レトロリロン・涼音(Vo/Ag)、ロングインタビュー!1stフルアルバム『コレクションアローン』はいかにして生まれたのか、目前に控えるツアーはどんなものになるのか話を聞いた

インタビュー | 2026.03.06 12:00

レトロリロンの1stフルアルバム『コレクションアローン』が画期的な傑作となったのは、楽曲が粒ぞろいであることに加えて、それらが集合体になることで、大きなテーマが浮き彫りになっているからだろう。孤立しているように見えた星々が星座を形成していると認識し、想像力を刺激される瞬間にも似て、楽曲それぞれの輝きとアルバム全体の輝きが、生きづらい現代を歩むための道筋を照らしてくれる。

作詞・作曲を担当しているのは涼音(Vo/Ag)。自らの感情と向き合うことで生まれた8曲が収録されている。感情の複雑さを複雑なまま、深く掘り下げて描いているところが素晴らしい。そして、涼音、miri(Key)、飯沼一暁(Ba)、永山タイキ(Dr)という4人のメンバーが、多彩な楽曲をエモーショナルな演奏で見事に表現している。

この作品はいかにして生まれたのか、そして目前に控えるツアーはどんなものになるのか。涼音にじっくりと話を聞いた。その発言からは、まなざしの真っ直ぐさ、鋭さ、深さも伝わってくる。音楽と同様に、彼の言葉には孤高の輝きが宿っていた。

──1stフルアルバム『コレクションアローン』は、「感情と向き合って書き下ろしたアルバム」とのことですが、感情にフォーカスしてアルバムを作ることにしたのはなぜですか?
涼音昨年5月にメジャーデビューすることが決まった時点では、曲を出す予定がなくて。発表だけして、そのままデビューする流れだったんですが、「あまりにふわっとしてるな」と思ったんですよ。それで、「メジャーデビューのタイミングで曲を出したい」という話をチームとして、その結果出来上がったのが「UNITY」という曲でした。でも、そのあたりから日常に追われるような感覚が強くなりました。

UNITY(Official Music Video)

