──大阪万博の韓国パビリオン1館のテーマ曲「Unity with Hearts」の担当、APECのメディアウォール映像音楽の担当、韓国・国立中央博物館展示連動コンサート『SAYU~思惟』公演の音楽監督など、2025年もワールドワイドな音楽活動を活発に行っています。
EXPOの韓国パビリオンに関しては、伝統とアートにおける現代テクノロジーを融合&伝える事が目的で、音楽と日常、テクノロジーと伝統要素をいかに取り入れるかがキーでした。入場前、入口で各国の入場者に「今世界に必要なもの」をキーワードで語ってもらいそれを取り込み、入館後取り込んだ言葉が再現されリズムを組み音楽に変わっていくという試みでした。国立中央博物館での『SAYU~思惟』公演は今年で3年目。毎回メインの超一級国宝文化財展示の独特な空間を音楽でどう表現するか、突き詰めていきますが、今年はオーケストラに伝統楽器も加わって総勢30名ほどとなり表現の幅が格段に広がり、演出や映像、ストーリー性も含め入念に作り込み、充実したものとなりました。
──話をうかがっているだけでも、とても大変な作業であることが伝わってきます。
歴史、宗教、ある面では政治的要素も絡んでくる可能性もあるのと、その一方、思惟するという行為は無限に広がる内面宇宙空間でもあるので、そこでの音楽に「シンプル&明確な答え」はないというのが実感です。人々はあの空間に行き、“ほほえみの御仏”と呼ばれる2つの半跏思惟像と対峙することで、自身の思惟の世界に入り込む。捉えどころがなく、ただ瞑想的な音楽でも相応しくない。最初に着手したのは2023年メイン曲を作るのに3か月かかりましたが、最終的にできあがったものは、そぎ落とせる部分を可及的そぎ落とした、ほとんど骨格に近いシンプルな要素たちでした。
──それが『SAU~思惟』の出発点となったわけですね。
そうです、その核を膨らませ曲を作り続けてますが、中心がしっかりしていればブレる事なく成長していきます。自分が恵まれている、ありがたいなと思うのは、3年という歳月、こういうテーマを続けてやらせていただけることです。 “探求し、育んでいこう”というスタンスを尊重してくれたことに感謝しています。
──考え続けるプロセスが重要なプロジェクトなんですね。
そうですね、絶え間なく考え作り続けていく過程の中に本質があるんだろうと思います。作っている人間たちもまた思惟し続けている。ボーッとしている時も脳は活動しているし、思考を意図的に停止することはできない、それぞれの人生でこの行為は無意識下で繰り返されている。捉えどころはないですよね、でもだからこそ魅力的で、歌詞のない僕の音楽でこのテーマ表現を試みる事にやりがいを感じます。ライフワークになりつつあるかも。
──確かにインスト音楽だからこそ、表現できることがありそうですよね。
インストでどこまで伝えられるのかという意見もあるでしょうが、僕はむしろ言葉の壁を乗り越えられる可能性があると捉えてます。
──韓国オンラインゲーム『AION2』の音楽も担当されています。
『AION』は、多くの人数が同時に参加できる韓国のブロックバスターオンラインRPGゲームです。2007年公開されましたが、当時『AION』の制作チームが僕のアニメ音楽を聴いてオファーをくれ、制作に入った経緯があります。僕といつも一緒だった、そして他界してしまったオリガもこのゲームで世界中にファンをたくさん作ることになりました。
──いろいろな仕事がそうやって繋がっていくんですね。
そうなんです、その時面白いオファーの仕方をしてくれました。当時、韓国でオンラインゲームはまださほど認知されてなく、今のような市民権がない状態でしたが、担当者は「ゲームというものをちゃんとした作品に作り上げたい」、だからここに来た、と。おもしろい話だと思い、参加を決意しましたが、始まってみると非常に壮大なプロジェクトでした。最初のレコーディングはロンドン・シンフォニー・オーケストラ75名とアビーロード・第1スタジオでレコーディング、その後も日本で大規模録音を重ねました。その『AION』が大ヒットし、20年ほど経ち『AION2』が大リニューアル、映画『アバター』の作曲者サイモン・フラングレンとの共同制作&共同作曲でオファーいただきました。今年初めロンドンで総勢100名超のオーケストラ録音をしてきました。
──制作と作曲はどのようなやり方で進めたのですか?
