劇団☆新感線の新作舞台「ONWARD presents 新感線☆RS『メタルマクベス』disc1 Produced by TBS』」(7月23日~8月31日)の公開ゲネプロが22日、IHIステージアラウンド東京(東京都江東区)で行われた。
「メタルマクベス」は、ハードロックとヘビーメタルサウンドに乗せてシェイクスピアの「マクベス」を描いた作品で、脚本家など幅広く活躍する宮藤官九郎が脚本を担当。2006年の初演時には、当時めずらしかったLEDなどを用いた演出が話題を集めた。12年の時を経て、宮藤が書き下ろした脚本は、2218年の衰退した世界と、空前のバンドブームに沸いていた1980年代の日本を舞台に、2つの時代を行き来しながら物語を構成。360度回転する円形の観客席の構造をいかし、物語に合わせて客席が移動。シーンに合わせて次々に変化するステージアラウンドシステムを用いた舞台では、巨大スクリーンも駆使しダイナミックに進化した演出で1300人をわかせる。
物語の始まりは2218年。長い戦争が続く世界で、ESP国の無敵の将軍・ランダムスター(橋本さとし)が、3人の魔女から「あなたはマホガニーの領主になり、そしていずれは王になる」と予言され、1枚のCDを手渡されるところから展開していく。
受け取ったCDは1980年代に人気を集めたヘビーメタルバンド「メタルマクベス」のデビューアルバム。魔女に手渡されたジャケットの写真をよく見ると、ボーカルのマクベスはランダムスターに。バンクォーは、長く共に戦ってきた盟友・エクスプローラー(橋本じゅん)にうり二つだった。
ランダムスターが帰国すると、マホガニーの領主は軍を裏切っていた罪でレスポール王(西岡徳馬)の命令で処刑され、魔女の予言通り領主の地位を手に。愛する妻(濱田めぐみ)に魔女とのいきさつを話すと、「王を暗殺しよう」とたきつけられる。
「じゃまな息子も葬り去ろう」とレスポールJr.(松下優也)が愛用する短剣をひそかに盗み、その剣で王を殺すことを考案。罪をなすりつけ、王の座を奪うことを決めたふたりは、月夜の晩に計画を実行する。
変わり果てた王を発見したグレコ(山口馬木也)は不穏な空気を感じ、レスポールJr.をなんとか城から逃がす。王の葬儀を終えたランダムスター夫妻は念願の王座を手にするが、罪の意識にさいなまれ眠ることができなくなってしまう。
一方の1980年代の世界では、メジャーデビューを果たし順風満帆に見えた「メタルマクベス」だったが、ヘビーメタルブームが去ると同時に、その人気にも陰りが。焦燥にかられたマクベス(橋本さとし)は徐々に精神を病んでしまう。栄光と挫折。別の世界を生きていた両者の会話が徐々にシンクロし、破滅への道を疾走していく。
ロックバンドが、生演奏する舞台では、21年ぶりに古巣に戻った橋本さとしが、「きれいは汚い、ただしオレ以外」、「スコーピオンハート」などを熱唱。大人数を相手に殺陣を披露するほか、流れるように変化する舞台上で、バイクにまたがり、客の前を疾走するなど迫力満点だ。
シリアスな場面でぐっと引き込みながら、変顔をしてみせるなど噴き出すシーンもたくさん。2218年では王子を演じた松下が、1980年代ではレコード会社の息子を演じるなどコミカルな演技も必見だ。
舞台は主要なキャストを変えて3作連続で上演される。disc1の上演は7月23日から、8月31日までで、8月9日には全国約50の映画館でライブビューイングを行う。disc2は歌舞伎役者の尾上松也、歌手で女優の大原櫻子が登場し、9月15日から10月25日まで。disc3はミュージカル界のプリンスとして高い人気の浦井健治、ニューヨークのブロードウェーでミュージカル留学経験を持つ女優の長澤まさみが出演し11月9日から12月31日まで行われる。
橋本さとし
21年ぶりに出演する新感線の舞台は「ホームに戻った気分」。世界ではオランダのアムステルダム、アジアには東京にしかないステージアラウンドシステムを導入した劇場での演技に「早く見ていただきたい」と気合い十分。舞台では大量の汗をかくといい「3列目までのお客さんは、気を付けた方がいいかも。僕のしぶきが飛ぶと思います」と笑った。
濱田めぐみ
「新感線の新幹線に乗ってるような感じ。普通の列車じゃない。とにかく乗り遅れないように乗って、出発してから考えないと」と必死のよう。胸が大きく開いたランダムスター夫人の衣装に「だんなさん(橋本)の方が開いてる。ポロリと出るかも」と突っ込んだ。
西岡徳馬
「『メタルマクベス』の初演を見ていて、出たいと思っていたのでうれしい」。客席を囲む舞台は、1周200メートルあるといい「出た俳優は7~8キロ痩せるって聞いた。頑張りたい」と意気込んだ。