5月21日から5月29日にかけて、“Re:~Endless Journey~”と銘打ったツアーを行ったRayflower。タイトルを見て、彼らが昨年10月から今年1月にかけて遂行したロング・ツアー“~Endless Journey~”の追加公演と捉えた人が多かったと思うが、メンバー達は“そのまんま”ということに面白さを感じなかったらしい。周囲の予想とは異なり、今回のツアーはRayflowerがこれまでにリリースしてきた全曲を披露する場となった。柔軟なスタンスでツアーをよりスペシャルなものにする辺りは、いい意味で、一筋縄ではいかないRayflowerらしいといえる。
とはいえ、今回の“Re:~Endless Journey~”は全5公演というスケジュールだったため、そこで全曲を披露するのは容易なことではなかったに違いない。ロング・ツアーの場合は基本になるセットリストを組んで、ライブごとに数曲を入れ替えていけば全曲を網羅できるが、ショート・サーキットではそうはいかない。全5本ということは毎回セットリストが大きく変わることになるし、さらにライブでほとんど演奏していない曲を一発勝負で聴かせないといけないというプレッシャーものしかかってくる。そういう中で、Rayflowerはどんなライブを見せてくれるか?そんなことを思いつつ、ツアー・ファイナルを飾った東京キネマ倶楽部へと向かった。
場内にサイバーかつ重厚なオープニングSEが流れ、メンバー達がステージに姿を現した。客席から熱い歓声と拍手が沸き起こる中、都が奏でる清澄なピアノの音色が響き、ライブはRayflowerのデビュー・シングル「裏切りのない世界まで」から始まった。いきなりライブであまり演奏しないナンバーという幕開けに、“そうきたか!”と思ったが、レアな楽曲をいい形で聴かせる辺りはさすがにRayflower。抑揚を効かせた田澤の歌声と勢いと安定感を併せ持った良質なサウンドにオーディエンスも熱いリアクションを見せ、ライブは上々の滑り出しとなった。
その後はシャッフル・チューンの「彩戯心」や翳りを帯びた歌中と明るいサビ・パートのコントラストを活かした「U-TOPIA」、心地好く疾走する「ときに成功は失敗のもと」などを相次いでプレイ。強い存在感を発する5人が一体になってRayflowerの世界を創りあげていくステージは観ごたえがあるし、起伏に富んだ楽曲をクリアに聴かせる演奏力の高さは実に見事。1曲ごとにテンションを上げていく構成も決まって、場内のボルテージはどんどん高まっていった。
セカンド・ブロックでは、「Rayflowerの根本であると同時に、一環してある世界観を感じてもらえるセクションだと思います」という田澤の言葉と共に、切迫感を纏った「イニシエ」や楽器陣のソロ廻しをフィーチュアした「真実の森の中で」、ラグジュアリーな味わいの「罪に罰、黒と白」などが演奏された。翳りを帯びた世界観やメンバーのテクニックを押し出したアプローチなどは最近のRayflowerではやや影を潜めているため、今回のツアーでそれをじっくりと味わえたのはファンにとって大きなポイントだったと思う。場内をビッシリと埋めたオーディエンスが“聴く姿勢”になって、Rayflowerが創出する深みのある世界に浸っている様子が印象的だった。
中盤では、異国情緒が香る「S.O.S~沈黙のスカーレット~」やスケールの大きな抒情性を放つ「Words Of The Wise Man~時の贈り物~」、華やかかつアッパーな「It’s a beautiful day」などを披露。1曲ごとに表情を変えるステージは観飽きることがないし、幅広さを見せつつ全てが良質ということには圧倒されずにいられない。冒頭にも書いたように、持ち曲全部を聴かせるショート・ツアーは知らない曲の連続になってしまい、オーディエンスのフラストレーションが募り、盛りあがりに欠けるライブになってしまう危険性がある。今回のライブに来場したファンの中には馴染みの薄い曲が多いという人もいたかもしれないが、場内はライブを通していいムードで賑わっていた。このことからは、Rayflowerが生み出す楽曲の質の高さを、あらためて感じることができた。
その後は、Rayflowerのライブの恒例になっているメンバー全員でのMCコーナーに突入。「ゴメン、いきなり飛んだ。ここ、どこだっけ?」という天然ぶりを見せつつ「今回は全曲披露ということで全公演違うセットリストになって、毎回が初日であり、ファイナルのようなツアーでした」と語ったIKUOを始め、ツアーをまわるRayflowerを船になぞらえて、「Rayflowerという船がさらに先に進むために、現在の状態を点検するのが今回のツアーだったと思う。で、今日のライブが終わったら、次に向かう準備が整ったことを感じられるんじゃないかな」という哲学的な話を聞かせたSakura。ツアーに全く関係のない“初めて警官に職務質問をされてワクワクした”というエピソードを披露した後、「Rayflowerの曲のバリエーションの豊富さと、我々の表現力の豊かさを(笑)、あらためて感じたツアーでした」と語ったYUKI。「無事ファイナルを迎えることができて、本当に感謝しています。ありがとうございます。来年の10周年に向けて、ここからまたどんどん走っていくので、よろしくお願いします」というリーダーらしい言葉でMCコーナーを締め括った都。メンバーそれぞれの人柄が伝わってくる等身大のMCに、客席は大いに湧いていた。
そんなMCコーナーを経て、ライブ終盤ではアップテンポの「Make A Judgement」を皮切りに、ヘヴィ&キャッチーな「Runaway Brain」、都とYUKI、IKUOがサブステージに登ってホットなソロ・バトルを展開した「サバイヴノススメ」、田澤とIKUOのツインボーカルを配したアッパーな「Soul survivor」などを畳み掛けるようにプレイ。メンバー全員が織りなすフィジカルなパフォーマンスと爽快感に溢れたサウンドにオーディエンスのボルテージがさらに高まり、東京キネマ倶楽部の場内はツアー・ファイナルにふさわしい盛大な盛りあがりとなった。
これまでにリリースしてきた全曲を網羅するショート・ツアーを行って、ポテンシャルの高さを見せつけたRayflower。多彩な楽曲や起伏に富んだ構成、ハイレベルなプレイなど見どころは多くて、彼らが“鉄板曲”に頼ったライブをするバンドではないことを再確認できた。と同時に、今回のツアーを通してメンバー達がRayflowerを見つめ直すことで、より突き詰めるべき部分や、新たにプラスしたい要素などに気づいたことは想像に難くない。大きな意味を持ったツアーを経てRayflowerがさらに幅を広げ、深度を深めることは確実といえるだけに、今後の彼らの展開にも大いに注目していきたい。
■ SET LIST
01. 裏切りのない世界まで
02. 彩戯心
03. U-TOPIA
04. ときに成功は失敗のもと
05. Prisoner of evolution
06. イニシエ
07. 真実の森の中で
08. 罪に罰、黒と白
09. 哀しみのリフレイン
10. S.O.S~沈黙のスカーレット~
11. Words Of The Wise Man ~時の贈り物~
12. It’s a beautiful day
13. Make A Judgment
14. Runaway Brain
15. サバイヴノススメ
16. ユースフルハイ
17. Soul survivor
18. Bloom Moment
ENCORE
01. Dance naked, Under the moonlight
02. Shining GARDEN