当時は「自分以外のバンドは全部いなくなれ」と思ってたけど、それでも気になるっていう存在がフジファブリックだった（安部コウセイ）
安部コウセイ
──その時の、スパルタから見たフジの印象は？
安部僕はとにかく「演奏うめえ！」と思いました。単純に、ものすごく技術力高いな、っていう。悔しかったですね。
伊東確かに、むかつくぐらいうまかったよね。「花屋の娘」のPVを、まだ福岡に住んでた頃に見て、「うわ、かっこいい」と思って。実際ライブを観たら、とんでもない演奏をしてて。「話したくないなあ」と思った（笑）。
安部当時はやっぱし……僕個人は、ですけど、自分以外のバンドは全部いなくなれ、と思ってた感じがあったけど、それでも気になるっていう存在で。で、僕は徐々に、志村と話し始めて。「なんて目をして話すんだ、こいつは」って思って。こっちを見てるけど見てない、みたいな。
山内ああ、それわかります。
安部僕も、目が濁ってるとよく言われるんで（笑）、そこの部分で共感し合って。だから、総くんと話し始めたのは、意外と遅いんだよね。
山内うん、『フジフジ富士Q』（2010年、志村正彦の逝去後に多数のゲストを招いて富士急ハイランドで行われたイベント）の時が、ちゃんと話したのは初めてで。
安部『フジフジ富士Q』の練習の時にスタジオに入ったじゃん？ あん時だっけ、俺、金澤くんの魅力に気づいたの。
山内そうそう。ダイちゃんめちゃめちゃ喜んでたやん。
金澤え、なんでなんで？
山内コウセイくんがさ、唐突な感じでダイちゃんに「キレやすいでしょ？」って言ったの。
金澤正解、そうそうそう。
山内（笑）。今までそれを言い当てられたことなかったから、ダイちゃんがその瞬間にバーンて心開いて（笑）。
金澤そうだったそうだった。
安部でも俺、金澤くん怖くて、最初。
金澤俺もコウセイくんのこと怖かったよ。
安部いや、あのね、俺の怖さってたぶんわかりやすい怖さなんだけど、金澤くんの怖さって、なんかねえ、ちょっとサイコパスな感じがある。
山内・加藤・伊東ははははは！
金澤なんだよそれ！
安部いい意味で、いい意味で。いいサイコパスっていうのかな。
──それだといい意味に思えないから補足しますね。つまり、抜きん出て能力が高い部分を持っている代わりに、感情のある部分が欠落している……これもダメか（笑）。
安部ああ、でもそうです。まさにそれが言いたかった。
山内まあそれは、なきにしもあらずかも。
金澤ほんとぉ……でも、僕の対外的なイメージって、もうちょっと常識があって社会的だと思うよ。だから、そこを見抜いてるコウセイくんていうのが、さすがだなと。
安部まんなかでしゃべってない感じがするんだよね。
加藤慎一なんか、メンバーだけど、全部嘘にきこえる。
金澤以外全員（爆笑）
加藤今日に限って。今日に限ってね？
山内でもほんとスパルタの、ああいうビート感もさ……伊東くんと昭ちゃん（中山昭仁）と（安部）光広が8ビートのグルーヴを出していても、コウセイくんは16ビートで、それでノリが生まれたりする曲とかあって。
安部でもうちらの場合、たまたまそうなってるだけだったりすんだよね。ちゃんとわかって作ってるからかっこいいっていうの、あるじゃん。その感じがフジファブリックはして。『フジフジ富士Q』で俺が歌った「虹」、あれ、すごいシンプルな8ビートの曲じゃん。ああいう曲って難しいじゃん、作るの。
山内難しい。あれはちょっと時間がかかった記憶あるね。
安部ああいうメジャー・キーで8ビートだと、かっちょ悪い歌謡曲みたいになっちゃうんだけど、あれはちゃんとロックだし、フジファブリック節がある。っていうのは、歌ってみて思ったな。
スパルタは、同郷から一緒に出て来たバンドの、塊感みたいなものが音にある（加藤慎一）
──ライブの仕方において、「ここ、俺らとは違うなあ」というのはあります？
伊東真一
伊東フジのライブを観ていて思うのは、毎回ちゃんとライブごとに、ちょっとした仕掛けというか、曲のアレンジを細かく変えて来たりとか。当時のスパルタは、そこまで考えが及ばなかったというか、ただ熱量重視みたいな感じだったから。
安部あとシンプルに、金澤くん、キーボードがいるっていうのがうらやましかったかな。音がすごい立体的に来るから「うちらとのこの違いはなんなんだろう？」って。
伊東レンジ感が全然違うよね。うちらは「中音！まんなか！」みたいな感じだけど。
加藤でもスパルタ、やっぱり同郷から一緒に出て来たバンドの、塊感みたいなものが音にあるというか。なんか肉体的っていうか、お互いに見過ごさすバチバチやってできたものを演奏してるような。僕らは、地方の者たちが東京に出て来て集まったバンドなんで、それはうらやましかったですね。
加藤慎一
