フジジュンのライブ終わったら、ど~する? #10 「心の何処かで求めてる、辟易とした日々を忘れさせてくれる場所。 それがライブハウス!(あとサウナ)」

コラム | 2022.12.16 18:00

Photo:にしゆきみ

Calmeraのロックンロール・キャバレー in 東京
2022年11月11日(金) 東京キネマ倶楽部
ゲスト:逹瑯(from MUCC)

仕事とプライベートを合わせて、年間約120本のライブを見ているフジジュン(おもしろライター)。基本、ぼっち参戦の筆者がライブ終わり、余韻を残したままにどんな過ごし方をしているか? を報告する連載。「このライブハウス行くなら、帰りはここがオススメ!」など、みなさんのおすすめの過ごし方も募集します! 今日ライブ終わったら、ど~する?

年間100本(今年はコロナ禍もあって、12月10日段階で101本)以上のライブを観戦してる僕。嫌いなライブハウスは思い浮かばないけど、好きなライブハウスは幾つかあって。それには見やすいとか、音が良いとか、行きやすいとか、街が好きとか、理由が幾つかあるけれど。見やすくて会場の雰囲気が良くて、街が好きとか、多くのチェックポイントをクリアしてる、好きなライブハウスランキングのかなり上位に位置してるのが、鶯谷の「東京キネマ倶楽部」だ。

会場の歴史を調べてみると、昭和の時代に人気を博したグランドキャバレー「ワールド」だった施設を利用して、2000年に無声映画上映レストランとしてオープンしたのが「東京キネマ倶楽部」。大正時代のオペラハウスをイメージしたモダンな内装も好まれ、パーティーやイベントでも利用されているが、2001年からEGO-WRAPPIN'が「Midnight Dejavu」を毎年末に開催するなど、多くのアーティストに愛され、コンサート利用が年々増えてきたそう。

そして、キネマ倶楽部が立地する、鶯谷駅という街。駅を降りると信じられない数のラブホテルが並び、猥雑な雰囲気が漂うこの街だが。ついでにその歴史を調べてみると、上野にほど近いこの街はその昔、上京してきた出稼ぎや集団就職の人に向けた旅館街だったそうで。それが時代の変化と共に、ラブホテルへと変貌していったのだそう。へぇ! 普段は訪れる用事のない鶯谷の街を、ライブ前後に探検する楽しさもキネマ倶楽部が好きな理由のひとつ。

キネマ倶楽部に行く時は早めに家を出て、あえて会場から遠い北口で降りて。ラブホテル街や言問通りを探検して、喫茶店で一服してから会場に行くのが定番なのですが。駅前にある昼飲みの聖地「居酒屋 信濃路」や、立ち飲み客が路上まで溢れてる「焼き鳥 ささのや」と言った飲み屋を覗いてみたり、用もないのにラブホテル街をうろついてみたりして。街を歩いてるだけであんなにワクワクするのは、怪しくも懐かしい街並みに好奇心や冒険心と共に、退屈な日常を忘れさせてくれる非日常感を求めているのかも知れない。

そんなキネマ倶楽部でこの夜、行われたライブは「Calmeraのロックンロール・キャバレー in 東京」。“人々の心の飢えが高まった時、蜃気楼の様に現れる神出鬼没の幻のキャバレー”をコンセプトとした、Calmeraのシリーズライブ。キネマ倶楽部は、演者を選ぶというか。独特な会場の雰囲気もあって、色んなアーティストのライブを見ると、あのモダンでゴージャスなステージに似合う人と似合わない人、つまり選ばれし者と選ばれない者がいる気がするのだが。Calmeraは、圧倒的に選ばれし者。“キャバレー カルメラ”のネオン看板が灯り、真っ赤なスーツ姿で揃えたメンバー8人が登場。ステージが一気に華やかになり、1曲目「赤い蟲」の派手なジャズサウンドでショータイムの幕を開けると、熱気と幸福感が会場を包む。お~、カッコいい!

撮影/東美樹

明るく激しく、怪しくスリリングに。ライブ序盤から高級キャバレーのホステスのように、観客の心を巧みに翻弄し、観客を自身の音楽世界の奥底へと誘ったCalmera。ライブ冒頭で、「私たちは心の何処かで求めているのだ。辟易とした日々を忘れさせてくれる場所を」と、ライブコンセプトを説明するナレーションが流れたが。そこはまさに辟易とした日々を忘れさせてくれる、夢の場所だった! さらに「特別な夜をさらに特別なものにする、スペシャルゲストをお招きします!」とステージに呼び込んだのは、この日限りのゲストボーカルとなる、逹瑯(MUCC)。

撮影/東美樹

「ビジュアル系が来たよ!」とおどけながら、圧倒的存在感を放ち、観客の視線を一点に集める逹瑯。その立ち姿を見るだけで、逹瑯も選ばれし者であることが一目瞭然。MUCCの「XYZ.」でCalmeraとのコラボステージが始まると、ジャジーな演奏に乗せた逹瑯のウェットで色気のある歌声が会場を包み込み、ホーンの響きが楽曲に奥行きと広がりを加える。逹瑯とCalmera、絶対に相性が良いと思ってたけど、実際に目の当たりにしたら想像以上! 会場の雰囲気と抜群にマッチした極上の歌謡ショーに、観客がうっとり酔いしれる。

