秋の褒章受章者が11月2日に発表され、作詞家・松本隆(68)が学問や芸術等の向上発展に功績を残した人物に贈られる紫綬褒章に選ばれた。
松本は伝説のロックバンド「はっぴいえんど」のドラマーとして、メンバーの大滝詠一、細野晴臣、鈴木茂とともに1970年にデビュー。バンドの大半の楽曲の作詞を担当し、「風をあつめて」等の名曲を産み出した。バンド解散後は本格的に作詞家としての活動を開始し、松田聖子、太田裕美、近藤真彦、薬師丸ひろ子、寺尾聰KinKi Kidsなど多くのアーティストの作詞を手掛け、2100曲以上の曲に歌詞を提供し、シングルの総売り上げ枚数はおよそ5000万枚、50曲以上をヒットチャート1位に送り込んだ。
松本は10月30日、都内で記者会見し、受章について「予想もしていなかった、大変素晴らしい賞を頂きましてとてもびっくりすると同時に光栄に思います。」とコメント。自身の活動を振り返り、「僕の場合、ロックバンド出身。『寄らば大樹』を好んで来なかった。若い時から大きな組織に頼らず自分一人で仕事をしていた。守ってくれるのは自分の作品だけ。そういう思いでやってきたので、自分の作品が自分の存在を証明してれた。その今までの努力がこうして認めてもらって、とてもうれしい。」と語った。
2000曲以上を作詞しているが、人に歌詞を提供するにあたり共通して心がけていることは、「僕以前の歌詞はたとえば失恋をしても、傷を舐め合う歌が多かった。そうではなく、心がくじけて倒れたところからどう立ち直るかを歌いたいと思った。KinKi Kids『硝子の少年』のように、失恋はするが、最後に雨上がりに日がさしてくる。松田聖子の『瞳はダイアモンド』失恋はするが私はもっと強いはずよと立ちなおっていく。そういった作品のように、人々の折れた心を何とか癒せればと思っている。」と言う。
また、幅広い世代に自身の詞が受け入れられていることについては、「僕の詞は、母親が娘に、父親が息子に聞かせたり家庭内で伝授される。音楽関係の部活に入ると先輩が後輩にはっぴいえんどのアルバムを聴けと渡す。年齢を順番に伝授していくよう。これは自分の計画・予想の中になかったのでとても嬉しいなりゆきであります。」と分析する。
また今回の受章にあたり、以下のコメントを寄せている。
受章にあたって
人生の晩秋に、このような輝かしい光をあてて頂きまして、深く感謝します。
70年代、日本語のロックを提唱し、英米の物真似ではない音楽の創作に、
言葉の面から非力ながらも日々を費やしてきました。
ある意味、その努力が報われた気がします。
もちろんぼく一人の力ではなく、作曲家、編曲家、演奏家、歌手など、
ぼくの周りに集ってくれた友人たちの優れた才能あればこそです。
最近は、西の地に居を構え、春には桜のトンネルをくぐり、秋には枯れ葉の原色が散る道を散歩してます。
西行、芭蕉、良寛らの漂泊の詩人の足跡をたどり、
残された日々を、歌のための言葉を記しながら生きようと思います。平成29年11月吉日
松本は今年、歌手・クミコとタッグを組んだ「クミコ with 風街レビュー」プロジェクトを主な活動とし、精力的に活動している。15年ぶりにフルアルバム全ての楽曲の作詞を担当し、秦 基博、つんく♂、横山剣(クレイジーケンバンド)ら10人の作曲家達とタッグを組んだラブソングアルバム「デラシネ déraciné」を発表した。