
VALIS 7th ONE-MAN LIVE「彷徨フォーエバー」
2025年12月21日(日) Zepp Shinjuku (TOKYO)
ステージに立てられた6本のトラスが、白、赤、紫、黄、緑、青の照明で色づく。2024年に卒業したNINAも含めた、6人分のメンバーカラーである。オープニングSEに乗せてCHINO、MYU、NEFFY、RARA、VITTEが生身の姿=“オリジン”で登場すると、第1幕の始まりは「純情エトワール」。ドラマチックな展開の楽曲をより豊かなものにするべく、5人は息の合った優雅なフォーメーションダンスとエモーショナルなボーカルで音に向き合う。Zepp Shinjuku名物である360度を囲んだLEDモニターでの映像演出も、彼女たちのパフォーマンスを引き立てた。
「熱愛フローズン」ではモニターに3Dモデルである“アバター”の姿が映し出され、画面内外でパフォーマンスをユニゾンさせる。アウトロがテンポアップしてそのまま「超常現象ダンスダンス」につなぐと、フロアもユーモラスでキュートなダンスや色鮮やかなレーザーに触発され、存分にコールを飛ばした。
3曲披露したメンバーは観客とコミュニケーションを取り、満員の会場に笑顔を見せる。リーダーのCHINOが「今夜のライブは、わたしたちがこれまで歩んできたなかでお届けしてきたたくさんの楽曲を披露したいと思っています」と高らかに宣言すると、彼女以外のメンバーがステージを去り、ソロのメドレーコーナーへと入る。各メンバーがソロ曲やメインボーカル曲を3曲ずつ歌唱し、つなぎでは「激情インプロゼーション」などの合唱曲のインストに乗せて前後のメンバーが2名でダンスを披露する。それと並行して衣装チェンジも取り入れるという、グラデーションを活かしたリレー方式で展開された。VALIS歌劇団での“マチネ(昼公演)”から“ソワレ(夜公演)”へじょじょに変化していく様をトリッキーに見せるというコンセプトの真価が発揮されたセクションと言っていいだろう。
1番手のCHINOは「I.C.E」「DRESS.」「Memoria」と静と動をテーマに、楽曲の物語性を表現する。マイクスタンドを用いたパフォーマンスも行い、低音ボーカルも活かしてダークかつファンタジックな世界を作った。NEFFYは「猫好的トリックスター」「猫好的ショータイム」「Eyes On Me」と彼女の無邪気さとアダルティな魅力の両方を届ける。観客にも溌溂と呼び掛け、会場を沸かした。RARAは「禁断果実」「月輪迷宮」「JUICE」と甘く毒々しい、不気味な世界を追求する。緩急の効いたボーカルとダンスは、こちらを捕獲してしまうような迫力に溢れていた。
VITTEは「ピカピカキャンディラブイズム」「狂愛レゾナンス」「βlack Swan」と、ファンが見守ってきた幼い頃の自分から立派なプリンセスに成長するまでの過程を描く。ゆえに3曲で異なる表情を見せ、多彩な感情表現で会場を翻弄した。MYUは「渇愛論」「変異体」「Mute Beat」と情熱をテーマに、熱い気持ちや愛情を届けることに力を注ぐ。グラマラスなボーカルが歌詞世界を引き立て、カラフルな5人のパレードを堂々と締めくくった。
その後は再び5人がステージに揃い「道化師ブランケット」と、2024年3月に卒業したNINAがセンターを務めた楽曲「わたしトラベラー」を届け、きめ細やかな表現がさらに観客を曲の世界へと没入させる。そして「黄昏シミュレイド」でディープな空気を作り出し、レーザーが乱発される空間で可憐な5人のボーカルが響き渡るというカオティックなコントラストは、多くの観客の心をかき回した。
