
UNICORN ABEDON60祭『アベドンクエスト60~勇者ヨシフィコ そして還暦へ~』
2026年7月29日(水)30日(木)パシフィコ横浜 国立大ホール
※取材は29日に実施
ABEDONの60歳の誕生日である7月30日(木)と、その前日の29日の2デイズ。川西幸一(2019年10月20日、兵庫・あましんアルカイックホール)→手島いさむ(2023年8月27・28日、広島上野学園ホール)→奥田民生(2025年5月11・12日、東京ガーデンシアター)→EBI(2025年10月4・5日、横浜BUNTAI)と続いてきた、メンバーの還暦シリーズのファイナルとなる2日間である。
昨年の奥田民生(以下OT)→EBIは、50歳の時の企画ライブと比較すると、通常のライブに近い、(ユニコーンにしては)演出等が抑えめなステージだったが、今回のABEDONに関しては、仕掛けも演出もふんだんに盛り込まれた、華やかで賑やかな2時間半として構成された。
基本的に、ユニコーンのこの還暦シリーズは、主役である当人が、セットリストや演出を考えるというルールである(他のメンバー4人が主役にむちゃぶりしまくる、という、50歳の時のシリーズとは逆)。
なので、今回のABEDONも、ライブのエンドロールでの肩書は「Produce/Creative Director」となっていた。他のメンバーが口を出すのは「よっぽどの時だけ」だそうで、たとえば前回=EBIの時で言うと、彼が考えてきたアンコールは、ひとりきりでベース弾き語りで歌う「水の戯れ〜ランチャのテーマ〜」1曲のみ、それでライブが終わる、というものだったので、メンバーたちが「それはちょっといくらなんでも」と進言して、「大航海2025」が追加されたという。
今回は、自分たちはシンプルに「60祭」を乗り切ったOTやEBIに、「千秋楽はABEDONだから」「集大成はABEDONが見せるから」などと振られたせいで、彼がそのような役回りを背負うことになった、という側面も大きかったようである。
まず、今回のライブは、『ドラクエ』を元ネタにした、福田雄一監督の深夜ドラマ『勇者ヨシヒコ』シリーズと、ABEDONの名前「ヨシハル」と、会場のパシフィコ横浜を合わせて、『勇者ヨシフィコ』というタイトルになったのだと思われる。そういえば、ユニコーン史上初となる本格アクションに挑戦した新曲「クレナイノハ」のMVは福田雄一が監督、その中で奥田民生が勇者ヨシヒコに扮している。
というわけで、オープニング時を皮切りに、ライブの節目節目でゲームの世界が映像で映し出され、立ちはだかる敵と戦いながら旅をするストーリーが描かれていく。
映像に続いてSEが響き、ステージ後方上部の二階部分にスポットが当たると、ヨシフィコことABEDONが、右腕を高く掲げて立っている──という登場からの「WAO!」(詞曲:ABEDON)、そして「Boys & Girls」(詞曲:ABEDON)で始まった、この日のライブの選曲・曲順は、先にも書いたとおりABEDONのセレクトで、自分が書いて歌う曲か、歌わないが自分が書いた曲が軸になるように組まれている。
4曲目の「忍者ロック」(詞曲:ABEDON)は、ABEDONひとりで三味線を弾きながら講談風に歌う、というスペシャル・バージョンで、オーディエンスを驚かせた。
EBIの歌う「米米米」、川西幸一の歌う「ロック幸せ」と、テッシー(手島いさむ)の歌う「オッサンマーチ」の間にはさまれた「PTA 〜光のネットワーク〜 」(詞:奥田民生・ABEDON/曲:奥田民生・ABEDON・小西康陽)は、バック・トラックを用いて、生演奏はテッシーのギターのみ、ABEDONとOTは歌で、川西とEBIはラップ、という編成でのパフォーマンス。
この曲は、三度目の映像コーナーが終わったところだったが、そこでABEDONは、ステージ上に立てられた棺桶から登場した。「オッサンマーチ」の次の「オレンジジュース」では、曲に合わせてステージの数ヵ所から火炎が立ち昇る。

ハンドマイクのOTが、最後に「そうねパシフィコにでも」と歌ってオーディエンスを喜ばせた「開店休業」(詞曲:ABEDON)、ユニコーン再始動一発目のアルバム『シャンブル』のラスト・チューンである「HELLO」(詞曲:ABEDON)を経て、次の映像では、ラスボス=大魔犬ドンとの戦いにABEDONたちが勝利する──。
というくだりを経て、金原千恵子ストリングスの6人が演奏陣に加わった。ひとりだけ青だった衣装が(おそらくラスボスを倒したので)赤に変わったABEDONは、その6人を指揮する役回りである。
という11人編成で、『シャンブル』の1曲目である「ひまわり」(詞曲:ABEDON)と、本日リリースされたばかりの「クレナイノハ」(詞曲:ABEDON)を聴かせる。そして、OTがギターを置き、ハンドマイクになると、客席は「ああっ、やっぱり!」と色めき立った。
