藤巻亮太 2ndフルアルバム『日日是好日』のリリースツアーFINALをライブレポート!

ライブレポート | 2016.06.11 18:00

藤巻亮太

2016年5月27日(金) Zepp Tokyo
REPORT:兵庫慎司
PHOTO:古渓一道

『歌旅編』『春祭編』に分けて、弾き語り→3人編成→5人編成で全国を15本回る、セカンド・フルアルバム『日日是好日』のリリース・ツアーのファイナル。
下のセットリストのとおり、『日日是好日』全12曲から、2年以上前のシングルである「ing」を除く11曲をプレイ。ほかは、1枚目のソロアルバム『オオカミ青年』から3曲、『日日是好日』よりもあとにリリースされた配信シングル1曲(「go my way」、5月11日リリース)、そしてレミオロメンの曲を5曲、という構成だった。

少し前から、ソロでレミオロメンの曲をやることに抵抗がなくなったと公言し、実際に歌うようになっていたし、現にこうしてこの日も5曲歌ったわけだが、それがなぜなのか、本人にきかずとも伝わってくるライブだった。

藤巻亮太

まず、ソロなんだからレミオロメンと違う音楽をやらないといけない、違う感じの曲を作らなければいけない、というこだわりがなくなったこと。そのこだわりがなくなってから、『日日是好日』を作ったこと。そしてその結果、ライブでレミオロメンの曲をやっても、今の曲がレミオロメンの曲に勝てない、だからレミオロメンの曲に頼らないといけない、というような見え方、きこえ方、響き方をしなくなったこと。だからこだわりなく、てらいなく、ソロの最新の自分の曲も、レミオロメンの曲も、ソロになった頃の曲も、並列で演奏し、歌えるようになったこと。というわけだ。

藤巻亮太

この日のライブを観ていて、「うわ、今、ハイライトの瞬間だ!」と僕が感じたのは、たとえば4曲目の「回復魔法」だったり、13 曲目の「My Revolution」だったり、16曲目の「日日是好日」だったり、アンコールの「8分前の僕ら」だったりした。で、終わってから、「あ、全部『日日是好日』の曲だ」と気がついた。レミオロメンの「スタンドバイミー」や「南風」を歌ってくれた時も、もちろん盛り上がったが、それはどちらかというと「うれしいオプション」みたいな感じで、感動や興奮の軸は、『日日是好日』の曲たちの方にあったと思う。
あたりまえでしょ、それ。『日日是好日』のリリース・ツアーなんだから。と思われるだろうか。僕は思わない。だって『日日是好日』の曲たちが、あのレミオロメンが長年にわたって生み続けてきた名曲たちと、普通に張り合っているということなんだから。藤巻亮太本人にも、そのような、現在の自身の曲に対する圧倒的な自信や確信があるのではないかと思う。

藤巻亮太

「挑戦……というほどじゃないんですけど、去年から、笑って、心を開くようになりまして。レミオロメンの曲も歌うようになりまして。歌えるのは僕しかいないので、歌っていこうと思います」

と、本人はMCで言っていたが、なぜ笑って心を開けるようになったのかの理由は、そこだと思う。
そして、その彼の自信と確信とオープン・マインドなありかたは、この日集まったオーディエンスに、そのまんま伝播していた。二度目のアンコールは完全に予定外で、拍手が収まらないので急遽藤巻が「ひとりだよん」と言いながら出てきて、アコースティック・ギター1本で「3月9日」を歌ったのだが、これも、その前の「8分前の僕ら」があまりにもよかったので、お客さんみんな帰るに帰れなくなった、というか帰りたくなくなった、だからさらにアンコールを求めた、というふうに、僕には見えた。

藤巻亮太

ささやかな、幸せな光景を歌っても、ストレートな愛情を歌っても、ポジティヴなメッセージを放っても、歌にこめる熱量が上がれば上がるほど、その歌がはらむせつなさもどんどん温度を増していく、というところが、藤巻亮太というシンガーソングライターにはあるが、「8分前の僕ら」はもっとも新しい、その理想的な例だ。

「不思議なもんさ 晴れ渡った気持ちの分だけ 悲しみってやつは胸に染みるんだな」

「言葉に出来ないから泣くんだろう 訳もなく楽しくて笑うんだね」

「ねえ 相変わらずな僕らだけど 時計の針が一秒進んで 永遠から一秒遠ざかっても 目の前のこの時を 君と一緒に生きていたい」

歌詞のどこの部分を聴いても、どこの部分を味わっても、身もフタもなくストレートだと思う。で、身もフタもなく、「いい歌だなあ」と思う。藤巻自身も、今この曲たちをたずさえて、こうしてライブでオーディエンスと向き合えることを、本当に喜んでいた。

今日でこのツアーが終わって、明日からまたスタジオにひとりで通って曲を作る日日が始まる。でもめげないよ、今日のこの景色を目に焼きつけて──というようなことを、後半のMCで言っていた。デビューして14年、ライブハウスから大会場まで何度も全国ツアーを行ってきたベテランの言うこととは思えないが、でも本当に、実感がこもっていた。で、素直に「そうなんだろうなあ」と思った。

「最悪と口に出しかけて 喉元にそいつをとどめた そのナイフを二度も心に突き立てる必要はない」で始まり、「山火事になるほど熱い 孤独が夜を音もなく 包んでしまったけど 僕はまだここにいる」や「夢が終わったってまた歩いていくだろう」を経て、「今日はいい日だな」で終わる、ニューアルバムのタイトル・チューン「日日是好日」が、とても好きだ。この日のライブでは、後半でこの曲をやって、次の「春祭」でメンバーみんなでハッピを着て、楽しく盛り上がって本編が終わったのだが、「日日是好日」で終わって「春祭」はアンコールに回してもよかったんじゃないか?と思った。いや、本編をしっとりシメるよりパーッと楽しくシメるべきだという判断をしたんだろうなと思うし、それは正しいとわかっているが、でもついそんなことを思ってしまうくらい、この日の「日日是好日」はすばらしかった。

藤巻亮太

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