deadman、ソールドアウトの大手町三井ホールで大充実の25周年アニバーサリー・イヤーを締めくくる

ライブレポート | 2025.12.25 17:00

deadman 25th anniversary TOUR 2025
「to be and not to be final -被覆する造形は人、腫れる風船の奇病-」
2025年12月21日(日)大手町三井ホール

2006年に活動休止を宣言した後、長い空白期間を経て2019年に復活を果たし、独自の魅力を備えた存在として高い評価を得ているdeadman。今年(2025年)結成25周年を迎えた彼らは2月に行った<deadman official fan club FUZ 会員限定公演「Let's Go!25!!」>を皮切りに、3月から5月にかけて<deadman TOUR 2025「to be and not to be-act 1」>を実施。さらに、7月21日に最新EP『鱗翅目はシアンブルー』をリリースすると共に<deadman TOUR 2025【to be and not to be -cyan blue-】>をスタートさせるなど、意欲的な活動を行ってきた。このことからは眞呼(Vo)、aie(Gt)両名のdeadmanに対するモチベーションがより高まっていることがうかがえるし、deadmanが多数のリスナーから篤い支持を得ていることがわかる。

そんな充実したアニバーサリー・イヤーの締め括りとして、2025年12月21日に<deadman 25th anniversary TOUR 2025「to be and not to be final -被覆する造形は人、腫れる風船の奇病-」>と銘打たれたライブが、大手町三井ホール(東京)で開催された。同公演は25周年のグランド・ファイナルということに加えてdeadman史上初のホール・ライブであり、さらに新曲1曲を収録したCDがチケット購入者全員に配布されるということで、瞬く間にソールドアウトとなった。そして、deadmanは大手町三井ホールで、期待を裏切ることのない上質なライブを披露してみせた。

場内の灯りが消えてオープニングSEの「to be and not to be」が流れ、ステージに楽器陣が姿を現して、客席から歓声と熱い拍手が湧き起こる。「to be and not to be」が生演奏に切り替わった後、眞呼が登場して場内が騒然となる中、「in the cabinet」からライブは始まった。眞呼とaieに加えてサポートを務めるkazu(Ba)と晁直(Dr)もブラックの衣装を纏ったクールなヴィジュアルや“尖り”を感じさせる力強いサウンド、メンバーが織り成す華やかなステージングなどが折り重なって生まれるパワーは絶大で、場内は一気にdeadmanの世界へと化した。

「in the cabinet」の勢いを保ったまま、「dollhouse」や「rabid dog」「ミツバチ」などをプレイ。deadmanならではの退廃的な雰囲気は非常に魅力的だし、ハード・チューンでいながら外に向かってハジけるのではなく、内側に向かっていくような感覚も実にいい。“痛み”や“歪み”“壊れていく様”などを感じさせる彼らの楽曲は暗い色彩に彩られているが決して陰鬱ではなく、強く響くものになっていることが印象的だ。

その後は、グランジが香る「溺れる魚」や“はみ出し感”を纏った「黒い耳鳴り」、陰りを帯びた歌中と光を感じさせるサビのコントラストを活かした「鱗翅目はシアンブルー」などが続けて演奏された。MCや煽りなどを一切挟むことなく、パチッ・パチッと世界が変わっていく流れは絶妙で、ライブが進むに連れてより深いところへ誘われるような感覚が心地いい。そして、それを実現できるのは楽曲のよさに加えて、秀でた演奏力によるところが大きいことは言うまでもない。パワフルかつタイトなドラムとファットにウネるベースが重なり合うことで生まれる厚みやスケールの大きさは圧倒的で、サウンドの土台が強固だからこそ眞呼のボーカルはより純度の高い状態で心に響いてくるし、aieのフリーキィーなギターも一層映える。“正式メンバー+サポート”という意識ではなく、メンバー全員が一体になってdeadmanの世界を形づくることは、彼らの大きな強みといえる。

ライブ中盤では流麗なメロディーとノイジーなギターを融合させた「宿主」やメロディアスな「additional cause for sorrow」、悲痛なサビ・パートを配した「静かなくちづけ」などが届けられた。こういった抒情的な楽曲を聴くと、deadmanが音楽の細部のニュアンスまで強いこだわりを持っていることが伝わってくる。

さらに、deadmanの音楽は独創的であると同時に、時代を超えて輝きを放つ普遍性を備えていることもあらためて感じた。それは、彼らがその時その時のトレンドを追ったりするのではなく、自分達だけの音楽を追求し、丁寧に磨きをかけていることの証といえる。その結果、リスナーにとってdeadmanの楽曲は時の流れに合わせて流れていってしまうことなく、長くそれぞれの人生と共にあるものになっていることは想像に難くない。「静かなくちづけ」が終わった後、客席から熱い拍手が湧き起こったことからも、それを感じ取ることができた。