僕のオリジナル曲を僕自身で全くリニューアルさせることのほか、僕が作った2007当時のメイン曲モチーフをサイモンが取り込み&更に新しいものを加え、レコーディング現場を共にしながら必要な箇所は僕がピアノを弾き今回の「メイン曲」を完成させるという流れでした。作曲家個人との共同制作というより、彼の制作チームと共同作業するというイメージ。ビートルズのプロデューサー、あのジョージ・マーティンが設立したロンドンエアスタジオでレコーディングしたのですが、スタジオ施設内にサイモンが自分の部屋を持っていて、エアースタジオがホーム。そこに飛び込んで制作してきた訳です。ミュージシャン、エンジニア、そしてスタジオ一丸となって世界中のOST録音が毎日のように行なわれている環境(僕達の直前はMission Impossibleだった)。ロンドンでのオケ録音は10回を超えますが、今回とても刺激的でした。
──サイモンさんとのやり取りはどんな感じだったのですか?
彼はしっかりビジョンを持った上で、とてもフレンドリー。僕の音楽要素や意向を尊重し、「ここはこんな感じで、どうだろう?」と丁寧にコミュニケーションを取ってくる、配慮型の人物。彼のホームエアースタジオで、僕の曲レコーディング時にも色々助言してくれたり、やりやすかったですね。スタジオ含めたチーム全体が秀逸で、このスタッフでこの作り方しているから、こういう音になるんだと、納得でした。
──梁さんのお話をうかがっていると、さまざまな音楽制作をする中で、アウトプットだけでなく、インプットもしっかりされていることがわかります。
むしろインプットのほうが多いんじゃないかな。浜田さんやスタッフ皆さんとのやり取りも僕にとって大きなインプットだし、経験したさまざまなことが自分の音楽に戻って反映され、育っていくのが理想と思います。
──以前もおっしゃっていましたが、梁さんにとって、音楽制作とともにライブも重要な音楽活動の柱なのですよね。
最近はスタジオにこもって作業をしている時間が多くなっていますが、制作ばかりしていると、どこかおかしくなってくるので(汗)ライブ演奏することでバランス取れているんだと思います。ライブは僕にとって、作り続けてきたことが報いられる瞬間でもあります。作った作品の発表の場であると同時に、凝縮された思いやストレスも発散でき、みなさんと思いを共有できる場所でもありますしね。
──創作活動とライブ活動とがいいバランスであることで、相乗効果をもたらしているんですね。
僕としては、もう少しライブの時間を多く取れるのが理想なのですが(笑)。
──12月19日に開催される『Holly Piano Night Christmas Special 2025』、現時点でイメージしていることはありますか?
基本的にピアノソロの自由度の高さを活かしたステージにする予定です。去年とはまた違った形で、去年の品川以降〜今年、自分が蓄えたものをまとめ上げ自由に解き放って、観客のみなさんと一緒に楽しめたらと考えています。演出も含め、今年経験したことを活かすべく色々模索しているところです。
──クリスマスのタイミングでのスペシャルなライブであると同時に、1年間の総まとめ的なニュアンスもありそうですね。
クリスマスの時期って、自然に1年を振り返りますし、教会は自問するのにふさわしい場所でもありますしね。僕は教会という空間がとても好きで、音の響きも大好きです。品川教会はピアノを弾いた瞬間、もうホームに帰ってきた感があります。いろんな意味でスペシャルなコンサートになると思います。僕自身、とても楽しみにしています。
──2026年の活動について、予定していることはありますか?
僕は来年が一応、ソロ活動30周年になるんです。と言いつつ、まだノー・アイデアなんです(笑)。アイデアがしっかり固まってきたら、必ずお知らせします!
──30周年に向けて、特別な意識はありますか?
基本スタンスは変わらないですが、これまでの活動をもっと集結させていく感じになると思います。例えば、映像作品イベント音楽など含め、今まで演奏する機会のなかった曲がたくさんあるので、そうした曲も自分の中にしっかり取り込んでみるのもいいと考えています。そんな作業もしつつ、実りの多い30周年にしていけたらうれしいですね。
PRESENT
直筆サイン色紙を1名様に
※転載禁止
受付は終了しました







