fox capture plan結成15周年記念インタビュー第二弾!バンドのオリジナリティを築いた3作品と、劇伴制作のきっかけなど語る

インタビュー | 2026.07.22 18:00

──『FRAGILE』から9ヶ月後、6作目の『UИTITLƎD』がリリースされました。
岸本『UИTITLƎD』は『FRAGILE』の延長線上にある作品で、同じ日にレコーディングした曲も入ってると思います。
──当時のインタビューを読み返すと、『FRAGILE』と『UИTITLƎD』は、『trinity』と『BRIDGE』の関係性に近いと話されていました。
岸本そうですね。タイトルが『UИTITLƎD』だけに、『BUTTERFLY』や『FRAGILE』みたいに明確なコンセプトを持って作ったわけではないんですけど、その2作品の延長線上にある作品だと思います。「Cross View」、「行雲流水」、「繰り返される時空のワルツは千の夢を語り」、「Theme from quartet」のセルフカバーとか、ライブで未だにレパートリーに入ってくる曲が多くて。狙って作ったわけじゃないけど、自分たちの中で印象的な位置付けになってるっていう意味でも、『BRIDGE』と近いかもしれない。
カワイ今までやってきたいろんなことを合体させる、みたいな感じはあったかも。「Cross View」は生と電子楽器の対比を意識して、ストリングスとシンセをごちゃ混ぜにしつつ、右で電子音が鳴って、左でストリングスが鳴ってる、みたいなミックスにしてって言った記憶があって。
──で、それがクロスするんですよね。
カワイそう、だんだん行ったり来たりするようになってる。なおかつ変拍子も入ってて、ライブで「不思議な構成だな」とか思いながら弾いてますけど(笑)。
岸本ミュージックビデオもかっこいい。さっきの須田さんのアートワークじゃないですけど、仁宮(裕)さんも新しいアプローチで、いろいろアイデアを出してくれて。
──司さんは『UИTITLƎD』の時期をどう振り返りますか?
井上『UИTITLƎD』のレコ発ツアーが多分これまでで一番たくさんの場所に行ったんですよ。日本全国もそうですけど、中国にも行って、その中国ツアーで『カルテット』の曲ですっごい盛り上がってくれたんです。『UИTITLƎD』にはコールドプレイの「Viva La Vida」のカバーも入ってて、あの曲でシンガロングが起きたり、その前にも中国ツアーは何回か行ってますけど、今まで以上にファンとのコミュニケーションができたし、みんながfoxをちゃんと聴いてくれてることが手に取るようにわかるツアーでした。
──『カルテット』は中国でも人気なんですね。
井上大人気ですね。未だに中国人と話をすると『カルテット』の話が盛り上がるくらい、めちゃくちゃヒットしてて、「誰でも知ってるドラマ」みたいになってます。

──「Theme from quartet」はラテンジャズっぽい雰囲気が特徴です。
カワイ「軽妙な感じにしたい」とか「ラテンの情熱的な部分を曲に入れてほしい」みたいなことを言われた記憶があるので、それで作った感じです。
──ラテンは当時のfoxとしては新鮮なアプローチだったかもしれないけど、個人の手札としては、特にImmigrant’s Bossa Bandをやっていたカワイさんからすれば、もともと持っていたものですよね。
カワイ「あ、モントゥーノね」みたいな感じで、ピンと来ました。Aメロみたいなところはメロディーのようでメロディーじゃない感じだったというか、モントゥーノのリズムにハメたメロディーというか、リフっぽさもあって、アプローチ的に面白いなと思って。ラテンのメロディーが強いとラテンのクサさが出すぎちゃうから、そこまでメロディーが強くない、それくらいのニュアンスが良かったのかなって。
──『UИTITLƎD』からは「Cross View」の新録が収録されています。
カワイ今回の三部作のNEW TAKEは全部エレキベースなんです。当時はまだエレキベースでアルバムを録ることをやってなかったので、エレベでやったら面白いんじゃないかなと思って。劇伴では使ってたんですけど。オリジナルアルバムでは使ってなかったんですよね。
岸本ストリングスも入ってないし、電子音の割合もオリジナルバージョンより減ってると思うんですよ。これもトリオでやる機会が多かったので、ライブバージョンを改めてスタジオバージョンとしてコンパイルするっていうのが意識としてありました。
井上ちょっと静かめな感じで始まるんですけど、この曲はライブのオープニングにやることが多いんです。なので、そのライブ感もいい感じにパッケージできたかなって。
──2010年代中盤を振り返ると、インストバンドのシーン的な盛り上がりもありましたね。2015年に「Sing Your Song!」が始まって、2017年からは「TOKYO INSTRUMENTAL FESTIVAL」に名前を変えて、新木場スタジオコーストに多くのお客さんが集まりました。
井上2015年に関して言うと、お正月に年末のライブを発表して、それがfoxが結成当初から目指していたリキッドルームでのワンマンだったんです。それを12月にやって、 2016年はフジロックと東京ジャズがあって、 2017年がサマソニ。濃いものがどんどん積み上がっていってる感じで、すごく自信がついてきた時期でもありました。
カワイ海外にもライブでよく行くようになったしね。
井上「TOKYO INSTRUMENTAL FESTIVAL」で言うと、2017年に大トリをやったんですけど、そのころはちょっと尖ってたから、アルバムのマニアックな曲だけしかやらなかったんですよ。リード曲が増えて、セットリストが似てくるようになって、それに飽きてきたのがあったのかもしれない。
岸本セットリストでインパクトを残したいっていうのは純粋にあったとは思うんですけどね。
カワイ確かに。インストフェスでアークティック・モンキーズやるの俺らぐらいだし(笑)。
岸本結成当初から目標にしてたリキッドルームを達成して、その勢いでO-EASTもやったり、コロナに入るぐらいまでその感じがずっと続いてたとは思うんですよね。時代的にも、確かにインストゥルメンタルのブームみたいなのが起こって、ピアノが主体のバンドがいくつも頭角を表したり。あとはバンドの世界で言うと、速いテンポの邦ロック系から、いわゆるシティポップですよね。Suchmos、LUCKY TAPES、Awesome City Clubみたいなバンドが台頭し始めた時期で、すごく転換期だった。で、ジャズの世界ではロバート・グラスパーの、『Black Radio』の波及はずっと広がり続けて。そういう中で、自分たちはどういう音楽を打ち出していこうかっていうのはすごく考えてましたね。なんなら初期よりも、それぐらいの時期の方がより考えてる時間が長かったかもしれない。

