ラックライフ QUATTRO TOUR 2024
2024年11月18日(月)渋谷CLUB QUATTRO
ステージに現れたPON(Vo/Gt)、ikoma(Gt/Cho)、たく(Ba)は秋の装いに身を包み、LOVE大石(Dr)はいつも通り首元が狭めのタンクトップをめかし込む。あらためて異なるキャラクターの4人が集まったバンドであること、そんな4人がメンバーチェンジをせずに前身バンドから活動を続けている奇跡を噛み締めていると、「ファンファーレ」でこの日の幕が上がった。
観客は高らかなシンガロングでこの日を迎えた喜びをあらわにし、「初めの一歩」ではそれに加えてコールやクラップでバンドの演奏に華を添える。今まで観たラックライフのライブのなかで最もフロアに活気が溢れていたように感じたのは、渋谷CLUB QUATTROのサイズ感や、ラックライフにとって久しぶりのツアーであることも影響しているのだろうか。観客からの惜しみない愛情のエネルギーを受けたメンバーはさらに白熱し、「サニーデイ」はその名の通り晴れ渡る空のようにすがすがしい音を鳴らした。
「あなたが会いに来てくれた、あなたがそこに立ってくれていることがすべてのツアーです」とPONがまっすぐ伝えると、繊細さとパワーを併せ持つ「Naru」、ドラマチックな展開を硬派に描く「ブレイバー」、バンドのロマンとピュアリティが詰まった「MUSIC STAR」、歌謡曲風のメロディがスリリングな「シンボル」と曲ごとに異なる表情を見せる。PONによる熱く真摯なMCの中に笑える要素が混じってくるのも、そこにikomaが細やかにツッコミを入れて大石とたくがそれを見守る様子も彼らの自然体だ。PONが必ずライブで言う「しょうもないこともたくさん言いますけど、あなたの心に刺さって抜けない歌を歌いにやって参りました」という挨拶どおりのステージは、彼らが真心で1本1本のライブと向き合っている証だろう。
4人で軽快なトークを繰り広げるなかでシームレスに「チキンボーイ」へつなげると、予期せぬ10年以上前の楽曲披露に一部の観客から歓喜の声が上がる。ライブの定番曲「リフレイン」では立体的なアンサンブルが迫力を作り、今年2月にリリースされた「Believe」は鮮度を保ちながらも成熟を重ねてきた彼らだからこそのストレートな強度が生まれていた。ドラムのビートが響くなか、PONとikomaが向かい合って柔らかいギターを重ね「Link」へ。センチメンタルなムードから徐々に強度を増していく演奏は、会場を曲の世界の奥深くまで引き込んだ。
エレアコに持ち替えたPONは「あなたを」で穏やかな表情を浮かべながら目の前の“あなた”に歌い、ロックバラード「名前を呼ぶよ」ではPONが観客に「歌って」と呼びかけると、じっくり聴き入っていた観客もすぐさま歌で思いを伝える。迷いのない歌と音色がまっすぐ響いた「軌跡」では、ラストにフロアから盛大なシンガロングが起きた。「℃」はPONが歌い始めてからマイクを離れ、ステージ前方で身を乗り出して歌うと、観客たちも彼の歌に自分の歌を重ねる。「ラックライフの音楽」という唯一の共通点で、お互いがお互いに力を贈り合うような光景は、とても爽やかであたたかく、何よりきらめきに満ちていた。
最後に「しんどなったら会いに来てほしいし、しんどなくても会いに来てほしいです。そのために音楽を鳴らし続けてるんやと思います」「あなたはあなたの人生を頑張って。その先でまた楽しいことを一緒に作りましょう。あなたがいつでも帰って来られる場所になりたい」と告げると、本編ラストは「Home」。会場にいる全員を抱きしめるような、懐の大きな演奏だった。
アンコールではまずメンバーが一言ずつ挨拶をする。ikomaは自分たちを応援してくれる人しかいないワンマンという環境は力になると語り、たくは動画サイトでよく見かけるというスマホゲームのCMのモノマネをしながら「今日はみんなのおかげでこんなに素敵な1日になったよ!」と告げる。大石は今年主催ライブが少なかったがゆえに自分と向き合える時間やバンドのことを考える時間が増えた1年であったと振り返ると、目標を達成したその先にあるものをずっと追い続ける力がないとバンドは進んでいけないこと、それをリスナーと一緒に叶えていきたいことを語り「死ぬまで夢を追い続けようと思う」と宣言した。
3人の言葉に「最高やな!」と笑顔を浮かべるPONは、「ラックライフは世界をどかーんと変える力はないかもしれへんけど、ちょっとずつちょっとずつ目の前にある小さな世界を変えていく、愛していくバンドやと思っています。いろんな人の世界をつなぎ合わせて、一緒に生きていくようなバンドになりたいと思っています」と告げ、「大切になりそうな歌ができたから聴いてほしい」と2025年1月15日にリリースされるDigital EPの表題曲「願い」を披露する。ミドルテンポのロックバラードには、今のラックライフが大切にしている気持ちがしっかりと刻まれていた。
PONが「Hand」を歌い出すや否やフロアから次々と手が挙がり、華やかなムードのなかこの日を締めくくる。初日の名古屋で1曲目に披露した楽曲をここに持ってくるところもギミックが効いているが、同一曲はあれど短期間でセットリストを大幅に入れ替えてワンマンに臨み、それをドラマチックに描くところにも彼らがライブで研鑽を積んできたことをあらためて噛み締めた。そして地元大阪で開催されたツアーファイナルでは、全国7ヶ所を回るツアー“Digital EP「願い」release TOUR 2025「願ったり叶ったり」”を発表。東京公演は<FINAL&生誕祭>となる。バンドがこの先もさらなる目標を見据えて走り続けることを表明した。“なんでもない日”が特別な1日になったのは、バンドの歴史と、そのなかで育んできたファンとの信頼関係があったからこそだ。ラックライフの守りたいもの、手放したくないものが混じりけなく表れた、とても純度の高いツアーだった。
SET LIST
01.ファンファーレ
02.初めの一歩
03.サニーデイ
04.Naru
05.ブレイバー
06.MUSIC STAR
07.シンボル
08.チキンボーイ
09.リフレイン
10.Believe
11.Link
12.あなたを
13.名前を呼ぶよ
14.軌跡
15.℃
16.Home
ENCORE
17.願い
18.Hand