有安杏果、2年連続2回目のビルボードライブツアーを振り返る。誕生日当日に開催の『サクライブ』は「経験がどういうふうにバンドアンサンブルに反映されるのかがすごく楽しみ」

インタビュー | 2025.03.04 12:00

「有安杏果 A Little Harmony Live 2025 ~Piano Note~」より

──一転して、アップテンポの「Runaway」ですが、ここに入れたのはどうしてでした?

全然意識はしてなかったんですけど、のちのちに自分の曲を見てたときに、「裸」と「Runaway」の歌詞の世界観やパワー、伝えたいメッセージが少し近いなって思って。いつかこの2曲をくっつけてやりたいなと思ってたんです。

──この2曲が伝えたい共通のメッセージというのは?

小谷さんにピアノを教えてもらったときに、直接アドバイスいただいた中ですごい印象的なのが、『サビの部分はとにかく強く弾いて』って言われて。あとは、『ひと言で言うなら<怒り>』って言われたんですよ。その日から譜面に<怒>っていう漢字を書いてるんですけど、それを見ると小谷さんに教えてもらったときのことをすぐ思い出せる。今思い返すと、『Runaway』を作ったのは、活動を再開して初めてのソロライブ『有安杏果 サクライブ 2019 ~Another story~』をやった後、『有安杏果 Pop Step Zeppツアー』を迎える間だったんですね。

「有安杏果 A Little Harmony Live 2025 ~Piano Note~」より

──当時、初のライブハウスツアー「Pop Step Zepp」に向けて作った新曲4曲のうちの1曲でした。

あのときって、あることないことをいろいろ書かれて、すごく大変だった時代なんですよね。今だからようやく少し笑って話せるんですけど、結構、きつかったときに、それでも負けないんだって思っていて。せっかく心強いスタッフさんやバンドメンバーがついて、Zeppツアーを回れるんだから、私は絶対に頑張るっていう覚悟があったし、ライブの準備に向けて強い気持ちでいた。そのパワーで作った曲だったので、怒りも自然と入っていて、また別の怒りかもしれませんがなんだか「裸」と近いものがあるかなと思って、このセトリにしました。

──その後が、今回の「Piano Note」に向けて作った新曲「Prelude」の初披露がありました。

本当に準備が大変だったんで、作るかも迷いましたし、作ってる途中も、もし最悪間に合わなかったら、ワンコーラスだけになるかもしれないと思ってて。それでも自分で作ってみたいって自然と思って。準備してるときにとにかく毎日ピアノをずっと触ってたので、その延長線上というか、ピアノを触りながら作った曲でしたね。

「有安杏果 A Little Harmony Live 2025 ~Piano Note~」より

──MCでは、「今しか出てこない、このライブに賭ける思いを込めました」と語った後、「音楽の道で頑張ろうと決心したものの、決して簡単な世界ではなくて。でも、諦めずに、自分のペースで歌い続けていきたい」と決意表明もしていました。

新曲はいつもそうなんですけど、作るときの心情や伝えたいことを込めていて。今回で言うと、初めてのピアノライブに向けての気持ちをそのまま乗せてる。特に今回、電子ピアノじゃなくて、大きいグランドピアノに対して、オクターブさえ届かないこの小さな手で闘うんだっていう。ライブの準備をしながら書いていたので、本当にライブに向かっていく心情が入ってるなと思います。

──<涙にも負けず、未来へのプレリュード>っていうフレーズが心に残ってるんですが、演奏後のMCで涙を拭いてました。何を思い出していたんですか。

そうだ!それまでは涙が出たことがなかったんですけど、横浜の2ndだけ、少し泣いちゃったんですよね。あの涙には、ふたつの理由があって。1つは、このライブに向けて準備しながら作ってた曲なので、たくさん準備してきた日々のことだったり、渡さんや小谷さんをはじめ、このライブを迎えるまでにたくさんの人が助けてくれたことを思い出して。でも、逆に、それを思い出したがゆえに、「なのに……うまくいかない」みたいな(笑)。現実はやっぱりそんなうまくいかないっていう、いろんな思いが重なって、思わずこみ上げてくるものはありましたね。

「有安杏果 A Little Harmony Live 2025 ~Piano Note~」より

──でもピアノ弾き語りという新しいチャレンジの中で、「今、私にとって一番新しい曲」が聴けたのは嬉しかったです。2022年のアコースティックツアーで披露された「夢の途中」も「オレンジ」と同様にピアノで作った曲でしょね。

