(りょう)が仕切る“無界屋”になり、再びスクリーンが閉じて、客席は右に回転した。スクリーンが開くと、今度は、巨木があり、小さな川も流れる、無界屋の裏手にある広場へと移っていた。スクリーンに投影されている遊郭の建物や荒地のすすきなどの映像もシンクロしているため、スクリーンを見ていると客席が回転していることを忘れるほどで、スクリーン前の花道を走るキャストの動きも効果的だった。さらに客席が右に回転し、スクリーンが開くと “無界の里の外”へと移り、捨之介と無界屋の主人となっている蘭兵衛(山本耕史)、そして、関東髑髏等を率いる天魔王(成河)が勢揃いし、彼らの関係が明らかになったところで約40分のプレスコールは終了した。
深い縁を抱える三人の男たちの生き様と戦いを描いた物語はどんな結末を迎えるのか。侍と殺陣、音楽と光が融合した大活劇に、さらに360度のスクリーンと、動く客席という新たな要素が加わった。アトラクション感覚でも楽しめるやエンターテインメントショウになりそうだが、根幹をなすのは、やはり役者の肉体から発せられる芝居である。捨之介がクライマックスで見せる100人斬りの立ち回りはどんなものになっているか?この新しい大劇場で小栗旬はどんな見得を切るのかが楽しみでならない。
また、初日公演を直前に控えた小栗旬は「とにかく大きすぎて、大変な劇場ですね。なかなか大変な舞台なので、ケガをしないように気をつけたいと思います」とコメント。実際に劇場を体感しての感想を聞かれた山本耕史は「客席が回転することもさることながら、スクリーンの効果で間口が広くなったり、狭くなったり、いろいろな表現ができる。新しい髑髏城を作り上げたいという気持ちが強くなりました」と語り、観客に向けて「“観に来て”くださいと同時に、“感じに来て”いただければ嬉しいです」とメッセージを送った。劇団☆新感線の看板役者で、1990年の初演では捨之介と天魔王の二役を演じ、今回は山奥にこもる刀鍛治の<贋鉄斎(がんてつさい)>としてカンパニーを支える古田新太は、新劇場に関して「広すぎる。おいらたちはセットの外を移動しているので、一周300メートルくらいあるんじゃないか」と戸惑いつつ、「面白い面白くはないは別にして、なんかすげーなここ、と思いますよ」と飄々としながらも興奮気味の感想を述べている。
なお、本公演は6月12日(月)まで上演される。その後、出演者・脚本・演出を変えて、「鳥」が6月27日(火) 〜9月1日(金)、「風」が9月下旬から、「月」が11月下旬からの上演を予定している。
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