──メジャーデビューすることで、音楽活動以外のことでも、すべきことが多くなっていったのですね。
涼音とてもありがたいことですし、ミュージシャンとして1個ステップアップするために必要なことだったんですが、責任やプレッシャーばかりを強く感じてしまいました。自分のキャパシティを超えるほどの忙しい日々が続いて、だんだんと感情も希薄になったんですよ。「UNITY」を作ったことが「感情」に触れるきっかけになったこともあり、この曲が発端となって、「アルバム制作を通して、今の自分の中で乏しくなっている感情1個ずつとしっかり向き合ってみよう」と考えました。
──自分の感情と向き合うのは、しんどい部分もあったのではないですか?
涼音骨も心も折れそうでした。「自分が書きたいものを突き詰めたい」「バンドを成長させたい」「環境を整えたい」という、あらゆる角度で完成度の高いアルバムを作りたかったんですよ。どれか1つを頑張るだけでは、いい作品にはならないからです。例えば、「感情に向き合う」ことだけにフォーカスして作ると、独りよがりなものになってしまう。アルバム制作をスタートした時点では、僕のイメージを具現化する技術や表現力が、メンバーに足りていないことも感じていました。それで 3人に、「僕が作りたいものを形にするには、それぞれの実力が足りない」という話をし、それぞれの苦手としている部分を伝えて、どう補うべきか、話し合いました。
──バンドとして新たな段階へ進むこととアルバム制作を同時進行で行ったのですね。
涼音はい。3人とも、もともと楽器が下手なわけではないですし、培ってきた技術もあります。だからこそ、ここまで乗り越えてこられたのですが、ここから先、メジャーでさらに大きくなっていくためには、培ってきたものにプラスして、今この瞬間にもインプットを積み重ねていかなければいけない。それぞれに課題を伝えると同時に、僕も自分の課題と向き合っての作業でした。アルバム制作終了時には、全員が課題をクリアできるようにしたい、という話をして制作に入りました。
──ハードルを高くした地点からのスタートだったわけですね。
涼音僕は歌の中で言葉を使えますけど、メンバーは言葉を使えないので、大変だったと思います。楽器でどこまで聴く人の感情に触れていけるか、苦戦しました。でもその過程で、それぞれが苦手なことと真摯に向き合って克服してくれたからこそ、このアルバムを完成させられたのだと思っています。
──「感情をテーマにすること」によって、作曲のやり方が変わったところはありましたか?
涼音メロディに関しては、自分から自然に出てきたものをそのまま活かすことが多くなりました。これまでは「客観的に聴いて耳に残ること」を意識していたので、作り直すことが多かったんですよ。でも今回は、自分の中からナチュラルに出てくるメロディをそのまま取り入れることが多くなりました。「この曲にはこういうメロディが必要だ」と、直感的に出せるようになったのは、自分の中での成長だなという手応えがありました。
──作詞面で意識したことはありますか?
涼音作詞は、「過去でも未来でもなく、今思っていることだけを形にする」ことを、自分の中のルールとして設定しました。僕はバンドが着実に大きくなっていくことを前提として、音楽活動を進めています。仮に3年後にその前提どおりに大きくなり、アリーナクラスのステージに立ったとしたら、多分、調子に乗っていると思うんですよ(笑)。未来で調子に乗っている自分が、過去に書いた曲(『コレクションアローン』の曲)を聴いて、デビュー当時の感覚に戻れるように、「原点的」であることを意識して書きました。
──自己と対峙して歌詞を書くことは、触れたくない内面を描くことでもあると思いますが、葛藤はありませんでしたか?
涼音なかったです。おそらく、メンバーと話し合う時間がかなりあったからだと思います。音を出している時間よりも、メンバーと話し合っている時間の方が長かったくらいなので。その分、歌詞では、自分が思っていることをダイレクトに吐露できたのかなと思います。自問自答していた時間が長かったこともあり、隠すよりも全部歌詞に出してしまおうと決めていました。
── 1曲1曲の感情の描き方の解像度が非常に高いです。アレンジやサウンドなどの制作で変化したところは?
涼音かなり変わりました。これまでは僕が弾き語りで曲の大枠を作り、歌詞とメロディも作った上でメンバーに持っていって、そこからアレンジするやり方でした。でもその方法では、僕の範疇でしか収まらないし、メンバーから出てくるものが活かせなくなってしまいます。単純にそのやり方だと時間もかかります。自分で取捨選択をし終えてから渡すのは、効率が悪いと思ったので、「UNITY」を作る時から、「楽器を使わずに作曲しよう」と決めました。
──それはどうしてですか?
涼音単純にギターを弾いている時間がなくなってしまったという物理的な理由もありました。終電で帰ってからギターを触る生活だと、コンディションにも影響します。「家は休む時間。家で作曲するのはやめよう」と決めて、「移動中の電車や歩いている時に、頭の中で作ればいいんだ」と切り替えました。頭の中でドラム、ベース、鍵盤、ボーカル、ギターを全部鳴らして、ある程度完成させた上で、メンバーにはニュアンスだけで伝えるようにしました。
──どうしてニュアンスだけなんですか?
涼音僕の頭の中で鳴っている音をそのまま伝えると、僕が全部作ったことになってしまうからです。なので、大方は伝えつつ、メンバーから僕の想像を超える良いものが出てきたらそれを採用しようと。メンバーにはかなり負荷のかかるやり方ですが、そこを乗り越えられないと、より高い段階に行けません。前半の4曲はかなり時間がかかりましたし、メンバーが現場で考え込んでしまうことも多々あったのですが、後半の4曲は割と早かったです。
──作る過程でメンバーが成長していったのですね。
涼音それぞれが自分の課題と向き合った上で、着実にステップアップしていることは実感していました。