独自の解釈と節回しで逹瑯らしさ全開だったRCサクセション「スローバラード」のカバー、自身のソロ楽曲「エンドロール」と続き、MUCCともソロとも異なる多彩な表情を見せる逹瑯に、「逹瑯くんを呼んで、やっぱり間違いなかった!」と西崎ゴウシ伝説(Agitator, Tp, Gt, Per)も大興奮! ここでしか見ることの出来ない一夜の夢に観客も大満足する中、逹瑯は颯爽とステージを去っていった。

撮影/東美樹

ダンサブルな曲調にメンバーがステップを踏み、会場中で手振りを合わせた「SUNSET DRIVER」で始まった後半戦は、「BLOW-UP」、「FLAMINGO」とみんなで盛り上がれる曲が続き、ゴウシがホイッスルを鳴らして、お祭り騒ぎ。まだ、声出しは出来ない状況だけど、合唱や歓声以外にも盛り上がる術はいくらでもある。ラストは「ロックンロール キャバレー」のエネルギッシュな演奏に♪燃えろお前の元気ギンギン! と心の大合唱を合わせ、最高潮の盛り上がりを見せる中でフィニッシュ。楽しかった!!

▼ライブレポート本編はこちら

ライブが終わって会場を出て。街の喧騒に包まれると、本当に夢の中にいたような、ふわふわした気分になったが。Calmeraのライブでテンション上がって、わりと忙しかった一週間のことを忘れて、燃えろ俺の元気ギンギンになってることにも気付いた俺。「ライブ終わったら、ど~する?」と考えた時、せっかくだからもっと心も体もヒートアップさせて、元気ギンギンになってやろうと、キネマ倶楽部のすぐ近くにある、とあるお店に向かうことに。

向かった先は、キネマ倶楽部から徒歩3分にある、「サウナセンター」。サウナ好きにはよく知られた名店であり、僕が鶯谷が好きな理由のひとつでもあるお店。昭和レトロなロゴがカッコいい看板に引き寄せられるように入店し、受付をすると「今日、混んでるよ」と店員さん。週末だし人気店なので、多少混んでることは想定内と受付を済ませて、さっそく浴場へ。体を清めて、軽くひとっ風呂浴びて、いざサウナ室へと入る。確かに少し混んではいるけど、サウナ室も広いのでさほど気にならず、95℃の熱めのサウナをしっかり堪能。サウナ室のテレビでは、何やら邦画が流れてて。途中から見たから内容もよく分からないけど、石原さとみの綺麗さに見とれてたら、いつもより少し長めに入っていた俺。たっぷり汗をかいて、水風呂へ。ちなみに後から調べたら、「そして、バトンは渡された」という映画だったみたい。

サウナを出て、キンキンの水風呂に浸かって、ととのい椅子に深く座る。軽いととのい状態に入りながら、「あ~、Calmeraのライブ良かったな~」なんて薄ぼんやり思い出してると、「考えたら、ライブハウス出て、まだ20分くらいしか経ってないのに。サウナ入って、全裸でぽけ~っとライブの余韻に浸ってるとかいって、すげぇ贅沢だな!」と思い、嬉しくなって顔がニヤけてしまう。しっかりサウナを3セット堪能して、心も体もスッキリしたところで、食事処へ。このお店の名物はハムエッグ定食と生姜焼き定食。隣の人が食べてる、お一人様用のもつ鍋定食も美味そうに見えるけど。サウナ入ってお腹がぺこぺこだったので、ここは生姜焼き定食を注文。瓶ビールやって、ちょっと味濃いめの生姜焼き食べて。至福の時間を過ごした俺は、心も体もぽっかぽかでサウナセンターを後にする。

「私たちは心の何処かで求めているのだ。辟易とした日々を忘れさせてくれる場所を」

帰り道、先述したライブ冒頭のナレーションが頭に反芻する。少なからず、誰もが仕事や生活に追われ、辟易とした日々に心を疲弊させながら、毎日を頑張って過ごしてる。わりと自分の好きなことがやれてて、ノンストレスで能天気に見える俺だって、多少は悩みながら苦しみながら生きてる。そんな頑張ってるみんなの心の飢えを癒やして、その瞬間だけでも元気ギンギンにしてくれるのがライブという存在。あと、サウナ(笑)。

毎日頑張ってる自分へのご褒美に、たまには大好きなアーティストのライブに行って、美味しいもん食べて。「明日も頑張ろう!」つって、シンドいばかりの日々と上手く付き合っていけたら良いなと改めて思う。コロナ禍でずっと我慢してた人も、そろそろライブ参戦を再開しても良いんじゃない? ちなみにサウナセンターの帰り道、ほくほくの気分でスマホを開いたら、昼間に上げた原稿の修正依頼のメールが来てて。家に帰って、夜中まで原稿修正させられた俺。頑張るのは、明日からにして欲しかったな~。ぴえん。

PROFILE

フジジュン

1975年、長野県生まれ。『イカ天』の影響でロックに目覚めて、雑誌『宝島』を教科書に育った、ロックとお笑い好きのおもしろライター。オリコン株式会社や『インディーズマガジン』を経て、00年よりライター、編集者、デザイナー、ラジオDJ、漫画原作者として活動。12年に(株)FUJIJUN WORKSを立ち上げ、バカ社長(クレイジーSKB公認)に就任。メジャー、インディーズ問わず、邦楽ロックが得意分野で、笑いやバカの要素を含むバンドは大好物。

  • フジジュン

    TEXT・撮影

    フジジュン

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