各メンバーにフォーカスした転換映像が流れると、VALISの歩んできた物語を総括する第2幕へ。5人はオリジンで初披露となる“特殊舞踏形態Campanula(カンパニュラ)”を身に纏い、「乙女的サイコパシー」「一陽レガシー」「無窮プラトニック」の3曲を披露、可愛らしさや凛々しさに加えて艶のある、まさにVALISの旨味と言うべきパフォーマンスを繰り広げる。クラブDJのようにしなやかに曲間をつなぐこの日ならではのミックスも、会場を心地よく揺らした。
そして“VALISクロニクルスペシャルメドレーとでは、VALIS結成以前のグループ、裏世界、VALIS飯店、VALIS歌劇団、それぞれの時代を彩ってきた11曲を、メンバーが入れ替わり立ち代わりのノンストップメドレーで披露。NEFFYとVITTEによる「天命系メルト」を皮切りに、CHINOとMYUによる「閃光フラグメント」、MYUとRARAによる「鈍色リグレット」など、デュエットならではの個々の個性とふたりの相性が活きたステージをたたみかける。5人全員がVALIS、メンバー、楽曲の世界、自分自身と真摯に向き合ってきたからこそ、これだけ創意工夫に富んだなめらかなメドレーが実現できるのだろう。
その後もCHINOとVITTEによる「幻想アンヴェール」や、「物換星移カタルシス」を歌い終えたCHINOとRARAが冒頭のダンスに参加したMYUとNEFFYによる「誘惑ノンフィクション」など彼女たちの物語が万華鏡のごとくきらびやかに展開し、メンバー全員が集合すると初のオリジナル曲「残響ヴァンデラー」を披露する。観客も熱いコールを飛ばし、会場にはエネルギッシュな一体感が生まれた。
RARAが「ありったけの愛と感謝を余さずに伝えます。覚悟はよろしくて!?」と呼びかけると、宇宙船の発射のカウントダウンのイントロでお馴染みの「永遠メランコリー」へ。《さよならなんて絶対言わないよ》や《始まりも終わりもないこの宇宙 僕に届いてるさ その波動》といった歌詞、どこかを漂うような宇宙を彷彿とさせるサウンドデザインが今の彼女たちにフィットしており、より楽曲の説得力が増す。メンバー5人が協力して作詞したラストオリジナルソング「彷徨フォーエバー」ではピュアなステージで観客を包み込み、楽曲の終盤ではカラーボールを投げ込んで感謝の思いをかたちにした。
フロアから「ありがとう!」の声が次々と湧き起こるなか、ミラーボールの光に照らされて「再構成ウィーバー」を歌い出すと、観客もコールとシンガロングを送る。5人も希望に満ちた歌声で楽曲を染め上げ、ラスサビで噴射された銀テープもハッピーでポジティブなムードを増幅させた。ラストに5人が手をつないで高く掲げる姿もとてもシンボリックだ。
MYUが物悲しさを紛らわすように「ライブ楽しいー!」と告げるものの、感極まったRARAは涙が止まらなくなり、そんな彼女を慰めようと優しくハグしたCHINOももらい泣きをする。全員言葉にならない思いを抱えている様子で、深々と頭を下げて感謝を告げるとステージ袖へと下がっていった。
エンドロールの後、暗転したステージに再びメンバーの姿が見える。5人が一斉に見慣れたポージングをすると観客が大きな歓声を上げ、「革命バーチャルリアリティ」へとなだれ込んだ。モニターにはMVだけでなく過去のライブ映像も流れる。グループのアティテュードが詰まった楽曲を堂々とパフォーマンスする彼女たちの姿はとても眩しく、グループの進化を感じさせた。
