僕は今50歳目前のネットも携帯もなくレコードからCDに移行し始めた80年代が青春真ん中だったおっさんだが、その当時いつも60~70年代にコンプレックスがあった。
理由はひとまわり上のロックを教えてくれたロック先輩のお兄さんに「今のロックはダメだ」と当時言われ続けたからだ。
ロック先輩と同じく、ロックが開花した60~70年代に青春を生きた当時の音楽評論家達も、評価するアーティストはいるものの基本的には「ロックはダメになった。昔は本物が沢山いた」的な事を書いてた気がする。
そして音楽雑誌とそのめんどくさいロック先輩しかメディアを持ってない田舎のアホなロック少年だった僕は「昔は凄かったんだ、今はそんな面白くないんだ」と真に受けてしまったのだ。
ビートルズやツェッペリンをリアルタイムで聴いてきたそのロック先輩達の前でパンクやテクノやニューウェーブが好きというとバカにされると思い口を閉ざしてしまったのだ。
そのロック先輩と先日飲んだ時、酔ったロック先輩はこう言った。
「80年代はロックが最高の時代だったよな。」
お前が言うな。
遅えんだよ。
オレの80年代をお前が今頃ホメてんじゃねえよ。
「もう大人は絶対信用しない」。
49歳の僕はその時、固く心に決めたのだった。
ロックに限らず世の色んなカルチャーで、昔生まれたものを勝手に美化し重要視する人は多い。
そうしないと自分の言ってる事とその歴史のつじつまが合わなくなるからだ。
今や最大の革命だったとも言われるピストルズなどパンクが出てきた時も、評価する人は一部(ホント一部だけ)いたが、その後に出てきたテクノやニューウェーブのメディアの扱いはホントにひどかった。
その頃始めてその名前が生まれそう呼ばれ始めた“ヘビーメタル”なんかもっとひどかった。
でもそのニューウェーブの中からU2やポリスやスミス、そして亡くなってしまった我らがプリンスが現れた。
80年代後半から90年代初頭。パンクもメタルも古いロックも全部呑みこんだガンズやレッチリやニルバーナが大ブレイクしたくらいからやっと誰も新しいロックに文句を言わなくなってきた。
そして30年くらい経った今、音楽もファッションも80年代カルチャーは本気リバイルしてしまい、メディアもあんなにバカにしてた80年代を「文化的に最も面白かった時代」とか今頃になって言いやがる。
シラける。
大人や上の世代の言う事なんかホントいつも適当だ。
いつだって自分がいいと思うものを信じてればよかったんだ。
今頃になってつくづくそう思う。
10代20代のロックファンの皆さん。
大人や諸先輩方の言う事は一切信用しなくて大丈夫です。
今バカにしてる大人達もいつか手のひら返したように必ずみんな褒めはじめるでしょう。
絶対に今が一番面白いです。
いつだって。
横山シンスケ
49歳。お台場のイベントハウス「東京カルチャーカルチャー」店長・プロデューサー。その前10年間くらい新宿ロフトプラスワンの店長やプロデューサー。若い世代と飲むたびに「大人を絶対信用するな」と説教をはじめいつもウザがられている。