皆さんと楽しく集まれる場所にちゃんと育ったらいいなと思ってます
──2028年のデビュー25周年に向けた新企画「Journey to 2028“Happy Go Lucky”」の開催が間近となりました。
わちゃわちゃしてます。数日後にリハが始まるからやばいなと思って焦ってます。2028年までの3年間、毎年7月と12月に恵比寿ザ・ガーデンホールでワンマンライブを開催して、リスナーと集まれる“ホーム”を作るっていう意図で始まって。今回がスタートになるので、何がどうやらっていうのもあるんですけど、せっかく楽しもうとしてやっていることなので、いずれ皆さんと楽しく集まれる場所にちゃんと育ったらいいなと思ってます。
──記念すべき第一回目ですからね。
きっとお客さんも何のことだろうし、チーム側も手探りでやっていかなきゃいけない。でも、『3年続けますよ』『ホームにしますよ』って言っても、フェスのオーガナイザーをやるわけではなくて。普通に自分らしく、ワンマンライブをそこでしますよということ。今はちょっと緊張したり、わちゃわちゃしちゃってるけど、この3年の中で落ち着いていって。普通にみんなで『毎年集まろうね』って腰を据えていけたらいいなって思ってます。
──立ち上げの際に「ライブを見つめ直すホームを持ちたい」とおっしゃってましたが、さまざまな表現の手段を持っている安藤さんにとって、ライブとはどんな場所ですか?
私、周りの人に『よく、ちょこちょこ歌ってるよね』って言われるんですけど、実際、あんまり止まるのが好きじゃなくて。休んでいる時もあったんだけど、その時は心が消えていくような時間だったし、あんまり停止っていうのが好きじゃないんですよね。だから、ちゃんとブランディング能力のある方だったら、自分の見え方とかも含めて、いつライブをやって、いつ制作するかがきっちり決まってるんだと思うんですけど、私はわりとフラフラしてて、「歌いませんか?」「いいですよ」みたいな感じで歌いに行っちゃうから、割といろんなところでちょこちょこ歌ってたりするんですね。
──引きこもって絵を描いたり、ものづくりに一人で没頭してるようなイメージを持ってる方も多いかもしれないんですけど、結構、数多くのステージに立ってますよね。
そうなんですよ。この2〜3年ぐらいは、地方の小さい会場でお客さんとの距離の近いアコースティックライブもやるようになって。それはね、やっぱり楽しいんですよね。あちらもリラックスして朗らかだし、こちらも普段通りの素でいられる。そういう、人対人みたいな場所になってるのかな。私はかつて、<ポップスは人が夢を見る場所だ>っていう教えに従って、エンターテインメントにまい進していたんだけれど、自分が音楽活動を休んで、新たに立ち上がろうとしたときに、自分自身が感じたり、楽しんだり、そのものを表していくことがないと、これは続けられないなって思ったんですよね。だから、そこでちょっと諦めがついたっていうか。自分をデザインして、プロデュースするってところは放棄したかなって思う部分もあります(笑)。だから、私が休んだ後に出会ったスタッフは私が素で行き過ぎてるから、『ちょっと黙ってください』みたいに言う人もいる(笑)。でも、もう私は演出めいたことはできないかなと思ってますね。
──じゃあ、ホームを作る今回のライブも素でステージに上がります?
うん。だから、夢の国よりは、人間として、音楽家として築いてきたものをみんなと一緒にセッションしていく感じになるかな。お客さんもその日の暮らしの流れの中で来ていただいて、リラックスして音楽を楽しんでいただけたらいいなというふうに思ってます。
びっくりするような曲がきて、アンケートって難しいなって思ってます(笑)
──セトリを決める前にはアンケートを取りましたよね。結果を見てどう感じましたか?
びっくりするような曲がきて、アンケートって難しいなって思ってます(笑)。前回はちょっと失敗したから……。
──デビュー15周年イヤーだった2018年5月に開催したライブ「長くなるでしょうからお夕飯はお早めに」の時は、リクエストの順位をもとにしたセトリを組んで、全24曲で4時間弱という長丁場になりました。
そう。だから、今回は5つのテーマに分けて募集したんですけど、とんでもない感じでしたね。いわゆる代表曲みたいなのがあって、の、シングルカットされた中ぐらいの曲もいっぱいあるわけじゃないですか。でも、それをすっ飛ばして、もう何十年も歌ってないし、楽譜もないような曲に票数が入ったりして。誰か示し合わせてグループで入れたの?みたいな。どうしてこの曲?みたいなのが入って驚きました。
──テーマごとの上位2曲は発表されてますね。
テーマごとに票数が全然違って。この<じゃない方曲ランキング>っていうのは恐ろしいもので、魔物でした。<じゃない方>って言っちゃったから、私、曲数だけ異様に多いじゃないですか。80曲ぐらいに分かれたんですよ!ちょっと80って異様じゃないですか。
──せめてカップリング曲とかにすれば。
そうなんですよ。<じゃない方>って言ったから、シングルカット以外何でもいいみたいなことになって、幅が広がりすぎて。だから、他のテーマだと、<じゃない方>の1位や2位よりも票数が多い曲もあって。総合ランキングにしたら全然ランク外なんだけどっていう曲をどう扱うかが難しいなって。あと、<動物を歌ってそうな曲>は、私は歌詞に鳥とかはよく入ってるから、そういう曲いっぱいあるかなと思ったら、動物っていうワードが強すぎたのか、1位がダントツの「森のくまさん」だった。そんなことあるかなと思って、それも驚きました。「鬼」とか「人魚姫」とか、妖怪系も入るのかなって思ってたんですけど、動物の捉え方って人それぞれだから。
──「The Still Steel Down」のジャケットが熊だったから、ここに入って欲しかった。
そういう曲とかね。ちょっと中堅で人気があるような曲がたくさんあったはずなんですけどね、それを飛び越えた曲が入ってました。
──<雨の曲>ランキングも意外でした。「僕を打つ雨」「雨月」「雨唄」「六月十三日、強い雨。」「雨とぱんつ」と人気曲が多いからなのか。
<じゃない方曲>とは逆に、1位と2位の票がすごく多かったですね。「僕を打つ雨」や「六月十三日、強い雨。」は、<じゃない方>の上位より全然票数が多いけど、ランキングだと1位2位には入らない。<星とか空の曲>は「夜と星の足跡 3つの提示」が一番多かった。全然歌ってない「青い空」も上位に入ってたけど、これも譜面はないんですよね。
──2003〜2006年の初期の曲が多くなってきますよね。
しかも、例えば、「夜と星の足跡 3つの提示」を歌うとすると、エンディング系の曲だし、7分越えの曲だから、どうしても入らない曲が出てくるんですよね。冗長になりすぎちゃうと、私の<2時間以内>という野望が打ち砕かれてしまう。だから、テーマ別ランキングを考慮しすぎると、王道の曲がなくなって、エッジが立ちすぎてるセトリになるんですね。梅井(美咲)さん以外は慣れ親しんでるバンドメンバーなので、急遽差し替えみたいなこともちょっとあるかなって思いながら、ひとまずエッジーなセトリを渡しつつ、今、どうしようかなと悩んでます。