最後にメンバーは自分の思いを言葉にする。MYUはメンバーと出会って8年経ったことを振り返り「最高のメンバーの一員になれたことを誇りに思っているし、幸せに思っている」と胸を張ると、ファンへ丁寧に感謝を伝えながら「VALISはわたしの青春です」と涙ながらに語った。NEFFYはメンバーといろんな気持ちを共有してきたこと、一緒にいるのが当たり前で前日まで念入りにリハを重ねてきたことを明かし、「VALISに全身全霊で向き合っていることが一人ひとりから伝わってくるから感動するし、あたたかい気持ちになるし、ほんとにいい場所だなとつくづく思います」と噛み締め、今後の活動を示唆して再会を誓う。RARAはコロナ禍でのデビューは夢が溢れると同時に不安でもあったと述懐し、「《この場所でしか生きられない》って歌詞に見合う自分たちになれたことをすごく誇りに思うし、VALISになってからの約5年半がわたしの人生を変えてくれました」「これからもVALISの楽曲や歩んできた道が愛され続けるといいなと思っています。未来のためにもRARAは歩んでいかなければ」と意欲を示した。

この日をもって活動休止に入る実感がないと話すVITTEは、「VALISになってからの5年半で、こういうことがやりたいけど自分には無理だと思ってきたことが全部覆って。みんながどんなVITTEでも愛してくれることに気づいて、なんでもできるスーパー元気100倍びっちゃんまんになっちゃって」と笑顔を見せ、活動するなかで触れた様々な優しさへの喜びや「絶対にみんなとの絆はなくならない」「これからもお互いBIG LOVE同士でいてくれたらうれしい」と等身大の気持ちを言葉にする。リーダーのCHINOは涙で声を震わせながら「活動休止の発表でたくさん悲しい思いや寂しい思いをさせてしまったと思うけど、わたしは最後だと思ってない」「関わってくれる皆さんのことがほんとに大切で。美味しいご飯を食べたとき、うれしいことがあったとき、楽しいことをしたとき、綺麗なものを見たときにそれを一番に伝えたいのはヴァンデラー(※ファンの総称)で。それは一生変わらないから、これからもずっと一緒にいてくれますか?」と呼びかけた。
最後5人で声を合わせて感謝を伝えると、いつものように別れのポーズを取って、手を振りながらステージを後にした。最後に流れたムービーにはアバター姿のメンバーが歴史を振り返りながら原点に立ち戻り、新しい世界へと歩み出す様子が描かれる。最後に「私たちは彷徨い続ける《ヴァンデラー》、永遠に。」という文言と、身体を寄せ合って眠りに就く5人の姿が映し出され、フロアからはあらためてたくさんの「ありがとう」の声が上がった。
終演後には2025年5月に開催された「喝采カーテンコール」と今回の「彷徨フォーエバー」のライブBlu-rayが受注販売されること、2026年1月1日に未発表曲も収録した2nd EP『彷徨フォーエバー』がデジタルリリースされることなどが発表された。VALISという変わりゆく物語のなかで様々な成長を遂げた5人の現在の姿は、とても誠実で清らかだった。
SET LIST
01.純情エトワール
02.熱愛フローズン
03.超常現象ダンスダンス
04.I.C.E
05.DRESS.
06.Memoria
07.猫好的トリックスター
08.猫好的ショータイム
09.Eyes On Me
10.禁断果実
11.月輪迷宮
12.JUICE
13.ピカピカキャンディラブイズム
14.狂愛レゾナンス
15.βlack Swan
16.渇愛論
17.変異体
18.Mute Beat
19.道化師ブランケット
20.わたしトラベラー
21.黄昏シミュレイド
22.乙女的サイコパシー
23.一陽レガシー
24.無窮プラトニック
25.天命系メルト
26.閃光フラグメント
27.鈍色リグレット
28.幻想アンヴェール
29.境界線マクガフィン
30.灼熱モーメント
31.物換星移カタルシス
32.誘惑ノンフィクション
33.廻転コースター
34.再見ロマネスク
35.残響ヴァンデラー
36.永遠メランコリー
37.彷徨フォーエバー
38.再構成ウィーバー
39.革命バーチャルリアリティ















