TOMOO、ミニマムからアンサンブル、超満員のオーディエンスを魅了した

ライブレポート | 2023.01.20 17:00

TOMOO 1st LIVE TOUR 2022-2023 “BEAT"
2023年1月15日(日)Zepp DiverCity(TOKYO)

シンガーソングライターのTOMOOが1月15日(日)にZepp DiverCity(TOKYO)にて、全国ツアー「TOMOO 1st LIVE TOUR 2022-2023 “BEAT"」のファイナル公演を迎えた。

福岡公演を皮切りに、札幌、名古屋、大阪、東京と5都市を巡った、自身初となる全国ツアーの最終日。開演時間となると、客電がついたままでギター、ベース、ドラムによる3ピースバンドが楽器とアンプ以外、何の装飾のない無骨なステージに登場。暗転と同時に、ステージの背面を覆う巨大なスクリーンに、車の後方座席に座って旅をする青年の映像が流れ、「BEAT」というタイトルが表示された。

ロードムービーのようなオープニング映像に続き、ドラムがビートを叩き始めると、満員のフロアからは盛大なクラップが鳴り響いた。真っ赤なシャツに真っ赤な靴、パープルのパンツ姿のTOMOOが走ってステージに上がると、観客のクラップの音量がさらに大きくなった。1曲目はメジャーデビュー曲となった1stデジタルシングル「オセロ」。TOMOOは歌いながら白と黒の鍵盤を叩きつけるように演奏し、弾むグルーヴを牽引。2番ではピアノを離れてスタンドマイクを握り、ときに飛び跳ね、ときにくるくると回りながら、ステージ上を自由に動き回りながら歌唱。そして、春と恋の訪れに鼓動が高鳴る「酔ひもせす」や「What's Up?」でもオーディエンスのクラップは鳴り止まず、フロアは大きな盛り上がりを見せた。さらに、2階後方の立見まで超満員のフロアを見渡し、感激の面持ちで「すごいな。すごいですね。いっぱいだから」と呟いたMCを挟み、「らしくもなくたっていいでしょう」では、「ツアータイトルに合わせてクラップで遊びましょう」と呼びかけ、様々なリズムのクラップを通したコール&レスポンスを実現。冒頭の4曲では、クラップを大きく鳴らしてBEATを重ねることでオーディエンスを楽しませていた。

ウーリッツァーを弾き語り、緩やかに揺蕩うグルーヴを奏でる「レモン」やピアノを立ったままで演奏した「地下鉄モグラロード」では、ライブハウスで4ピースのバンドで演奏することが楽しくて仕方ないというような笑顔や充実した表情も垣間見えた。この後、バンドメンバーが一旦ステージを下りると同時に、ステージ上部の照明がTOMOOの頭上まで降下。こぢんまりと固まった空間で、ひとりになった彼女は「賑やかで大きなBEATだけではなく、耳を澄ませないと聞こえないくらい小さなBEATを聴くような静かな時間や、音が鳴ってない時の休符も同時にイメージしている」と語り、真っ暗な部屋の窓から見える夜空に浮かぶ月の風景を引き連れてくる「Mellow」を弾き語りで披露。日替わりコーナーだが、「なぜか毎公演やっているパンの歌」という「ベーコンエピ」では力強いタッチのピアノに語るような歌い方で、“似ている”と感じることのできる“共感”から始まるラブストーリーを綴り、「夢はさめても」では、「人とがっつり関わっていけばいくほど、玉ねぎの皮を剥くように新たな一面が見えてくる。分かり合えないところがどんどん現れていくけれども、バラバラの心を持ったままでも重なることもできるでしょう」という気持ちを表現。アコースティックの弾き語りコーナーは、全く異なる心拍数を持った心臓の音——鼓動が重なり合う奇跡的な瞬間に耳を傾ける時間だったように思う。