──ストリングスや電子音を取り入れてより独自性を出しつつ、活動としてはやはり劇伴の仕事が増えていったことも大きいですよね。
カワイ2017年に『カルテット』、2018年に『コンフィデンスマンJP』や『「青春ブタ野郎」シリーズ』とか、年間を通して複数の劇伴をやるようになってきたのがこの頃ですね。インストバンドが劇伴をやることにどういう効果があるのかは、だんだん見えてきたというか。一人の作家がやると一人の音楽性だけなんですけど、バンドでやると、三人だったら三人とか、それぞれのカラーがあるので、使う側としてもバリエーションがいっぱいあってお得、みたいな感じがあるのかなって。
──しかも、レコーディングもその人たちでやれちゃう。
岸本ベース、ドラム、鍵盤、一番ベーシックな部分から録っていくことが多いですからね。
カワイオーケストラ楽器で劇伴をやる流れからちょっと変わってきて、バンドっぽい劇伴というか、リズム隊が入った劇伴をたくさん作るようになって、ドラムとベースだけでコミカルなシーンをやるのがfoxっぽさの一個になったり、そういうのがドラマにハマりやすいっていう認識が業界の中で広まった気がする。それが「foxの劇伴はいいよね」って言われるようになった一つの要因かなとは思いますね。

──インストバンドを一定の規模感で長く続ける難しさもある中で、例えば、toeはメンバーそれぞれが他の仕事をやりながら、その上で音楽は自分たちが好きなことだけをやるスタンスですよね。foxは劇伴を仕事としてやりながら、オリジナルはより自分たちならではのものをやる。そのバランスが確立されたのもこの時期だったのかなと。
岸本まあでも今振り返ると、結構無理をしてたとは思いますね。とにかく曲を作りまくってたので。今はもう少し心の余裕を持って、制作のプランも決めてるので、楽しみながらできてるけど、この頃はとにかく駆け抜けてて、それは若いからこそかなって。
──司さんはこの時期をどう振り返りますか?
井上さっきもちょっと言ったんですけど、ライブがすごく印象的なんですよね。ライブの本数がすごい多くて、規模も明らかに前の三作のときよりも上がって、バンドが大きくなってるのを実感しながらライブをやってた時期で。ファンとの距離や交流を考え出すタイミングでしたね。
カワイO-EASTをやったのって何年だっけ?
井上『UИTITLƎD』ツアーのファイナルだから、2018年の頭。
カワイなんか…イケイケドンドンですよね(笑)。
──ワールドカップの本田圭佑の解説風に言えば(笑)。
カワイ勢いに乗ってたっていうのはありますね。色々といいステップを踏めたっていうか、それは偶然の積み重ねかもしれないですけど、すごいトントン拍子だった印象です。
──でも岸本さんが言ったように、必死で駆け抜けたからこそそうなったんでしょうね。
カワイそれまでに蒔いた種が芽吹いてきた時期だったのかも。
岸本オリジナル作品を作って、劇伴もやって、ライブもスタンディングからフェスから野外からジャズクラブまでやって、「これはできない」も「ここではできない」ももうない。そういうのを確立し出した時期だったんじゃないですかね。

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