5th Anniversary Live MIMIZUQと時巡りの列車〜OTOGI CITY〜
2023年6月17日(土) 渋谷PLEASURE PLEASURE
“奇跡起きちゃって 六月の空が晴れている”
MIMIZUQの5周年記念ライヴがSHIBUYA PLEASURE PLEASUREで行われた6月17日は、彼らの曲「Tic-Tac」の歌詞そのままに、梅雨とは思えない快晴だった。その太陽の光に負けないほどの輝きを放ち、希望と可能性にあふれる未来を見せてくれたライヴの模様をお届けしよう。
ほぼ定刻に暗転し、おなじみのオープニングからステージに4人が揃う。訪れる沈黙。走るかすかな緊張。そこへ、森 翼が奏でるアコースティックギターから「NUMBERS」が始まり、冒頭の歌詞の“おはよう”を歌う森 翼の声で会場の空気が柔らかくほどけた。pocoの一打がまるで合図であったかのように照明が光を放ち、サウンドとともに目の前の世界が一気に広がっていく。ドラマチックでエモーショナルな、壮大なスタートだった。
「NUMBERS」は、インストゥルメンタルver.の「numbers」も含め、一昨年も昨年も、同会場の周年記念ライヴで披露されてきた大切な曲。その曲を4人が声を合わせて歌うさまは、希望に満ちた未来へ歩んでいくことを力強く宣言しているかのようだった。間髪入れず、3月にデジタルシングルとしてリリースされた「アイラブユーの世界」へと続き、会場全体を愛で満たす。
久しぶりに演奏された「Rain drop Tear drop」「PINKY PUNKY PARTY!!」で、会場の空気が動き出す。観客はこぶしを掲げて声をあげ、手拍子を打ち鳴らす。森 翼はステージから駆け下り、通路へ飛び出す。ライヴ中の彼は驚くほど大胆で、自由奔放だ。
メンバーの名前を呼ぶ大きな声が響く中、和気藹々としたMCに続いては、会場全体で振付を楽しめる「NAMIDA MUSIC FACTORY」。ヴォーカル不在のコロナ禍に楽器陣3人でファンと一緒に作り上げたこの曲をみんなで楽しむと、さらに賑やかに騒げるMIMIZUQの乾杯ソング「ハイレフルラリレホー」へ。「MONSTER GIRL」は、イントロの森 翼の印象的なアコギのフレーズがアレンジされており、おなじみの曲でありながら、ハッとするほど新鮮味が増していた。常にアレンジを変えていく(変えていける)のも、彼らの音楽性の高さ、深い探求心ゆえ。
鉄琴のような透明感あふれる繊細な音色のSEが流れ出し、空気を一変させたところで、「忘縁峡」が始まる。森 翼が、つぶやくように、ささやくように、訴えかけるように、思いを声に乗せる。“好きだけど壊した”と繰り返される、やりきれない感情に心が痛いほど。
AYAもアコギを手にし、森 翼との2本のアコギで届けられたのは「涙の成分」。彼らが目指す「ナミダミュージック」ならではの切なさ全開の曲が、いつもよりシンプルなサウンドで、それゆえに真っ直ぐ届いた。seekも椅子に座り、ここからはアコースティックセクション。観客も着席し、ゆったりとライヴを楽しむ。個性的なベースのフレーズが耳に残った「Child Room」、大人っぽいニュアンスを醸し出した「ずっと好きでした」と、日頃からアコースティックライヴを積極的に展開している彼らだけに、工夫を凝らした完成度の高い演奏が続いた。
ロマンチックなひとときをはさみ、いよいよ後半戦。再び観客に立つように促したところで、seekがそれを押し留める。なんとseekの衣装が激しいステージングゆえにみごとに破損、応急処置が必要な緊急事態発生。突然のトラブルだが、それを逆手にとれるのがMIMIZUQの強みだ。森 翼がアコギを奏で始めると、すぐにAYAとpocoが合流、即興でこの状況を歌にし、さらにソロ回し、そしてコール&レスポンスと、自在に演奏を繰り広げる。思いがけず、お得な気分さえ味わえる時間となった。
seekが戻ってきたところで、新曲であり、今日のライヴのタイトルでもある「OTOGI CITY」を披露。曲の展開ごとに表情を変えながらも、サビはこれまでにないほどのキャッチーさを持ち合わせた、MIMIZUQの新たな扉を開いたような曲。新曲を初披露ということで、ステージにもほんの少しピリッと引き締まった空気が漂う。
そんな空気を破るように、「渋谷、走れ~!」というseekの叫びから始まったのは、その名も「走れ!走れ!走れ!」。会場全体に元気がみなぎり、からだ全体で音楽を楽しむ時間がスタート。続く「アオイトリ」「鎮む森に降る慈しみの雨」と、彼らの“動”の魅力全開で、クライマックスへと突っ走る。
汽車の走り出す音に、時計の針が刻む音が重なる。森 翼が加入して以来、「時巡りの列車」をコンセプトに、時間を巡る列車旅行をしながら、人が誕生して成長を重ねていくさまざまなシーンを追いかけてきた彼ら。森 翼の歌をフィーチュアした新曲「時巡りの列車」を本編最後に演奏すると、曲が終わるとともに汽笛が鳴り響いた。時巡りの列車はまた新たな目的地へと出発するようだ。まばゆい照明がステージ中央に並ぶ4人を包み込み、温かな拍手が贈られる中、本編は終了。
アンコールは、9月に新曲(本編で披露したのとは違う、さらなる新曲!)『ケサランパサラン』をリリース、そして10月に東名阪ツアーと嬉しい告知をはさみながら、4曲をプレイ。最後を飾ったのは、本編でも演奏された「アイラブユーの世界」。コロナ禍を含め紆余曲折あった5年間の活動を経たMIMIZUQの前には、希望と可能性に満ちた明るい未来が広がっている。愛にあふれた、まさに“アイラブユーの世界”を体感しながら、この世界がもっともっと広がっていくだろうと確信めいたものを感じていた。