静から動、ミニマムからアンサンブルへ。ライブの後半はTOMOOの音楽が持つBEATの多様性にたっぷりと浸る機会が設けられた。メジャー2ndシングル「17」や「スーパースター」ではバンドに加えて弦楽四重奏が加わり、曲の情感を凛々しく引き立て、ディスコファンク「Friday」では観客もクラップで参加し、大きく盛り上がった。そして、ファイナル公演の2日前にリリースされたばかりのメジャー3rdシングル「Cinderella」へ。「染まりたかった、でも染まれなかった」というテーマの通り、彼女は様々な色彩のレーザー光線に照らされながらも、エモーショナルでダークなバラードをドラマチックにダイナミックに歌い上げ、光と影、過去と現在、白と黒をコントロールするかのように自分だけの色を強烈に放ってみせた。深みと迫力のある歌声は観客の感動を呼び、この日一番と言っていいほどの拍手がわき起こり、なかなか止まなかった。

「長らく皆さんに聞いてもらいたかった曲でした。5年前に作った曲なんですけど、当時は表現力も何もかも足りてなくて。今でよかったなと思うし、これからも長く歌い続けていきたいと思います」

そんなMCを経て、ライブはいよいよクライマックスへ。弦楽四重奏に代わり、トロンボーン、トランペット、アルトサックス、バリトンサックスのホーン隊が加わった「HONEY BOY」は、「ツアーファイナルにして、初めてやること」だというタオル回しとクラップで一体感を生み、「POP’N ROLL MUSIC」では一人一人と目を合わせるかのようにステージに座り込んで歌い、「恋する10秒」では手を振りながら名残惜しそうな表情で<今度いつ会えるかな>というフレーズを届け、超満員のオーディエンスとのコミュニケーションを十二分にとったステージを後にした。

アンコールを求める拍手に答えて再登場したTOMOOは、ホーン隊の3人がフルートを奏でたラブバラード「ロマンスをこえよう」で甘く切なく歌いあげたあと、こう語った。「人生初のツアーをみんなと迎えることができて本当に嬉しいです。そして、誰一人かけることなく完走できたことも幸せに思います。私は音楽を始める前は人と向き合うことも接することも苦手だなと思ってました。俗に言うと人見知りで、引っ込み思案だった人間が、初めての場所で初めましての人の前でワンマンライブをしてきて。音楽を始めた10年前には考えられないようなオープンな気持ちで今、ここに立っていて。今日もみんなからもらった熱で歌うんだから、怖いもの何もないやって思ってて。それぞれ、考え方や性格はバラバラな私たちですけど、ここ(ハート)に同じ楽器を1つ持ってて。そういう気持ちでやってきたツアーで、今日も言葉の前に共通の楽器を持っているなと実感しています。温かい時間をありがとうございました」

温かく大きな拍手に包まれる中で「すごく幸せ」と呟いた彼女は、YouTubeの視聴再生回数が200万回を突破している人気曲「Ginger」で、この日1番のヴォリュームとなるクラップと熱気を引き起こすと、最後に再び一人になり、「本当にいい旅でした。そして、旅は続く」とこぼし、「陰日向を繰り返していくとしても、あなたと私の幸せを願いつつ」と語り、「グッドラック」を弾き語りで歌唱。ステージ上のスクリーンには朝焼けの空が映し出され、やがて陽が上り、マリーゴールドやひまわり畑の風景となり、最後の一音と同時に暗転。ツアータイトルに続き、路上に置かれたアップライトピアノに焦点が当てられ、次のホールツアーが発表された。そして、明転し、ステージ上に目を向けた時には、TOMOOの姿はもう見えなかった。彼女は早くも次の目的地へと向かったのだろう。「旅は続く……」という言葉が胸に残って忘れられない。いいロードムービーを見た後のような余韻を残してくれるライブだった。

SET LIST

01. オセロ
02. 酔ひもせす
03. What's Up?
04. らしくもなくたっていいでしょう
05. レモン
06. 地下鉄モグラロード.
07. Mellow
08. ベーコンエピ
09. 夢はさめても
10. 17
11. スーパースター
12. Friday
13. Cinderella
14. HONEY BOY
15. POP'N ROLL MUSIC
16. 恋する10秒

ENCORE
01. ロマンスをこえよう
02. Ginger
03. グッドラック

公演情報

DISK GARAGE公演

TOMOO LIVE TOUR 2023 "Walk on the Keys”

2023年6月に、東京・大阪NHKホールワンマン開催!
2023年6月3日(土) NHK大阪ホール
2023年6月28日(水) 東京・NHKホール

■チケット
指定席¥6,500(税込)

  • 永堀アツオ

    取材・文

    永堀アツオ

  • 撮影

    Kana Tarumi 

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