Making of Retroriron「ラストハンチ」

──「UNITY」が「アルバムの始まりの曲」になったとのことですが、くわしく説明していただけますか?
涼音メジャーデビューを発表した時に、バンドが4人だけのものではなくなった感覚がありました。それは、「人の人生に入り込んでいってしまっているな」と思ったからなんですよ。歌を始めた高校1年の時は、人の人生に入り込むことなんてほとんどありませんでした。誰にも見てもらえない時期もかなり長くあって。お客さんが0人で、音響の人と2人だけでライブをやったり、物販に誰も並んでいなかったり。そういうソロ活動を10年くらいやってきたので、今、自分の音楽を必要として聴きに来てくれる人がいることは、僕にとってすごく大事なことなんですよ。おこがましいかもしれませんが、僕らの音楽で、「つらい日々をなんとか耐えて生きている人」も少しずつ増えてきた気がしていて。そうであるならば、やれるところまで貫き通す責任があると思っています。今回のアルバムは、聴き手の存在を意識したことも大きくて、ライブ会場で完成するという感覚で書いた曲もいくつかあります。
──1曲目の「リコンティニュー」もまさにそんな楽曲ですよね。<もっと素直に笑いたい>というフレーズを観客が大声で歌っている姿が目に浮かびます。若い世代のアンセムになる曲だと感じました。どんなきっかけから生まれたのですか?
涼音当初は、「アルバムのリード曲、バンドの代表曲を作らなきゃ」と力が入ってしまいました。「他の7曲より1個上を感じられるいい曲を作らなければ」と考えていたんですが、結局どの曲も同じ熱量で書かないとアルバムの意味がないと思い直して、そこで吹っ切れました。現実的な話をすると、今の自分たちは不安定なところにいて、突き抜けて大きくなる可能性もあれば、結果を出せずにインディーズに戻る可能性も十分にあるわけです。「ならば、その現状を書こう」と思いました。 今本当に思っていること、これからどうしようかと考えていることなど、まだ行動に移していないことも含めて全部さらけだして形にしようと考えました。

リコンティニュー(Official Music Video)

──新しいフィールドに立った決意表明のようにも響いてきました。<それぞれ持って生まれた違いを 愛せればいいだけ>というフレーズも、多くの人に刺さると思います。
涼音普通に解釈すると、「前に進もう」という曲ですけど、そんな風に考えている自分を俯瞰して、「結局そうなのかい」という皮肉な面も入った二面性がある曲ですね。実はまだ足を前に踏み出していない。全部が願望で、「こう思えたらいいな」とか「なぜ行動に移さないんだろう」など、ぐちゃぐちゃした気持ちが詰まった曲です。
──そのぐちゃぐちゃした感情が、疾走感あふれるポップなバンドサウンドと一体となることで、エネルギッシュに届いてきました。さまざまな感情を多彩なサウンドで表現しているところにも、このアルバムの素晴らしさがありますね。
涼音アルバムの裏テーマとして、「ジャンル」や「年代」も意識しながら作りました。「リコンティニュー」は50年代のロックンロールをバックグラウンドに置いています。ロックンロールを聴くとワクワクするし、自分が主人公になったような感覚になれるので、その感覚を曲に付与したかったんです。"ザ・ロックンロール"ではないですが、サビの裏でベースや鍵盤にロックンロールを感じさせるものを入れてもらいました。
──この曲のイントロと、「バースデイ」のアウトロは同じフレーズですよね。
涼音まったく一緒です。使っているシンセの音も同じ。実はこの曲、レコーディングまでにアレンジが間に合わなかったんですよ。当日スタジオで一気に作っていたんですが、イントロだけ浮かばなくて。「バースデイ」のアウトロのフレーズがしっくりくるなとは思っていたんですが、1度使ったものを使い回すのはミュージシャンとしてのプライドが許さなかった(笑)。でも結局当日まで何も浮かばず、「アルバムだからこそできることではないか」というメンバーの意見に納得して、「どうせやるなら、まったく同じ音でやろう」と決めました。
──最後まで聴いていくと、冒頭に繋がっていて、また繰り返し聴ける構成でもありますよね。
涼音なるべくしてなったんだなと思います。レコーディングした瞬間に、1曲目と8曲目の順番が確定しました。

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