JAZZBILLY『JAZZBILLY Rock'a Swing Performance 2025 winter “KUNOICHI リターンズ Christmas Special”』
2025年12月6日(土)渋谷近未来会館
“KUNOICHI リターンズ Christmas Special”というタイトルで12月6日に渋谷近未来会館で行われたJAZZBILLYのライブは、音楽の多彩な楽しさが凝縮された素晴らしいステージとなった。JAZZBILLYは伝説的なロカビリーバンド、MAGICの中心人物だった上澤津孝が2003年に結成したバンドである。ロックンロールとジャズのクロスオーバーによるスウィングビートが大きな魅力となっている。結成当初は17人編成でスタートしたが、その後、多種多様なミュージシャンとのセッションを重ねながら、JAZZBILLYとしての理想型を探求。2025年7月には、今回と同じ編成、同じ会場でライブが行われた。夏のライブからさらに進化したバンドサウンドを披露したのが、今回のクリスマス・スペシャル・ライブである。なお、“KUNOICHI”とは女性のみで構成されたホーン隊を表す言葉だ。メンバーは上澤津孝(Vo)、幡宮航太(Key/Co/AG)、石井洋介(Gt)、奥野翔太(Wood Bass & E.Bass)、田辺貴広(Dr)、鈴木一葉(Key)に加えて、ホーン隊“KUNOICHI”の長谷川素子(Tp)、枡家小雪(Tb)、矢元美沙樹(Sax)という9人編成。
「JAZZBILLYのテーマ」のSEに乗ってメンバーが登場して始まったオープニングナンバーは彼らのテーマ曲とも言うべき「東京ストリートロッカー」だ。もともとこの曲は、ロカビリーバンド・BLACK CATSが1984年に、織田哲郎プロデュースで発表した楽曲である。その40周年を記念し、JAZZBILLY feat. 織田哲郎バージョンとしてリアレンジ、デジタルリリースされ、スウィングビート全開のナンバーとなった。上澤津の伸びやかな歌声が会場内に響き渡り、バンドが躍動感あふれるグルーヴを生み出し、艶やかなホーンがサウンドに彩りを添えていく。それぞれのソロ演奏もフィーチャーしており、演奏によるメンバー紹介的なニュアンスも感じさせる、楽しいナンバーだ。観客もハンドクラップで参加。
続いては、ザ・ピーナッツの昭和の名曲「恋のバカンス」のカバー。JAZZBILLYの1stミニアルバム『CASABLANCA DANDY』収録曲だ。上澤津の憂いを帯びた歌声、GSテイストの漂うバンドサウンド、そしてビビッドなホーンの相性も抜群。さらに沢田研二のカバー「ストリッパー」ではハードボイルドテイスト漂うロカビリーサウンドに乗って、上澤津の色気と男気とが混ざったシャウトが会場内に響き渡った。ブラスなしでの演奏となったのは上澤津のソロアルバム『琉球グラフィティ』収録曲の「二つ目の青春」。このメンバーで演奏することによって、見事にJAZZBILLYの世界になっていた。歌も演奏も温かみがあってエモーショナルだ。
「ようこそ、いらっしゃいました。俺もこの日を待ち望んでワクワクして、3日間で2時間しか眠れませんでした」と語るMCもあった。上澤津が最高の笑顔で歌い、会場内にも楽しい気分が充満した。クリスマス・シーズンにぴったりの、ハッピーかつカラフルなステージを展開。再びブラスが参加して、奥野がウッドベースを弾いて披露したのはMAGICの「ファイナルカウントダウン」だった。上澤津のガッツあふれる歌声と躍動感あふれる演奏が観客の胸を熱くしていく。田辺のワイルドなドラムで始まったのは中森明菜の「TATTOO」のカバー。MAGICが30年ほど前に彼女のバックを務めた際のロカビリーテイスト漂うバージョンでの披露となった。エネルギッシュなバンドの演奏に乗って、マイクスタンドを握りしめた上澤津が挑発的な歌声を響かせ、妖しいギターソロが彩りを添える。後半は全員が一丸となって疾走し、客席からは熱狂的な歓声が上がった。
曲間のMCでは、上澤津がバンドのメンバーを出会いのエピソードなども交えて紹介。バラエティーに富んだ楽曲を自在に演奏していくバンドのポテンシャルの高さも際立っている。ここからの2曲、ブラスは休憩。幡宮がバンジョーを手にしての披露となったのは、MAGICのカントリーナンバー「クロスロード」。旅情の漂う歌とリズミカルな演奏に、体が揺れる。続いてのMAGICのロカビリーナンバー「傷だらけのパラダイス」では、爽快感と開放感あふれる歌と演奏によって、会場内がパラダイスへと化していく。
再びブラスが加わって始まったのは、スカのリズムも交えて軽快にぶっ飛ばしていくロックンロールナンバー「自転車」だ。ブラスもギターも全開。上澤津がシャウトしながらステップを踏んでいる。キレ味抜群の演奏が気持ちいい。全員で風を切っていくようなステージだ。上澤津がステージからいったん去って演奏されたのは「ルパン三世」。メンバーそれぞれのソロをフィーチャーした縦横無尽な演奏が楽しい。
