45周年ということを前提に、最高のエンターテイメントができるように選んだセット・リストなので、手応えはバッチリですね。これから僕らが、余裕かまして、変なすけべ心を起こさない限り、大丈夫だと思います。
ライブハウスは自分たちにちゃんと実体があるかを試される場であり、剥き出しなものをぶつけないとダメな場
それも込みで45周年なんですよね。本格的にギアを入れる前に、自分たちにとって何か初めてのことをやることで眠っている細胞をもっと目覚めさせて、「ロックに対する初期衝動はどこから始まったんだっけ?」みたいな感覚を引き起こすということをやるのがいいだろうなという感じが僕の中にはすごくあったんです。その「何か初めてのこと」が初のライブハウス・ツアーというアイデアになったわけですけど、それによって自分たちの細胞を活性化させる、と。然るのちに本格的にギアを入れていく、という流れにしようと考えたわけですが、それを実際やってみたらうまくいき過ぎちゃって、必要以上に活性化しちゃった感じもありますね(笑)。ドキュメンタリーも撮ってたんですけど、その仕上がりもすごく良かったから。変に構えることもなく、そのままホール・ツアーに入っていけました。
「最初から本格的なホール・ツアー」ということで始めると、変に構えが大きくなってしまって、それは良くないなと思ったんです。“頭はクールで、でも身体はホットに”というほうがいいですよね。だから、構えを大きくして変な力みが出ないようにしたいなと思っていたんです。そういう意味では、ドキュメンタリーの撮影クルーが追いかけているライブハウス・ツアーという構えが非常に良かったんじゃないかなと思います。
とんでもなく狭いところから、「これ、ホントにライブハウスなの?」というところまで、大、中、小、いろいろやったんですけど、そのことが余計に良かったんじゃないですか。広島や福井は、本当に小さかったんです。びっくりするくらいだったんですけど、そういう規模というのは実は自分たちにちゃんと実体があるかどうかということを試される場だったりするんですよ。自分たちに信じているものがあるのかどうか、自分たちがやっている演奏やスタイルに実体があるのかどうかということを非常に試される場なんです。それは、わかりやすく言い換えると、45年やってきたにもかかわらず、ある意味で剥き出しなものをぶつけないとダメな場であるということなんですよね。そういうところでやったことは、お客さんにとってはすごく面白かったと思うし、僕ら自身もやって面白かったですよね。
ホール・ツアーを前提に、そのスケールに見合うような曲を選んでいきました
ライブハウス・ツアーをやる前に『サーカス&サーカス2019』というライブ・ベストを出したんですが、それはその後に続くライブハウス・ツアーの規模感を想定して作ったんです。つまり、「武道館クラスの曲をそこに入れても、ちょっとね…」という感じになるわけじゃないですか。だから、ライブ・ベストとは言いながらも、そういうことも考えあわせて選曲したんですが、今度はホール・ツアーを前提にしたベストですから、そのスケールに見合うような曲を選んでいきました。
なぜこんなことを正直に言うかというと、ライブハウスであまりスケール感のある曲をやると客の頭の上を飛び越しちゃうんですよね。だから、ライブハウス・ツアーの時は特に規模感、スケール感ということはすごく意識しながら選曲しました。しかも、CDについてはライブ・ベストだったから、どこで収録した音源を入れるのがちょうどいいのかということも考えるわけです。例えば「花園ラグビー場がいいとは言っても…」みたいなことがあるわけですよ。だから、いろんなところのライブからピックアップしてるんです。対して、『HEROES』はオリジナル・テイクから選びますから、違う意味で慎重に考えました。70年代や80年代に録音したテイクも入れるわけだから。しかも、新録音が2曲、リミックスも1曲入るということになると、ずいぶん時代の違う音源がいっしょに並ぶことになってしまうので、音のクオリティーに変な差がつかないように考えたし、マスタリングを、ジョン・デイヴィスという、U2をやったりレッド・ツェッペリンBOXをやったりしている、今最高のマスタリング・エンジニアと言われている人物に依頼したのも、そこを考えてのことなんです。結果、70年代、80年代の音源もまさに今の音になっていますよね。
そうですね。後半の「今から盛り上がりますよ!」という、その入り口になってますよね。
それは、ずっと僕の中にあったんですよ。あの歌詞は、大森信和が倒れる前に書いたんです。1996年に「Big Night」というプロジェクトを始めるにあたって久しぶりに長く会って話した時、彼が体にちょっと具合の良くないところを抱えていることを知りました。そのこともあったから、あの曲を書いたんです。つまり、大森信和に向けて書いているようなところもあるんですよね。ただ、その「ティーンエイジ・ラスト」は、『Big Night』というアンプラグド・アルバムを作った時にシングルとして出したんですが、それは僕が思っているような仕上がりじゃなかったんですよ。ちゃんとロックではあるんだけど、僕が思っていたよりはちょっと淡白というか、今から思えば90年代半ばの音というか、そういう仕上がりだったんです。もう少し粘っこい、サウンドの核みたいなものが入り込んだほうがいいなと、ずっと思ってました。それで今回は、45周年だからもっと派手な仕上がりにしたほうがいいというふうにも思ったので、トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズ的なテイストを意識しながら全くアレンジし直して、新たにレコーディングしました。ただ間奏は、オリジナル・テイクで大森信和と田中一郎がツイン・ギターで弾いてるのをそのまま持ってきました。そういうところに45周年的なテイストを入れ込んでいるわけです。
そうですね。リミックスした「三つ数えろ」も、ベースになっているのは『Big Night』のテイクですが、それをより派手にするために田中一郎が間奏をインサートして、エンディングには僕のハープを加えています。それも、実際のステージの展開として、中盤以降を一気にヒートアップさせていくことをイメージしてのことです。