そうですね。ようやくピアノでできたという思いがありました。ビルボードは曲数がどうしてもいつものようには入れられないので厳選しなきゃいけないんですけど、その中でも絶対に自分の中でやりたい曲から引っ張っていって。「オレンジ」と「夢の途中」は新しい自分の曲だし、ピアノで作ってるけどまだピアノで届けられてない曲だったので絶対にやりたいなって思ってました。

──そして、本編のラストナンバー「feel a heartbeat」はクラップも合唱も起きてました。

やっぱり「feel a heartbeat」が持つパワーはすごいなと思います。初めての横アリ(2016年7月。『ココロノセンリツ 〜feel a heartbeat〜 Vol.0』)の1曲目に歌った曲で、<スタートラインに立って>の歌い出しを歌うたびに、毎回、思い出すんですけど、あれがもう8年以上前になるんですよね。あの時、ここからがスタートラインだと思ってたんですけど、初めての弾き語りだったり、初めてのジャズだったり、今回も初めてのピアノライブだったり……。私、いつまでたってもスタートラインというか(笑)。

──いろんなスタートラインに立ってますよね(笑)。

そろそろね、これだけやってきてるから、もう<スタートラインに立って>っていう歌詞に共感できなくてもいいぐらいなはずなのに、私はまだスタートラインって毎回思いながら歌ってます。あははは!

「有安杏果 A Little Harmony Live 2025 ~Piano Note~」より

「有安杏果 A Little Harmony Live 2025 ~Piano Note~」より

──(笑)。すごい盛り上がりでした。そして、アンコールではビリー・ジョエル「ピアノマン」をカバーしました。

1曲ぐらいカバーをやりたいなと思ってて。せっかく英語も勉強してるし、ビルボードの雰囲気に合うかなと思って。ある意味ベタですけど、ピアノライブだから、ピアノに関連する曲で「ピアノマン」がいいかなと思って。いろいろ調べていくうちに、ビリー・ジョエルもうまくいかなかった時代があって、あの曲で売れなかったらもうやめようっていうぐらいの覚悟でやってた曲っていう背景も知って。私が書いた「Prelude」の思いとも重なる部分もあるなと思ったのと、MCでも言ってたように、バーにいろんな人生やいろんな夢を持ってるお客さんが集まるという歌詞の雰囲気も今回の会場にもぴったりだなと思ってやりました。でも、ずっと三拍子の曲は初めてだったので、練習中はどんどん速くなってっちゃって。メトロノームで強制したんですけど、新たな発見というか、課題曲になりましたね。

──MCでは20代最後のライブということにも触れてましたが、新しい挑戦に満ちた20代最後のライブはどうでしたか。

30歳になるから特に何かというのは考えてないんですけど、今回のピアノライブで、私はちょっと不安なことがあったんですよ。ずっと横向きだし、音数もピアノと歌だけなのに、お客さんは果たして本当に楽しんでいただけるのかなって。でも、最初にも言いましたけど、お客さんが本当に楽しんで、リラックスして聴いてくれてるのがすごく嬉しくて。これまで、いろんなスタイルで、いろんな音楽の届け方をしてきたけど、これからもいろんなスタイルのライブを楽しんでいただけたら嬉しいなと思ってます。

「有安杏果 A Little Harmony Live 2025 ~Piano Note~」より

「有安杏果 A Little Harmony Live 2025 ~Piano Note~」より

「有安杏果 A Little Harmony Live 2025 ~Piano Note~」より

──次は「サクライブ2025」ですね。バンド編成は全国8都市の予定が渋公の1公演のみの開催となった「有安杏果 サクライブTour 2020」以来、5年ぶりとなります。

「サクライブ」もできることなら毎年やりたいなと思ってたけど、バンドメンバーも会場も本当に取れなくて。だから、ようやくできるバンドライブっていうのは、私もすごい楽しみにしてるし、お客さんもすごい楽しみにしてくださってると思います。今は、本当に楽しみ!しか出てこないですね。

──渋公は声出し禁止で、人数制限もあったので、フルキャパとなると話に出た2019年7〜8月開催のライブハウスツアー「有安杏果 Pop Step Zeppツアー」以来かもしれないです。

やばいですね。それはお客さんもウズウズするわけだ(笑)。でも、その間に弾き語りをたくさんやって、デュオもやって、ジャズもやって。自分自身、その経験がどういうふうにバンドアンサンブルに反映されるのかがすごく楽しみです。あとは、毎回、そうなんですけど、今回もバンドメンバーがすごいので、しびれる緊張感の中で、いろんなことを感じられたらいいなと思いますね。

SHARE

有安杏果の関連記事

アーティストページへ

最新記事

もっと見る