【夏フェスのススメ】今年の夏フェス、何が違う?「コロナ前に戻る」のではなく「新しい夏フェス」爆誕の予感!

コラム | 2023.06.21 17:00

コロナ禍を乗り越え、新しいフェスや4年ぶりとなる大型イベント開催なども発表された2023年。いよいよ本格的な夏フェスシーズンが戻ってくる予感!
そこで、「今年は初めてフェスに行ってみようかな」という方はもちろん、すでに「フェス=夏の恒例行事!」という方にも、ぜひ読んでいただきたい「夏フェスのススメ」コラム連載です。
第3回は、2023年の夏フェスは一味違うぞ、というお話です。
(DI:GA ONLINE編集部)

GW、久々に声出し解禁となったフェスに参加した。
そこでは、アーティスト達がステージ上で存分に客席を煽り、会場もまたそれに応え、互いに炎を焚きつけ合うようにボルテージを上げていた。周りを見渡すと、ある人はアーティストとともに歌い、ある人は揺れ、ある人は目を閉じて、ある人はフェンス最前で身を乗り出し、ある人は後方でゆったりと座り込み、各々のやり方で自由に音楽を楽しんでいる。
コロナ前ではありきたりの、けれど実際に目の当たりにするのは4年ぶりの光景に、一瞬まるで白昼夢を見ているかのような気分に襲われた。
そして改めて、ひどく新鮮な気持ちで思い出したのは、ライブってステージと客席の双方向のコミュニケーションだったな、ということだった。

ライブでこそ真価を発揮するアーティストがいる。
彼らは縦横無尽にステージを駆け回り、思い切り会場を煽り、コール&レスポンスを求め、歌い方や歌詞をアレンジし、叫び、会場の温度を天井知らずに上げていく。そのエネルギーは、音源で聴くのとはちょっと比べ物にならない。そういうステージを一度見てしまうと、もう一気に心囚われて戻れなくなってしまう。音源を聴くのではもう物足りなくなって、「次はワンマンへ」と欲が深くなっていく。

フェスにはそういう音楽との出会い方がある。例えばお目当てのアーティストの出演のすきま時間。午後に疲れてたまたま座った場所の近くで行われたステージ。なんの興味もなくぼんやり眺めていたはずなのに、気づけば立ち上がり、ステージに一歩二歩と近づき、拳を突き上げちゃっている。それで、帰りの電車でお目当てだったはずのアーティストなんてそっちのけで、そのアーティストの曲を調べまくっていたりする。

コロナ禍においても、ライブやフェスが完全に死滅していたわけではない。さまざまな制限のなか、おのおの試行錯誤しながら新しい楽しみ方やコミュニケーションの取り方を模索していた。それで新しい表現を獲得したアーティストもいるし、観客の方も順応し始めてきていたと思う。
ただ、声を出し合って高め合うステージのその天井知らずの熱量を目の前で見てしまうと、やっぱり「これがライブで、これがフェスなんだよなあ」と思わされる。ああ、やっとここに戻ってきたんだなあと。いわゆる「コロナ前に戻ってきた」というやつだ。

戻ってきた、と書いたものの、そもそもそういうライブならではの感覚をまだ体験したことがない、という人も増えているだろう。コロナ禍に突入してから音楽に積極的に触れるようになったり、ライブに関心を持ち始めた人にとっては、ライブとは画面越しの配信だったり、声を出さず、観客同士の距離感があってしかるべきもので、自分から叫んだり歌ったりするステージは未知のものかもしれない。
そしてそれはアーティスト側も同じ。コロナ禍にデビューしたアーティストなどにインタビューすると、「声出しライブをしたことがない」「自分のファンを直接見たことがない」と回答されることがしばしばあった。
彼らにとってきっと今年の夏フェスは、「戻ってきた」ものではなく、「初めて出会う」ものなのだ。

コロナによって、一部の音楽シーンは停滞を余儀なくされた。ライブハウス中心に活動するバンド系のアーティストはその最たる例だろう。
だが、その反面、成長が加速したシーンもある。顔出しをしないアーティストや、ライブでの再現性を度外視したからこそ生みだされたメロディ、ダンスヴォーカルグループによるパフォーマンスを「見る」音楽などだ。
この4年は、そういうまだ新しい音楽たちが一気に頭角を現し、チャート上位を席巻し、メジャーシーンを彩るようになってきた期間でもある。そしてそんな彼らが、初めて元の形式の夏フェスに足を踏み入れるのが、今年なのだ。

今年の夏フェスは、オンラインから生まれ、これから本格的にライブに打って出るニューカマーと、ライブこそを主戦場としてきたアーティストとが交わる潮目だ。そしてそのステージを、本来の形でのフェスをずっと待ちわびてきた人と、今回初めて体験する人が入り乱れながら見上げることになる。もしかしたらそこには、今までにはなかったコミュニケーションが生まれるのかもしれない。そのなかで秘めたる「ライブ力」を発揮し、最高潮の熱量で会場の関心をかっさらうのは、もしかしたらフェス初参戦の誰かかもしれない。
フェスも音楽シーンも、「コロナ前に戻っていく」のではない。今年はきっと、「新しい夏フェス」が始まる年だ。

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