エンニオ・モリコーネ『オフィシャル・コンサート・セレブレーション』が5日(土)、東京国際フォーラム ホールAで開幕した。
このコンサートはイタリアの映画音楽界の巨匠、エンニオ・モリコーネが書いた数々の映画音楽を映像の上映と共に合唱団とオーケストラが演奏するプログラムだ。2020年に亡くなったモリコーネが、生前から企画していた公演だったが、コロナ禍が世界を直撃し、予定されていたワールド・ツアーは延期。自身で携わった渾身のプログラムを観ることが叶わなかった。指揮を取るのは息子のアンドレア。父の遺志を継いで実現させたのが本コンサートだ。
開演のブザーが鳴りオーケストラのチューニングが終わると、巨大スクリーンにはモリコーネのインタビュー映像が流れる。そしてステージ下手から割れんばかりの拍手に迎えられ、指揮のアンドレア・モリコーネが登場。会場に集まった観衆に向け、深々とお辞儀をしたアンドレアは、この日を長い間待ちかねていたかのように見える。それも無理はない。なにせ、この日のコンサートはワールド・ツアーの初日。ここ日本が世界で最初に公演が行われる場所だからだ。
アンドレアがタクトを降り下ろし、1987年公開の「アンタッチャブル」のテーマ曲「正義の力」からスタート。緊張感溢れる楽曲に合わせ、舞台後方のスクリーンにはケヴィン・コスナー、ショーン・コネリー、アンディ・ガルシア、ロバート・デ・ニーロらの映画の名シーンが上映される。大スクリーン+大音響スタイルは、昭和の時代のロードショー上映を思い出させてくれる。当時を体験した往年の映画ファン世代にとってはたまらない。
コンサートには7つのテーマが設けられ、各テーマ毎に、エンニオ本人や、ジュゼッペ・トルナトーレ、クエンティン・タランティーノなどの映画監督が、楽曲が誕生したエピソードや、楽曲制作の意図を振り返るインタビュー映像が上映された。
"The Life and Legend"コーナーでは、「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ(1984/米伊)」「海の上のピアニスト(1999/伊)」、"Flashback"コーナーでは「ニュー・シネマ・パラダイス(1989/伊仏)」「マレーナ(2001/伊米)」と、それぞれテーマに沿った映画音楽を、映画の名シーンを交えて次々に演奏されていくのだが、なかでも圧巻は"セルジオ・レオーネ監督"のコーナー「The Modernity of the myth in Sergio Leone's cinema」だ。「続・夕陽のガンマン(1967/伊独西米)」「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウェスト(1968/伊米)」といったマカロニ・ウェスタン映画の名曲の数々を、ソプラノ歌手のヴィットリアーナ・デ・アミーチスと総勢45人の合唱団、GLORY CHORUS TOKYOが加わり、儚くかつ壮大に奏でていく。聴衆の誰もが、この芳醇で贅沢な演奏と、クリント・イーストウッドらが繰り広げる迫力のシーンの数々を、まさに手に汗を握りながら聴き入っていた。
コンサートは20分の休憩を挟み約2時間30分に渡って31曲を演奏。全プログラム終了後、会場からはスタンディングオベーションと万雷の拍手が送られ、圧巻のコンサートは幕を閉じた。
エンニオ・モリコーネ『オフィシャル・コンサート・セレブレーション』は、11月6日(日)にも東京国際フォーラム ホールAで昼(12時開演)、夜(16時30分開演)で開催される。当日券は同会場で各回の開場時間より販売される。
PHOTO:Masanori Naruse