再び上澤津が登場し、ここからの3曲はブラスが参加せず、バンドでの演奏となった。奥野のスウィングするウッドベースに乗って、上澤津の陰影のある歌声が届いてきたのは「Shout to the love」だ。千年前の恋をモチーフにして上澤津が歌詞を書いたという「千年の恋」では、全員が座ってのパフォーマンスとなり、和のテイストを取り入れた演奏のもと、せつない歌声が染みてきた。さらにそのアンサーソングとして歌詞を書いたスローバラードの「黄昏」では、ヒューマンな歌声とブルースフィーリングあふれる演奏によって、体も心も温かくなった。身近な存在のかけがえのなさが描かれたナンバーは、クリスマス・シーズンにぴったりだ。続いて、織田哲郎の名曲「いつまでも変わらぬ愛を」のカバーへ。イントロでの矢元のサックスも情感豊かだ。上澤津が一つ一つの言葉を大切にして、優しい歌声を披露。音楽による聖夜のプレゼントと表現したくなるような歌とパフォーマンスだ。演奏後、上澤津はこんな思いを語った。
「織田哲郎さんの『いつまでも変わらぬ愛を』を内緒でやらせていただきました。いつも織田さんの曲をやる時には、しっかりアレンジして、“これでやらせてください”とお願いするんですが、今日はオリジナルを完コピでやりたかったので、報告なしです。JAZZBILLYからみなさんに愛を伝えたいということで、織田さんの曲をお借りしました」
ムーディーな歌と演奏が魅力的な「セカンドチャンス」は、初期MAGIC時代には軽快な8ビートで発表した楽曲だが、今回は潮風の吹き抜ける海辺のテラスに似合いそうなボサノバ風のアレンジが新鮮だ。そして、「最高潮の夏 ☆ 沖縄ブルー」と、夏の歌が続いた後に、いきなり夏からクリスマスへとワープするようだったのは「君にメリークリスマス」だ。枡家がジングルベルを鳴らし、奥野のウッドベース、田辺のドラムが弾むリズムを生み出していく。上澤津の明るさの背後からせつなさのにじむ歌声に、キーボードの2人、鈴木と幡宮がコーラスしている。ハッピーな気分もそうではない気分もすべて包み込んでいくようなクリスマスナンバーだ。
「Dancin' Dancin' Dancin'」では、会場内にクリスマスのダンス・パーティーのような高揚感が漂った。上澤津がステップを踏みながら、シャウトしている。バンドのメンバーも楽しさ全開で演奏している。本編ラストはJAZZBILLYの1stミニアルバム『CASABLANCA DANDY』収録曲の「コモエスタAKASAKA」。ラテンの哀愁と情熱とが混ざり合った歌と自在にスウィングする演奏によって、会場内に熱気があふれ、観客もタオルを回しながら盛り上がって、本編終了。
「楽しんでいただけましたか? 最高だったな。今のこのメンバーが史上最強だと思っているので、2026年もできればこのメンバーでやりたいです」と上澤津。アンコールでは、1990年代のMAGICの楽曲が3曲続く構成となったが、この9人編成のメンバーで演奏することによって、最新最強のJAZZBILLYの音楽となっていた。アンコール1曲目の「悪夢」は<ROCK'A BEAT>というフレーズのコール&レスポンスでの始まり。エネルギッシュな歌声とソリッドな演奏が観客の胸に炎を灯していく。曲の後半では上澤津がアカペラでシャウトし、観客もシンガロングして熱い一体感が漂った。「さらば青春の光」はただ単に過去を懐かしむ歌ではなく、過去にあった輝きを今に蘇らせていくようなポジティブなエネルギーあふれる歌として、更新されていた。
「最高! 万福招来!」と上澤津。アンコールラストの「Someday/Somewhere」では、再び観客の大きなシンガロングが起こり、会場内は熱くて温かな一体感に包まれた。この曲はMAGICの1995年発表のアルバム『あの夏が聴こえてくる』収録曲だが、もともとは織田哲郎の名曲である。上澤津の思いの詰まった歌声がダイレクトに届いてきた。<きっとSomeday Somewhere 輝きをわけあって><きっとSomeday Somewhere 愛しあえる>といったフレーズが、2025年の年末に、希望の歌として響いてきた。
ハッピーでひたすら楽しいステージ。と同時に、その楽しさの根底からは、今後の活動に向けての決意、未来へのまなざしのようなものも感じ取れた。JAZZBILLYがこれから進んでいく道を示していくような、意欲的なパフォーマンスを展開したからだ。ロカビリー、ロックンロール、カントリー、オールディーズ、ビッグバンド、スカ、ラテン、ブルース、ポップス、歌謡曲などなど、多彩な音楽のエッセンスを融合しながらも、上澤津の歌声がJAZZBILLYの音楽に1本の太い芯を通して、今のリアルな音楽として提示していた。そして次回の2026年7月18日(土)、渋谷近未来会館で開催されるライブも、同じメンバーでさらに進化したJAZZBILLYの音楽を堪能できるだろう。“暑い夏”を吹き飛ばす、爽快で痛快な“熱い夏”の一夜が待っている。