その後はキャッチーな「the dead come walking」を経て、「零」や「through the looking glass」「受刑者の日記」といったパワフルなナンバーを続けてプレイ。ここまでに溜め込んだエネルギーを一気に放出するような展開は爽快感に溢れていて、オーディエンスも激しいリアクションを見せる。このことからはdeadmanはライブ前半で見せた“内向的な荒々しさ”と外に向かって吐き出すハードネスの両方を体現できることがわかる。この辺りの表現の巧みさも、彼らの大きな注目ポイントといえる。

ヒステリックかつアッパーな「quo vadis」やアグレッシブな「re make」などでさらに場内のボルテージを引き上げた後、ステージが完全な暗転状態になり、漆黒の中に眞呼の姿がおぼろに浮かび上がるというシチュエーションで「蟻塚」が届けられた。このアプローチには、心の底から驚かされた。仕事柄もう長年に亘って様々なライブを体感してきているが、こういう情景は見たことがないし、真っ暗闇の中で演奏できる楽器陣は「凄い!」の一言に尽きる。特異な手法が生み出す“闇力”は圧倒的で、全てのオーディエンスが深く惹き込まれていることがはっきりと伝わってきた。

「蟻塚」で強い衝撃を与えた後、ステージに粉雪が舞う演出と共に本編の締め括りとしてダークな「dawn of the end」をプレイ。激しくいきあげてライブを終わらせるのではなく、再び闇落ちしてしまうという流れは本当に素晴らしくて、強い感銘を受けずにいられなかった。

アンコールはaieの「deadman25周年ツアー・ファイナルでした。来てくれて、ありがとうございます。25年やって、よかったなと思います」という言葉からスタート。続けて、「えーっとですね、夏のツアーで……渋谷ですね。渋谷で、そろそろ中年太りが激しい我々は怪しいんじゃないかということで、僕のウエストを測ったんです。渋谷、7月21日、75センチでした。あれからツアー中に6パッドを貼りながらリハーサルをして、「なんかノイズ乗っていますけど」と怒られながらダイエットしてきました(笑)。

ただし、酒もやめていなければ、ラーメンも食っていますから。6パッドだけで痩せれるのかどうかという人体実験ですので。(眞呼がウエストを測る)結果、発表! 7月21日、75センチありました。そして今日、12月21日、77センチ! 大失敗! 来年はもうちょっと引き締めて、腹を見せられるようにします(笑)」(aie)
そんな流れに、客席からは爆笑が湧き起こった。シリアスなライブの唯一のMCがこのくだりというのは心憎いし、こういったギャップもdeadmanの魅力といえる。その後は、華やかに疾走する「701126」と明るい「聖者の行進」「雨降りの悪い夢」(W Encore)が演奏された。暗さやエモさ、激しさなどを表現した後、光に満ちた情景で締め括るという構成も実に見事。オーディエンスはいい雰囲気の盛り上がりを見せ、大手町三井ホールを爽やかな空気に染めてdeadmanのライブは幕を降ろした。

ストーリー性を感じさせるライブということを越えて、人の多面性を鋭く表現するdeadmanのライブは唯一無二の魅力を湛えている。精力的にライブを行った25周年を通してdeadmanの魅力をあらためて感じた人は多かっただろうし、新たに彼らの虜になったリスナーも多いに違いない。今後のdeadmanも本当に楽しみだ。

SET LIST

01. to be and not to be
02. in the cabinet
03. dollhouse
04. rabid dog
05. ミツバチ
06. blood
07. 溺れる魚
08. 黒い耳鳴り
09. 鱗翅目はシアンブルー
11. 宿主
12. additional cause for sorrow
13. 静かなくちづけ
14. the dead come walking
15. 零
16. through the looking glass
17. 受刑者の日記
18. lunch box
19. quo vadis
20. re make
21. 蟻塚
22. dawn of the dead

ENCORE
01. 701126
02. 聖者の行進

W ENCORE
01. 雨降りの悪い夢??

公演情報

DISK GARAGE公演

Gt.aie出演!「第二回 昭和の残党大新年会 ~爆笑トークと時々Vの名曲~」

2026/1/22(木)渋谷PLEASURE PLEASURE[東京]
2026/1/24(土)名古屋THE BOTTOM LINE[愛知]
2026/1/25(日)YES THEATER[大阪]
※全箇所2公演開催

出演者 : 逹瑯(MUCC)、田澤孝介(Waive)、ガラ(メリー)、玲央(lynch./kein)、aie(deadman/kein/gibkiy gibkiy gibkiy)、seek(Psycho le Cému)

  • 取材・文

    村上孝之

    • ツイッター
  • 撮影

    マツモトユウ

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