藤巻亮太、自身の心を解き放ち、名盤『日日是好日』誕生!

インタビュー | 2016.04.08 18:00

藤巻亮太

インタビュー/三宅正一

──ニューアルバム『日日是好日』を聴いた正直な感想として、完全に吹っ切れたなと思いました。相当手応えがあるんじゃないですか?

うん、ありますね。前作『オオカミ青年』から3年半空いて、深かった悩みから抜ける過程でできたアルバムがこの『日日是好日』で。『オオカミ青年』は、レミオロメンを10年やってきて、バンドで表現するのは違うなっていうパーソナルなドロッとした感情だったり、ギザギザした衝動を吐き出したいと思って作ったんです。そのエネルギーはある意味でレミオロメンの活動で蓄積したものがあったからこそ生まれたものでもあった。でも、『オオカミ青年』をリリースして、ツアーを回ったときにそのドロッとしたエネルギーを昇華できてしまったんですよ。そうすると、自分のなかでスッキリしちゃって、空っぽになってしまったんです。『僕のソロってなんだろう?』とか『もしこのままソロ活動を続けたらレミオロメンのときと何も変わらないな』とか、または外側から『レミオロメンはどうするんだよ?』という声もあったりして。

──でも、『日日是好日』はレミオロメンのフロントマンでありソングライターである自分のことも受け入れてるなと思いました。それも含めて、ソロの音楽像があるんだと。

そうですね。やっぱりソロはレミオロメンと違う音楽像を確立しなきゃいけないという強迫観念をずっと持っていたし、『ここから先はレミオロメンっぽい』という線を自分で勝手にどんどん引いていたんですよね。そうすると自分のなかにある音楽を作るスペースがすごく狭くなってしまった。

──自縄自縛の状態ですね。

そう。やっぱり狭いところで音楽を鳴らしても、いい曲はできないし、似たような曲がいくつも出てきてしまうんですよ。悩みながら『俺はなんでこんなに苦しいんだろう?』と思ったときに、結局その原因は自分で引いていた線にあることに気づいて。その気づきを得るまでに時間がかかったんですよね。

──「ing」をリリースしたあたりは迷いの渦中でしたよね?

渦中でした。自分が苦しんでる理由もわかってない時期で。かなり模索してましたね。

──突破口が見えたのはいつごろですか?

このアルバムを作りながら見えた感じですね。あとは、去年ライブでレミオロメンの曲をやり始めたのも大きいです。今、世の中でレミオロメンの曲を歌えるのは僕しかいないし、細かいことを気にせずやってみようと思って。

──禁じ手を解いた。

レミオロメンの曲を歌ってみて、『これ僕じゃん!』って素直に思ったんですよね。その延長に今の自分がいるなって。それで僕自身が僕自身を苦しめていたことに気づいたんです。そうやって自分を縛っていた線を1本ずつ消していくと、消した分だけ心が広くなっていった。心が広いと楽しいし、自分も救われるんですよね。そうやって自分の心を回復しながら作っていったアルバムですね。

──『日日是好日』というタイトルにもそういったことが象徴されていると思います。

そうですね。『日日是好日』というタイトルは“今日という日を素直に楽しもう”というニュアンスがあるんですけど、僕も自分の心を回復させながらこの言葉と出会ったときに、明日悩むことをわざわざ今日前借りして悩む必要はないと思ったんですよね。悩んだり心に何か引っかかりのようなものを感じるとすごくエネルギーを使うんですよね。だったら、そのエネルギーを今日自分ができることに対して使ったほうが健全だと思った。音楽を作るうえでも。

藤巻亮太

──「日日是好日」というタイトル曲は、サウンドのスケール感は大陸的な大きさがあるんだけど、そこに乗ってるメロディはとても軽やかで。今の藤巻さんのマインドを象徴しているんだなと思います。

そうかもしれないですね。コード進行もすごくユルくて。サビの歌詞も言葉としては“日々 日日是好日”って日々がひとつ多いんですけど、それでもメロディとハマりがよければいいと思えたんですよね。今までは歌詞の言葉の意味が通らなきゃいけないとか、誰でもわかりやすい歌詞を書かなきゃいけないみたいなことを思ってる自分がいたんですけど、それも自分を縛る1本の線だなと思って。意味よりも歌としての響きのほうを大切にしたいって最近よく思うんです。その響きのパワーってすごく信じられるから。

──ポップの力も宿るだろうし。

そうなんですよ。

──どの曲もポジティブな力に満ちていて、「回復魔法」ではマイケル・ジャクソンの「Black or White」を思わせるギターフレーズがあったり、小沢健二さんの『LIFE』に通じるようなムードもあるなと。

うんうん、ポップな、力の抜けたという意味では、『LIFE』を意識したところもありますね。音楽ってどこか回復魔法のような要素があるなと思ったんです。自分自身も音楽を作りながら癒やされてるし。12曲を作りながら、12本の自分を縛っていた線を消していくような感覚がありました。1曲できて、1本線が消えるとすごく気持ちいいんですよ。

──ラストの「ing」を作ったときはまだ迷いのなかにいたと思うんですけど、このアルバムのラストに位置することで、この曲も報われたと思うんですよね。

そうそう、すごくそう思う。シングルでリリースしたときとはまた違う聴こえ方がすると思うんですよね。

──このアルバムを完成できた意味はとても大きいですね。

ホントに。このアルバムを作って、このアルバムからもらったマインドってすごく大事で。自分のなかで指標になるようなアルバムだと思います。もっともっとラクに力を抜いて音楽を作っていけそうな気がするし。野口健さんに山に連れて行ってもらったのも大きかったな。ミュージシャンとして生きていたら、2、3週間ヒマラヤの山奥を歩いたりできないですからね(笑)。物理的に東京から離れると、精神的にも自分の日常を切り離せて、自分を客観的に見ることができるんですよ。山を歩いてすごく疲れてるはずなのに、山を歩きながら癒やされていった。また野口さんと登山に行きたいですね。その前にツアーを楽しみたいと思います。

──次のツアー「春祭編」も充実したものになりそうですね。

『歌旅編』と題した弾き語りツアーを終えて、『春祭編』は、前半は3ピース編成でピアノとギター&バイオリンの3人編成で回ります。この編成は歌に寄り添いながらもすごく深いアンサンブルを追求できてやりがいがあるんですよね。ファイナルの東京公演を含めた最後の3本はフルバンド編成でエモーショナルにいきます。このツアーを通してまた新曲ができるんだろうし、今の僕はすごく風通しがいい状態です。『音楽って最高だよね』ということをアルバムで表現できたし、ツアーもそのマインドで1本1本のライブを大切にしたいと思います。

──このツアーだからこそ、レミオロメンの楽曲もさらに自然体で演奏できるだろうし。

そう思います。去年からレミオロメンの曲をライブでやり始めてバリエーションが増えたし、今回のツアーでもやれる曲はやりたいと思います。春らしい曲とかね。ソロの曲もレミオロメンの曲もそのときの自分のマインドにあった曲を演奏していこうと思うので、お客さんにはそのあたりも楽しんでもらいたいなと思います。このツアーを通して新曲も生まれる予感がするし、それくらい風通しがいいので。このマインドで進んでいけたらいいなと思ってます。

■「日日是好日」(New Album「日日是好日」収録)

藤巻亮太 TOUR 2016 ~春祭編~

2016年5月27日(金)Zepp Tokyo
18:00 開場 / 19:00 開演
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(ビクターエンタテインメント)
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