杉作J太郎の音楽電気風呂 第1回 鶴田浩二、遠藤賢司、近田春夫、五木ひろし・・・杉作J太郎を魅了したシンガーたち 「五木ひろしは映画にしたら面白い」

コラム | 2016.04.23 18:00

J太郎MV

杉作J太郎、音楽との出会いを語る

最初の音楽との出会いは、自分でお金出して買った漫画以外のレコードで言いますと、鶴田浩二の「傷だらけの人生」だったと思います。小学生で買ったヤツはほとんどいないと思いますけど。

昔はね、子供の娯楽っていうのがなくて、子供専門の娯楽は漫画くらいしかないから、漫画から一回ハミ出ると、もう鶴田浩二の世界ですから。東映の仁侠映画にもなりましたからね(東映の映画『傷だらけの人生』『傷だらけの人生 古い奴でござんす』は本楽曲を映画化したもの)。「好いた惚れたとけだものごっこが まかり通る世の中でございます」、こんな歌詞を小学生の時聴いて喜んでいました。

鶴田

洋楽はビートルズでしたね。友達とレコード交換して貸し借りをしていたんですけど、ある日、自転車の荷台に縛り付けておいたら曲がっちゃって。その曲がったレコードを見て、ちょっと僕は洋楽が嫌になったんですよ。でも自分で買ったのは、ビートルズと、サンタナくらいかな。

で、中学くらいの時に、いよいよ“好きなアーティスト”っていうのが出てきて、僕は遠藤賢司さんでした。もう夢中になりましたね。いわゆるフォーク時代でした。そう言えばこの間、中学時代のカセットテープが出てきて、何だろうと思って聴いてみたら、「吉田拓郎のオールナイトニッポン」なんです。で、吉田拓郎さんが「えーそれでは次のハガキです。愛媛県の杉恭介君から」って(笑)。僕もう忘れていて、「うわぁ、恥ずかしい」と思いながら聴いていたら、「おい!拓郎、聞いてくれ!」って。あの拓郎さんを呼び捨てにしてましたよ。聞くのをやめました(笑)。怖くてそれ以上聴けなかったですね。ちなみに当時拓郎さんの曲をよく練習していました。

そして二十歳くらいの頃、テクノポップとニューウェーブブームになるんですよ。相当レコードを買いましたね。今でいう、グンジョーガクレヨンとか突然段ボールとか。ヒカシューとかよく観に行きましたね。僕近田春夫さんが好きだったんですよ。近田春夫&ハルヲフォンが好きで、ライブ見に行った時は、近田春夫&BEEFだったんですよ。最初見た時は、ヒカシューの前座をやっていて、ヒカシューの前座に出てきたから、「あー近田春夫さんが前座やるんだと思って」驚きました。当時はメタルが流行っていたので、あまり周囲にテクノ好きはいませんでしたね。

近田

その後は演歌にハマりましたね。これはかなり集中してハマったんですよ。もう演歌にしか興味なくて相当レコードを買いましたね。30歳くらいです。演歌の知らない人のコンサート行ったりして、その人たちがようやく、今になって「紅白に出るかな」とか言われています。

「何で演歌?」って聞かれるんですけど、誰も知らないことに興味があったんですよ。特に演歌はその傾向が一番強い趣味だったと思いますね。当時、曲調も面白かったんですよね。一時期のポップスとかロックの人たちが演歌の作曲家に入ってきて、曲調がモダン寄りになっていたりと、ポップな要素もあったんですね。

石川さゆりさんとか八代亜紀さんとかすごいですからね~。あと、五木ひろしさんも相当ギターうまいですよ、あの人。信じられないくらい上手で、あと、英語の歌も全部歌えるんですよ。五木ひろしさんは本当に凄いと思います。松方弘樹さんから、五木さんの事を聞いたことがあって、松方さんは昔歌手になりたかったんですよ。音楽の勉強をしていて、演歌歌手の先生・上原げんとさんに内弟子に入ったんですが、その内弟子で同期だったのが五木ひろしさんなんですよ。で、五木さんがあまりにも上手いんで、松方さん「五木には勝てない」と思い音楽を諦めて京都に帰って役者になったそうですよ。でもそんなすごい五木ひろしさんでさえ、名前を5回も変えないといけなかったくらい芸能界は厳しいんですから。五木ひろしさんは映画にしたら面白いでしょうね。

五木

戦国時代の三国志みたいな話だと思うんですよ。五木さんと松方さんが同じところにいたり、五木さんと八代亜紀さんも同じ店にいたんですよ。全く二人とも無名で売れない時にね。五木さんが一番最初にレコードを出した時は、八代亜紀さんが相当買ったそうですよ。同僚の五木さんをスターにしたくて。

そうそう、五木さんの凄い話が、昔10週連続で勝ち抜いたら歌手になれる『決定!全日本歌謡選抜』という番組に出演した際に、五木さんは「落ちたら歌手やめよう」と思って出演したんですって。でも、5週目くらいに、「五木があまりにも凄い」と審査員も納得したようで、まだ優勝もしてないのに、審査員全員で曲を作り始めていたそうです。だから10週経った時には曲ができているんですよ(笑)!それで五木さんのレコードが出ることになって、クラブでの活動を辞めるんですけど、その時に八代亜紀さんに言ったそうですよ。「後を追いかけてこいよ」って。そしたら八代亜紀さんもその後10週勝ち抜くんですよ!すごい壮絶な物語ですよね。

その後はジャズにハマりましたね。ブルーノートにハマったんですよ。これも相当聴きました。なんの知識もないから、片っ端から買っていくしかないんでね。でも、アイドルの原稿依頼は来ても、ブルーノートの原稿依頼は来ないですね(笑)。僕は人生が一回しかないから、知らないまま死ぬのが嫌なんです。それでジャズもたくさん聴きました。

■参照リンク
五木ひろし 公式サイト

(第2回に続く 4月30日掲載!)

杉作J太郎

男の墓場プロダクション局長、現代芸術マガジン編集長、東映チャンネル放送委員、映画「チョコレートデリンジャー」製作中!著書「ボンクラ映画魂完全版」発売中(徳間書店)