そうだ。「大迷惑」だ。オリジナル音源はオーケストラ・アレンジだが、そのままライブで再現されることは、ほぼないこの曲を、生のストリングス・チームと共に演奏する、ということである。しかも金原千恵子はオリジナル音源でも演奏しているのだ。彼女たちを指揮するABEDONも、ステージを自在に動き回りながら歌うOTも、感慨深いものがあったのではないか。
この編成でもう1曲披露された「Feel So Moon」(作詞OT/作曲ABEDON)でも、6本のストリングスが、荘厳にかつドラマチックに響いた。2012年に、作者たっての希望でアニメ版の主題歌としてこの曲を提供した、小山宙哉の『宇宙兄弟』の連載が遂に完結、7月22日に最終巻(46巻)が発売されたばかり、というタイミングなので、この曲を贈ったのかもしれない。
パシフィコ横浜の客席いっぱいにフラッグが振られた「SAMURAI 5」(詞曲:ABEDON)が、いろんな意味における、この日のピークだった。中盤のブレイクでの、「俺が海岸線を走ってる時に、あいつが言ったんだ」(ABEDON)と、「なんて言った?」(オーディエンス)の掛け合いが続くうちに、話が脱線してグダグダになっていく、という楽しい展開の途中で、ABEDON、「こういう時間だ。今日はね、放送がないとね、だいぶね、適当にやれるんだ」と漏らす。客席、大笑い。「そうだ、今日の方がきっとおもしろいと思う」と、しなくていいダメ押しをするOTであった(翌日はBS10で生中継あり)。
そして、お客にさまざまな「ヘイ!」を叫ばせる、OTに西城秀樹のモノマネを強いる、などの試みを延々と続けた末に、再びABEDONが歌い出すタイミングで、この曲のこのタイミングでおなじみ=銀テープのキャノン砲が、華々しく客席に発射された。
曲はカラオケで、メンバー全員マイクを持って前に出て、ABEDONはボイスチェンジャー&ラメのジャケット&肩に子犬「ドンちゃん」、で歌った「100年ぶる〜す」(詞曲:ABEDON)で、楽しく本編が終了。
そして、アンコールでは、ABEDON、全身赤の紋付袴姿になり、片手に巨大赤扇子を持ち、客席1階最後方から登場。「し~あわせっ!し~あわせっ!」コールを続けながらフロアを練り歩き、民にしあわせ(赤い花)を分け与えていく──というパフォーマンスを、4分近くにわたってくり広げた末、ステージに到達する。
「懐かしい曲を聴いてください!」と突入した「人生は上々だ」(詞:川西幸一、ABEDON/曲:奥田民生)は、曲の後半の主人公の晩年を描くシーンに「赤いちゃんちゃんこ 似合うでしょ」という一節がある。リアルにその年齢になっても、この曲を歌っているってすごい、と、聴きながらついしみじみした。だからアンコールにこの曲を持って来たのかもしれない。と思ったが、翌日のMCでABEDONは、「昨日歌っていてそのことに気がついた」と言っていたそうなので、違ったようです。
なお、この曲の中盤には、「CSA」(詞曲:ABEDON)を、だんだん速くしながら何度も演奏する、というパフォーマンスが織り込まれた。そのたびにOT、「衰えてないですな!」と称賛する。なお「CSA」は、2009年の再始動以降、タイトルを現在の社名である「SMA」に直し、住所と電話番号も現在のそれに変えられたこともあったが、この日はオリジナルどおり歌われた。
「ユニコーン全員、還暦になりました!これからもよろしくね!」とABEDONが挨拶すると、「ハッピーバースデー」が流れて、みんな合唱、ケーキが運び込まれる。ABEDONがロウソクの火を吹き消して拍手を浴び、一口味見し、ケーキのワゴンをソデに押していく川西幸一に、OTが「もうすぐ70になる男が、率先して片付けている」と声をかける。ABEDONにも「いろんな意味で、衰えてないですな!」と声をかける。

そして、ラストの曲は「アルカセ」(詞:奥田民生/曲:ABEDON)。「僕たちはまだ 歌い続ける 終わる事ない 旅の日」とOTが歌うこの曲は、ABEDONの60祭だけでなく、2019年から2026年まで続いた5人の還暦シリーズすべてを総括しているかのようにも……もっと言うと、ここまでのユニコーンの歩みのすべてを象徴しているかのようにも、響いた。
なお、翌日の終演のタイミングで、3年ぶりのニュー・アルバム『あたえてこ』のリリースと、そのツアーの開催が発表になった。アルバムが出るのは10月21日、ツアーは12月5日の厚木から3月27・28日広島まで、全国15ヵ所・19公演。
SET LIST
01. WAO!
02. Boys & Girls
03. すばらしい日々
04. 忍者ロック
05. 米米米
06. ロック幸せ
07. PTA ~ 光のネットワーク ~
08. オッサンマーチ
09. オレンジジュース
10. ZERO
11. 開店休業
12. HELLO
13. ひまわり
14. クレナイノハ
15. 大迷惑
16. Feel So Moon
17. SAMURAI 5
18. 100年ぶる~す
ENCORE
19. 人生は上々だ ~ CSA ~ 人生は上々だ
20. アルカセ



















